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ビル設備のアプリ制御を可能にする「ビルOS」を2つのキャンパスで導入、その目標を聞く

“ソフトウェアで機能拡張するキャンパス” 大阪公立大の実証施設が目指す未来

2026年08月05日 09時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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自走ロボット向けに「ドアの開錠」「エレベーター呼び出し」を制御

 ビルOSという仲介役が存在することで、たとえば「温度センサーや人感センサーの情報に基づき空調を自動制御する」など、あらゆるビル設備間を連携動作させるアプリケーションが開発できる。その一例として、阿多氏がデモを見せてくれたのが「自走式ロボットの移動補助」だ。

 スマートエネルギー棟の1階には、自律走行式のロボットが2台設置されている。これらのロボットは「オープンエリアの清掃」「郵便物の配送」などの役割を担っており、エレベーターを使ってビルの2階や3階にも移動する。

 このインテリジェントなロボットは、周囲の人や障害物を自律的に避けながら移動できる。ただし、障壁となるのがビル設備だ。ロボット自身では「自動ドアのロックを開錠する」「エレベーターを呼ぶ」といった動作(操作)ができないため、移動できるエリアが制限されてしまう。

 そこでビルOSの出番となる。ビルOSを活用して、ロボットに指示する行き先やリアルタイムの位置情報を把握することで、電気錠やエレベーターのシステムを自動制御するアプリケーションが開発できる。

 阿多氏が披露したデモでは、ロボットに1階から2階への移動指示を出すと、その移動に応じてPhotosynth(フォトシンス)の「Akerun Ctl(アケルンコントローラー)」経由で自動ドアが開錠され、エレベーターも呼び出されて、ロボットは無事に2階へと移動できた。

ロボット向け自動開錠の仕組み。ロボット操作のアプリケーションから、API経由でAkerunを呼び出し、自動ドアの開錠を制御している

 スマートエネルギー棟では現在、異なるメーカー製の自走ロボット2台が稼働しているが、メーカーによる仕様の違いをビルOSのレイヤーで吸収して、どちらも制御することが可能だ。このように、複数のロボットやシステムを抽象化し、違いを吸収できる点もビルOSのメリットである。

自走式ロボットのための自動ドア解錠/エレベーター呼び出し

デモの様子。パソコンからロボットに移動指示を出すと、その移動に合わせて自動ドアが開錠され、エレベーターも呼び出された

 ちなみに、ICカード式の電気錠システムには、もともと別メーカー製のものが設置されている。ここにAkerun Ctlを増設/接続することで、API経由での制御を可能にして、ロボット操作アプリからの開錠制御を可能にした。

 「Akerunについては、まだまだ活用方法があると考えています。たとえば、わたしが外出中に届いた荷物を研究室に運び込んでもらうため、ワンタイムの“鍵”を相手に送付する。あるいは電気錠の開錠/施錠データを収集して、学生に貸し出した部屋が実際にはどのくらいの時間利用されているのかを計測する。そういったアイディアはあります」

既存のICカード式電気錠システムにAkerun Ctlを増設することで、API連携を可能にしている

スマートビルがスマートシティにつながる時代に向けて、実証は続く

 大阪公立大学では、この実証フィールドをプラットフォームとして、産学官の共創を進めていく方針だ。阿多氏も、最近の活動を通じて「交流する業界の幅が広がってきた」と語る。

 「わたしはもともとネットワーク技術の研究者なので、これまではITネットワークや通信キャリアとのお付き合いが中心でした。しかし、最近では(ビルOSに興味を持つ)建設業界やロボット業界などとのお付き合いも増えています」

 阿多氏は、138企業/団体(2026年6月時点)が参画する一般社団法人スマートビルディング共創機構の代表理事にも就任しており、スマートビルに関する民間企業との共創活動/共同研究もさらに加速していく見通しだ。

多くの民間企業がスマートビル実証に協力している

 アプリケーションの開発においては、生成AIによるコード生成(AIコーディング)も多用しているという。基盤としてビルOSがインストールされており、設備やIoTデバイスのデータ取得や制御はすべてAPI経由で行えるため、AIもコードが書きやすい。「建物を通じて実現したいこと」のアイディアさえあれば、そのアプリケーション開発は容易なものになりつつある。

アプリケーション開発には、生成AIによるコーディングも活用

 まだ各種実証が始まってから年数も浅く、これからさらに実証の幅を広げていく段階だが、将来的な構想には「スマートシティとの連携の拡充」の研究や実証も入っている。冒頭でも触れたとおり、スマートビルはスマートシティを構成する一要素であり、スマートビルどうしが連携することで、エリア全体での省エネルギー化や管理効率化などの実現も期待できる。

 「ビルOSという基盤を作ることはあくまでも手段であって、本来の目的は、その上で多様なアプリケーションを動かし、そこで活動する人たちをより豊かにしていくことです。そうしたアプリケーションが、まさにこれからたくさん生まれてくることになるでしょう」

(取材協力:Photosynth)

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