聴くだけでなく、読書量も増やすオーディオブック
Audibleが国内で実施した最新の調査(2026年3月実施、20~69歳の男女1万人が対象)によると、オーディオブックを利用していない層では「年間読書量が1冊以下」という回答が半数以上(55.6%)と最も多いのに対し、オーディオブック利用者では約8割(77.6%)が年間6冊以上を読み、44.2%が6~30冊を読んでいることが分かった。
さらに、利用者の84.5%が「Audibleを利用し始めてから読書時間が増えた」と回答しており、隙間時間の活用やながら聴きが、多忙な現代人が失いかけていた読書習慣を取り戻すカギとなっていることが伺える。
2026年前半の人気作品ランキング。1位は『イン・ザ・メガチャーチ』。本屋大賞の影響は強く、『殺し屋の営業術』も5位にランクインしている。逆に、湊かなえの『暁星』のようにAudibleオリジナル(オーディオファースト)作品が本屋大賞にノミネートされる例も出てきた。
名作から「オーディオファースト」まで注目作が続々
Audibleは現在、「Every book is an audiobook, in every language(すべての本を、すべての言語でオーディオブック化する)」という壮大なビジョンを掲げている。発表会では、2026年に展開される強力な新刊ラインナップが公開された。
目玉の一つは、司馬遼太郎の没後30年を記念した名作の配信だ。また、音声で最初に物語を届ける「オーディオファースト」作品の拡充も進んでおり、中山七里氏の書き下ろし新作などが順次投入される。さらに、新たな挑戦として「韓流ドラマ」のオーディオドラマ化も発表された。第一弾として、アジア中でブームを巻き起こした『天国の階段』が、若手実力派俳優らによるマルチキャストで蘇る。
音で想像を広げるオーディオブックの可能性とは?
発表会の後半では、俳優の桐谷健太氏、文芸評論家の三宅香帆氏、小説家の染井為人氏が登壇し、制作の舞台裏やオーディオブックの可能性について熱い議論を交わした。
村上龍氏の『五分後の世界』の朗読を担当した桐谷氏は、最初に読んだ小説が『コインロッカー・ベービーズ』であり、その世界観に衝撃を受けたというエピソードを披露。村上龍作品の朗読をオファーされたことに縁を感じたとコメントした。
収録は5日間で集中的に実施されたそうだが、朗読する前に本は何度も読み込んでおり、情景を自分なりのイマジネーションで思い浮かべられるようにして臨んだという。桐谷氏は「5日間、超集中して収録に臨んだ。読んでいる最中から作品の世界にどっぷりと浸かり、自分自身が『五分後の世界』に住んでいるような感覚だった」とコメントする。
また、オーディオブックには、「目を閉じながらでもストーリーが進んでいく。自分が思い描く情景と、朗読者の声が混ざり合うことで、世界に一つしかない自分だけの異世界が脳内に広がる」点にあると魅力を語った。
近刊『没頭する力』をAudibleで配信予定の三宅氏は、新刊が音で初めて聴いてもらえるというのは初めての体験と期待感を表現した。執筆の背景として、SNSやスマートフォンの通知によって注意力を削がれている現代人が多いという現状があると指摘。
「仕事で目が疲れている時でも、音声なら物語の世界にスッと戻ってこられる。Audibleは、現代人が『没頭する力』を取り戻すための、非常に現代的なツールだ」と語った。また、家事をしながら聴くことで「面倒な皿洗いの時間が、続きを聴きたい楽しみに変わる」「車などで家族と一緒に聴けば、会話の機会が生まれる」といった、生活を豊かにする側面もあるとコメントしていた。
新作『ガラスのマンション』を書籍と同時にオーディオブックとして配信する染井氏は、「活字に馴染みがない層や、視力が落ちて本を読むのが難しくなった方々にも、同じタイミングで物語を届けられるのは素晴らしいこと」と、同時リリースの意義を語った。
大工である義理の兄がAudibleを通じて、仕事の合間に自分のすべての作品を聴いてくれたエピソードに触れながらAudibleは「活字から離れている人だけでなく、活字に苦手意識がある人」が読書に触れる機会としても優れているとコメントした。
その上で「制作陣やナレーターの方々の超人的な努力によって、作品に新たな命が吹き込まれている。著者としても、自分の物語がどう響くのか非常に楽しみだ」と、期待を寄せた。
こうした俳優・作家陣のコメントを受け、作品のプロデュースを担当しているAudible ヘッド・オブ・コンテンツ・ジャパン キーリング 宮川もとみ氏は「ニーズが高まりつつあるオーディオブックの世界を広げるため、素晴らしいクリエイターと作品を拡大していきたいと考えている」と抱負を述べた。
読む時間がない、何かをしながらの時間にすっとなじむ新しい読書
発表会を通じて示されたのは、オーディオブックが決して紙の本の代用ではなく、音声ならではの演出やナレーションによって、新たな芸術作品へと昇華されているという事実だ。多忙な日々の中で、耳から物語を取り入れるAudibleのスタイルは、日本の読書文化を再定義し、人々の想像力をより豊かに広げていくに違いない。
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