AI時代こそ人間の「熱量」が才能を発掘する
基調講演の終盤には、ユニバーサル ミュージック 社長兼CEOの藤倉尚氏が登壇し、松田氏とのトークセッションが行なわれた。
藤倉氏は自社の歴史を振り返り、「時代とともにテクノロジーが進化しても、130年間変わらない使命は“新しい才能を探し、育て、届けること”だ」と語る。データ分析が高度化する現代において、Mrs. GREEN APPLEの発掘エピソードを引き合いに出し、「デビュー当時はデータも実績もなかったが、制作担当者の熱量と対話によって道が開けた。AI時代であっても、ヒットを生み出す決定打はデータを超える人間の熱量だ」と強調した。
これに松田氏も強く共鳴し、デジタル化が進むからこそ、リアルな場や人の情緒が重要になると応じた。藤倉氏は「デジタルで音楽を聴くのが日常だからこそ、ライブやリアルの場は一生ものの体験になる」と返し、両者は人間ならではの熱量や共感を基軸とする姿勢で一致した。
その具現化として、両社はTBSテレビを加えた3社共同で、YouTubeを活用した継続型オーディションプラットフォーム「SCAN(スキャン)」の始動を発表。藤倉氏が「何者でもなかった若者が舞台に立ち、人々を感動させる瞬間を見届けることこそが醍醐味」と期待を寄せると、松田氏も「夢に向かって一歩を踏み出す挑戦を後押ししたい」と語り、テクノロジーと人間の才能が融合する未来像を示した。
現実空間で動くフィジカルAIと現場DXの最前線
展示会場では、基調講演で示された「AI前提社会」を具現化する技術やデモが公開された。
会場で注目を集めたのが、現場への適応力を高めたフィジカルAIだ。物流の出荷作業ロボットのブースでは、KDDIの物流センターの作業を再現し、形の不揃いなケーブル類や柔らかい気泡緩衝材を扱うパッキング作業を披露した。
ここでは独自に学習させたVLA(Vision-Language-Action)モデルを活用。作業員の日常動作から学習データを自動で取得するデバイスや、デジタルツインによるシミュレーションを組み合わせ、現場への導入コストの削減を図る。
また、店舗向けヒューマノイドロボットのデモでは、エクセディ製の移動台車とヒューマノイドを組み合わせ、コンビニ店舗を想定した実演が行なわれた。音声指示に応じてクラウド上のAIエージェントが動作計画を立案し、検知範囲10mのLiDARによる自己位置推定とVLM/VLAモデルによって、棚から商品を識別して搬送する動作をスムーズに披露した。
現場業務を支援するAIエージェント技術の展示も充実していた。AIスマートグラスによる自動レポート作成の展示では、カメラとマイクを搭載したグラスを装着して作業するだけで、AIが音声と写真を自動で記録。音声の文字起こしと画像解析によって点検記録や接客履歴のレポートを自動生成し、点検コストの削減や指導記録の作成への活用を見込む。
「レベル4自動運転遠隔監視AIエージェント」は、1人の監視者が複数の車両を見守る「1対N運用」向けのソリューションだ。大雨や倒木といった異常が発生した際に、AIがカメラ映像やアラートを継続的に分析し、対応の優先度と推奨される対処、その理由を画面に表示することで、遠隔監視者の迅速な状況判断を支援する。
店舗DXの領域でも具体的な展示が見られた。AVITAの技術を基盤とした「KDDI Avatar Canvas」では、AIによる一次対応から遠隔オペレーターへの引き継ぎを実演。auショップに導入される「AIロープレ」の管理画面も公開され、対話ログの解析やコンテンツの自動生成機能が紹介された。
通信インフラでは、スマートフォンとStarlinkの衛星との直接通信技術をIoTへ拡張した「au Starlink Direct for IoT」が注目を集めた。山間部や海上などの圏外エリアにあるセンサーやカメラのデータ収集を可能にし、防災やインフラ監視のDXを支援する。
さらに屋外展示では「5Gミリ波×リアルタイム生成アート」が体験でき、入力したテキストから即座に生成した映像をミリ波で低遅延配信し、背景の建築物のAR映像に反映させるデモが行なわれた。
今回の「KDDI SUMMIT 2026」は、計算基盤、通信網、遠隔監視、ロボティクスを統合し、AIを現実空間の作業や生活へと落とし込む「社会実装フェーズ」への移行を象徴する内容であった。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります





















