第7回 見える&つなぐ!ヤマハのネットワーク レビュー&レポート

病院や介護現場での途切れないコミュニケーションを支える取り組み

通話の快適さを決める1秒以内のローミング ティービーアイ、SCSK、ヤマハのこだわりを追う

文●大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ヤマハ

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課題はWi-Fiネットワーク SCSKが検証で全面支援

 音質と使い勝手にこだわったクリアトークカムだが、課題はインカムを利用するために必要なWi-Fiネットワークだった。パチンコ店向けに製品を展開していた2010年代はインカム専用のWi-Fiネットワークを自社構築していたため、通信品質は確保できていた。しかし、介護や医療業界にシフトした2020年代になると、インカム用のWi-Fiネットワークを見守りセンサーなど他の端末でも使えないかという相談が増えてきたという。

 インカム専用のWi-Fiネットワークを他のデバイスが利用すると、当然ながら通信や音声の品質に影響が出てしまう。前提としてインカムは医療機器ではないため、通信や音質、長期に渡る稼働を保証するものではない。とはいえ、いったん現場で使い始めると、ないと困るという類いの製品ではある。障害の現場に出向くことも多いティービーアイの茂木氏は、「『これがないと困るのよ!』と言われると、怒られたような、褒められたような不思議な気持ちにもなります(笑)」と語る。

ティービーアイ クリエイティブ営業本部 インフォリンク営業部 茂木英雄氏

 電波を使う限りは必ず途切れる。でも、業務のインカムへの依存度が高いため、可能な限り良質な音声品質を確保したいというのが、ティービーアイの想いだ。とはいえ、自前では限界があった。吉田氏は、「われわれはインカムのメーカーではありますが、SIerではないので、Wi-Fi専門のエンジニアがいません。弊社のインカム用のWi-Fiネットワークに他のデバイスをつなぎたいと言われたときに対応できなかったのです」と語る。

 この課題を解消すべく、Wi-Fiネットワークの検証を行なったのが、アクセスポイントを展開するヤマハと、ヤマハと二人三脚でネットワーク機器の販売を手がけてきたSCSKだ。5年間に渡ってヤマハの無線LAN製品を担当しているSCSK藤冨氏は、「当社としても介護・医療業界でのLAN拡充に注力していたので、弊社からぜひご協力させてくださいとお願いしました」と語る。

SCSK ITインフラサービス事業グループ ネットワーク事業本部 ネットワークプロダクト部 技術課 藤冨修平氏

 もともとティービーアイはネットワークカメラの事業部でSCSKと付き合いがあり、クリアトークカムでもヤマハのWi-Fiアクセスポイントの事例があった。昨年の秋頃にSCSKとティービーアイが打ち合わせを持った結果、とんとん拍子でネットワーク検証に話が進んだという。

ローミングで通信が途切れる3つのポイントとは?

 今回の検証は、ヤマハの無線LANアクセスポイントと複数の端末で実施。「そもそも接続できるか、接続を維持できるか、ローミング性能、音声通話の品質を複数回に渡って調べました」と藤冨氏は語る。このうち特にフォーカスしたのが、通信が途切れる原因として大きいローミングだ。

 ローミングは端末が接続先の無線LANアクセスポイントを切り替える動作。ローミングのプロセスに不備があると、通信や音声の途切れが発生する。無線LANアクセスポイントのソフトウェア開発を担当してきたヤマハの鈴木俊太朗氏によると、ローミングで音声が途切れる原因は大きく「電波設計」「スティッキー端末」「再認証にかかる時間」という3つがある。ヤマハはこの3つの問題に、それぞれ対策を講じることで、スマートな音声通話を実現しているという。

ヤマハ 音響事業本部 商品開発統括部 NW開発部 ソフトグループ横浜 主任 鈴木俊太朗氏

 1つ目の電波設計に関しては、電波の伝搬特性を公開している。この伝搬特性を理解して、エリアごとに最適な場所にアクセスポイントを設置することで、通信の途切れを抑制する。3つ目の再接続時の認証に関しては、標準規格のIEEE802.11rに対応。無線端末が同一ネットワーク内のアクセスポイント間をローミングするとき、ローミングに必要な各種ステップを削減/省略することで、再接続の時間を大幅に短縮できる。

 課題として一番大きいスティッキー端末は、端末が遠くのアクセスポイントをつかみ続けてしまうという問題。これに関しては、標準規格であるIEEE802.11k/vとヤマハ独自の「適応型ローミングアシスト機能」を選択できる。両者は、本来端末側で行なう切断・再接続の処理をアクセスポイント側から支援するもので、電波強度にあわせてローミング対象のアクセスポイントを端末側に提案したり、アクセスポイント側から端末を切断したりする。2025年11月のファームウェアアップデートでは、多くの端末を複数のアクセスポイントに分散させるIEEE802.11k/vの機能としてさらに改善されているという。

 ヤマハの強みは、端末側でIEEE802.11k/vをサポートしていない場合でも、適応型ローミングアシストを利用できるという点だ。SCSKの藤冨氏は、「介護・医療業界の現場では、2.4GHz帯しか使えなかったり、過去の認証方式しか対応していなかったりする古い端末がゴロゴロしています。新旧の端末が混在した環境でも、いろいろなローミング方法を選べるのが、ヤマハの無線LANアクセスポイントの優れたところです」とアピールする。

ローミング性能にも配慮されたヤマハの無線LANアクセスポイント

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