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熱波が奪うのは体力だけではない、暑さが脳に及ぼす影響は?

2026年06月30日 06時59分更新

文● Jessica Hamzelou

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Photo Illustration by Sarah Rogers/MITTR | Photos Getty

画像クレジット:Photo Illustration by Sarah Rogers/MITTR | Photos Getty

猛暑になると集中力が欠けてぼんやりしてしまう経験をしたことがある人は多いだろう。暑さが脳の機能に影響を与える具体的な仕組みについてはまだよくわかっていない部分が多いが、精神疾患を抱える人や子どもが猛暑に脆弱であることを示す研究結果が複数報告されている。

先週のロンドンは暑かった。本当に暑かった。危険な熱波が西欧州を直撃し、6月24日には英国は6月の観測史上最高気温となる36.1°Cを記録した。しかし、スマートフォンの天気アプリが示したように、体感温度は39°Cだった。

6月の英国でこれほどの気温が観測されているのは恐ろしいことだ。英国の国立気象・気候サービスである気象庁(Met Office)によると、1991年から2020年にかけてイングランドの6月の気温は平均19°Cがピークだった。欧州全体では、今回の熱波によって数千人が死亡する可能性がある。農業、インフラ、医療制度にも深刻な影響が及ぶだろう。

しかしここでは、熱が私たちの心と脳に何をもたらすかを考えてみたい。個人的には、まともに考えることがほぼ不可能だと感じた。熱は集中力を奪い、頭がぼんやりする。さらに暑い地域で屋外作業に従事する人々の状況を思うと、想像するだけで恐ろしい。

疲労や混乱だけの問題ではない。熱が脳に与える影響は命に関わることもある。そして研究者たちはいまだにその理由を解明しようとしている。

気温が上昇すると、人々はより苛立ちやすくなり、暴力的になる傾向があることが研究によって確認されている。ただし、これらの研究の多くは相関関係に基づいている。熱波が思考にどのような影響を与えるかを直接研究することは難しい、とリバプール・ホープ大学の認知心理学者キャサリン・トンプソン上級講師は言う。

トンプソン講師は代わりに、消防士を対象に極度の熱が与える影響を研究してきた。燃えている建物への突入を含む定期訓練の前後に認知能力を測定する方が容易だからだ。

研究はまだ初期段階だが、研究チームは消防士が熱にさらされた直後に集中力や注意制御が低下することを発見した。これは熱波を経験した人なら誰もが共感できることだろう。

消防士の能力は20分ほど冷却した後に正常に戻った。しかし、彼らが経験した強烈な熱への曝露はわずか15分だった。数日間続く熱波の中で生活した場合の影響や、その影響がどれほど続くかについて、トンプソン講師はまだわかっていない。それを解明するには、熱波が来る数日前の予告期間中に、数千人の人々に認知テストキットを送付する必要があるかもしれない。「誰もやっていないのは、実施があまりにも難しいからだと思います」とトンプソン講師は言う。

それでも研究者たちは、事後の研究を通じて熱波の影響の一部を明らかにすることができる。そしてそれらの研究は、熱が精神疾患を抱える人々にとってより深刻な結果をもたらすことを示唆している。

こうした結果は、ある地域で普通とされる気温を超えると顕在化する。「気温が高くなるほど、特に1年で最も暑い時期には、精神的健康への悪影響が大きくなるという相関関係があるようです」と、コネチカット州のハートフォード・ヘルスケア(Hartford HealthCare)のヒート・マインド・ラボ(Heat-Mind Lab)を率いるジョシュア・ウォーツェルは言う。

2023年に発表された研究では、気候変動が精神的健康に与える影響を研究するオックスフォード大学のエマ・ローレンス博士らの研究チームが、精神的健康の転帰と屋外の周囲気温を結びつけるエビデンスを検討した。その結果、熱波の期間中、精神疾患を持つ人々の入院率が9.7%増加することが明らかになった。

「精神疾患を抱えて生活している人々は、熱の身体的影響を最も受けやすい人々の一部です」とローレンス博士は言う。例えば、統合失調症の患者は、2021年にカナダを襲った記録的な熱波の際に死亡する確率が3倍高かったことが明らかになっている。ample.

人々を守るためには、これらの影響の根底にあるメカニズムをより深く理解する必要がある。非常に暑い状況では多くのことが変化するからだ。例えば、屋外での遊びや運動を避けて室内に閉じこもる人が増えたり、十分な睡眠が取りにくくなったりする。睡眠、社会的交流、運動はいずれも精神的健康にとって非常に重要だ。

しかし、異常な熱が脳に何か特定の影響を与えるかどうかは、ウォーツェルの言葉を借りれば「百万ドルの問い(日本版注:正解を出すのが難しい問題のこと)」である。

実験動物を用いた研究では、過度の熱が脳内の化学的シグナルの働きを変化させる可能性が示唆されている。例えば、複数の研究によると、ラットやマウスを高温にさらすとセロトニンなどの神経伝達物質のレベルが上昇するようだ。また、熱は脳内ネットワーク間の情報伝達を妨げる可能性もある。さらに、脳細胞への酸素供給にも影響を与えるかもしれない。

「熱が脳に悪影響を与える生物学的な理由は非常にたくさんあります」とウォーツェルは言う。

新たな研究では、理由はともあれ、子どもや若者が最も脆弱なグループに含まれることが示唆されている。2026年6月23日に発表された研究で、ウォーツェルと同僚たちは、月平均気温が1°C上昇するごとに、米国の15歳から24歳の自殺率が2.97%増加することを確認した。これは24歳以上の増加率(それ自体も懸念すべき数値だ)の2倍以上だ。

別の研究では、熱への暴露が子どもの脳発達に長期的な影響をもたらす可能性が示唆されている。極端な暑さまたは寒さにさらされた乳幼児は、9歳から12歳になるころに白質の変化が見られたが、これらの影響が個々の子どもにどのような影響を与えるかはまだ明らかではない。

「非常に幼い子どもが極端な気温にさらされると、脳の発達に影響を与える可能性があるようです」と、オックスフォードから取材に応じたローレンス博士は言う。同博士は気候行動週間(Climate Action Week)のためにロンドンに来る予定だったが、極端な暑さをテーマにしたそのイベントは極端な暑さのために中止になってしまった。

私たちは気候変動の影響の中で生きている。そして、熱が脳に与える影響という問いには、新たな緊迫感が生まれている。ローレンス博士によると、2020年に生まれた子どもたちは、祖父母世代が経験した熱波の約7倍の数を経験すると予測されている。「温暖化する世界への適応を真剣に考える必要があります」。

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