ビル設備のアプリ制御を可能にする「ビルOS」を2つのキャンパスで導入、その目標を聞く
“ソフトウェアで機能拡張するキャンパス” 大阪公立大の実証施設が目指す未来
2026年08月05日 09時00分更新
学生向けスマホアプリは「スマートキャンパスのインタフェース」
大阪公立大学では、学生向けにスマートフォンアプリ「OMU+」を提供している。デジタル学生証、授業カレンダー、学内掲示表示、出席登録など、学生の研究活動や学外活動(サークル活動など)を支援する幅広い機能が盛り込まれており、学部生はほぼ全員が利用している。
阿多氏はこのOMU+を「大学内のDXやデジタルキャンパスとの“ユーザーインタフェース”」と位置づけ、さまざまな形で、キャンパスのビルOSやアプリケーションとの連携を強化している。
すでに実運用しているものとしては「部屋の貸し出し予約」機能がある。学外活動のために部屋を借りたい学生は、OMU+アプリから予約ができる。この予約システムは、ビルOSを介して電気錠システムと連携しており、予約した日時になると学生証を使って部屋が開錠できる仕組みだ。
また現在、実現に向けた検討と検証を行っているのが「空き教室の省エネルギー化」だ。森之宮キャンパスには約70の教室があり、授業に使っていない時間帯は学生の自習スペースとして開放している。OMU+アプリにも空き教室の検索機能を実装済みで、学生は空き教室を自由に利用できる。ただし、そこには問題もあるという。
「空き教室を利用する学生が、来たときにつけた照明や空調を消さずに帰ってしまうことがよくあります。現状はスケジュール管理でまとめてオフにしていますが、教室のセンシング機能(人感センサーなど)を使えば、『人がいなくなったらオフ』にすることができるはずです。さらに、検索で表示される空き教室をうまくコントロールすれば、一部の空き教室だけに学生が集まるよう、行動変容を促すこともできて、さらなる省エネルギー化を実現できると考えています」
さまざまなビル設備を統合、制御するために必要な「ビルOS」とは
前述した「ビルOS」とは、その名のとおり“ビル(建物)のオペレーティングシステム”だ。ビルの機能を継続的にアップデートさせていくための、アプリケーションの開発基盤と位置づけられている。
「役割としてはパソコンやスマホのOSと同じです。デバイスにアプリケーションをインストールすれば機能が変えられますが、そのアプリケーションを動かすためには、ハードウェアを統合的に扱うOSが必要です。この“ビル版”がビルOSというわけです」
もっとも、ビルOSの具体的な姿は、PCやスマートフォンのOS(ソフトウェア)とは異なる。複数の異なるビル設備をつないでデータを統合し、アプリケーションに共通のAPIを提供する一連のサーバーシステム(プラットフォーム)である。
現在のビル設備(照明/空調/搬送/防災/防犯/情報通信など、あらかじめビルに組み込まれるハードウェア群)は、大半がリモートから専用ネットワーク経由で制御したり、データを取得して集中監視できるようになっている。ただし、メーカーや製品ごとに通信の規格や仕様が異なることが多く、このままではアプリケーション開発が複雑になり、汎用性も持たせられない。
ここで“仲介役”となるビルOSを用意し、通信仕様や規格の違いを吸収してアプリケーション向けに共通APIを提供することで、アプリケーション開発が容易になる。もちろん、複数のビル設備からデータを取得したり、連携動作させて統合的な管理も実現可能だ。
前述したとおり、大阪公立大学では2つの建物(スマートエネルギー棟、森之宮キャンパス)に共通のビルOSを導入しており、開発したアプリケーションはどちらの建物でも活用できる仕組みだ。仮に2つのビルで異なる設備が導入されていても、ビルOSのレイヤーでその差を吸収できれば、アプリケーションそのものの改修は必要なくなる。
「さらに、あらかじめ取り付けられたビル設備だけでなく、竣工後にIoTセンサーやデバイスを取り付けることもあります。これらの通信は、ビル設備系のネットワークではなく情報系のネットワークに収容されますが、これも統合できるようにビルOSを開発してきました」
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