このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

サイボウズが語る“大企業のAI活用”における課題とその展望

大企業導入も順調なkintone AI時代の“市民開発×ガバナンス”基盤を目指す

2026年08月24日 11時30分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 契約企業数が4万社を突破し、幅広い業種で導入が進むサイボウズの「kintone」。現在同社は、従業員数1000名を超える“エンタープライズ市場”への展開を推進している。

 2026年8月20日に開催されたメディア向けセミナーでは、これまでの大企業向けの推進策を振り返りつつ、そこで得た実践知に基づく今後の戦略が語られた。

 サイボウズで同市場を統括する池田陽介氏は、「kintone上で作られた業務アプリケーションに蓄積されたデータを活用し、AIが適切な範囲で働く。(大企業向けに)ガバナンスの効いたAIとの共存基盤を提供していきたい」と意気込みを語った。

サイボウズ エンタープライズ事業本部 副本部長 kintoneプロダクトマーケティングマネージャー 池田陽介氏

サイボウズがエンタープライズ領域に注力する理由

 サイボウズの主力プロダクトであるノーコード・ローコードツール「kintone」は、2011年の市場投入以降、右肩上りの成長を続けてきた。昨今のDX推進の波に乗り、2025年12月期決算では、kintone単体の売上高が前年比33.9%増の200億円越えを達成している。

kintoneの連結売上高の推移

 現在、同社がこのkintoneにおいて、エンタープライズ市場に注力する理由は2つある。ひとつは、サイボウズの掲げる「チームワークあふれる社会を創る」というパーパスの実現のためだ。従業員数ベースで4割近くを占めるエンタープライズ市場は、その理念を果たす上で避けて通れない。

 もうひとつの理由は、kintone自体の進化だ。池田氏は、「サイボウズやkintoneが、大企業の求める水準に追いついてきた。加えてDX推進が叫ばれる中で生まれた『ノーコード・ローコード』『市民開発』『人材育成』といった大企業のニーズが、我々の提供価値と合致してきたことも大きい」と語る。

 こうした流れや後述する推進策も功を奏し、東証プライム企業の約46%がkintoneを導入。売上に占めるエンタープライズ企業の割合も「27.2%」にまで達している(2025年12月末時点)。

kintoneの市場規模別MRRの割合

高いレイヤーでの支援策と大規模利用専用プランの拡充

 それでは、同社はエンタープライズ市場に対してどのようなアプローチをしてきたのか。池田氏は、主に「支援体制」「機能強化」の2つの面で、直近の施策を振り返った。

 まず支援体制においては、2025年に機能横断的な組織である「エンタープライズ事業本部」を発足。アカウント営業に加え、各領域のスペシャリストも配置することで、業種・業界の特性に応じた全社基盤としての活用を提案している。

2025年にはエンタープライズ向けの営業体制を整備

 大企業に向けたDX・市民開発の訴求にも注力しており、単なる製品の導入・活用にとどまらず、経営・組織運営にフォーカスした各種ガイドラインを作成。DXのフェーズに合わせた「ガバナンス」「DX人材育成」「kintone人材育成」「市民開発」のガイドラインを無料公開している。これらには、大企業ユーザーのコミュニティ「kintone Enterprise Circle(kintone EPC)」の実践知も詰め込まれている。

 さらに技術面においても、これまでの支援実績を基に、設計・運用・性能面でのポイントを体系的に整理した技術解説資料も公開中だ。

大企業の市民開発を後押しするノウハウを公開中

 大企業への直接支援も行ってきた。例えば、DX人材育成や市民開発を促す「企業内コミュニティ」や「事例共有会」の支援をはじめ、企業インターンを通じて大企業の文化を学びながらノウハウを提供するような活動も実施している。

 一方で、大企業向けの「機能強化」においては、kintoneを全社基盤として利用してもらうための上位プラン「ワイドコース」を提供。アプリ数やAIクレジット数などの上限値を引き上げているほか、専用機能も用意している。

大規模利用向けの「ワイドコース」

 2025年10月にはワイドコースの機能を拡充。kintoneのインターフェースで外部システムのデータを参照・更新できる「外部システムのアプリ化」、アプリやシステム全体の稼働状況を可視化する「性能ダッシュボード」、そして高負荷な処理をチューニングできる「性能カスタマイズオプション」を追加した。

昨年10月には3つの新機能を拡充

 さらには2026年5月には「複数ドメイン管理」を追加。これは親ドメインに複数のサブドメインを紐づけ、ユーザー管理やセキュリティ設定などを集中管理できる機能だ。ガバナンスの確保と現場ごとの柔軟な活用の両立を実現している。

「複数ドメイン管理」でグループや海外拠点のドメインも集中管理

 既存の「アプリ分析」も2026年7月に強化しており、過剰な閲覧権限の付与といった、ルールに反するアプリを自動検知できる機能を追加した。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります