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大学を「知の集積地」から「実装の現場」へ変える——叡啓大学・早田吉伸教授 [PR]

2026年05月29日 09時07分更新

文● MIT Technology Review Brand Studio

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「社会実装都市ひろしま」を牽引するキープレイヤーの1人が、叡啓大学教授の早田吉伸だ。地方都市のイノベーションになぜ大学が有効なのか? これまでの活動でつかんだ手応えと、提唱するビジョンについて語ってもらった。

知識を学ぶのではなく知識を使って価値を創出する

2021年、広島県が社会課題の解決とイノベーションの創出を目指して設立した叡啓大学。その活動を特徴づけているのが「ソーシャルデザインセンター」(正式名称:産学官連携・研究推進センター)。そのセンター長を務めるのが早田吉伸だ。早田はもともとNEC(日本電気)で新規事業開発や産学官連携に従事。その後、政府に出向して地方創生に関わったり、自らNPOを立ち上げたりする中で大学の存在価値に気づき、叡啓大学の設立に参画した。

「今は社会を巡るさまざまな価値が変化している時代です。これまで大学は専門的な学びを深め、知識を得るための場所として機能していましたが、そのやり方では現在必要とされているイノベーションの創出にはマッチしません。そこで、知識を学ぶのではなく、知識を使ってどのような新しい価値を生み出せるか、社会にどのようなソリューションを提供できるかを追求する場として叡啓大学が創設されました。学生たちには実際に現場に出てもらい、多様なステークホルダーと一緒に課題解決を目指すためのプロジェクトに積極的に携わってもらっています」

叡啓大学では、教員が一方的に伝達する知識偏重型の授業ではなく、学生たちと外に飛び出し、PBL(Project-Based Learning:プロジェクト型学習)を軸に据えた実践的学びを展開している。その大学と社会との接点になっているのがソーシャルデザインセンターである。現在大学は県内すべての自治体を含む、全国の200の企業・自治体・NPO・国際機関とパートナーシップを結び、それぞれの「お困りごと」を教員や学生と一緒に解決する活動を進めている。早田はセンター全体をデザインしつつ、企業と大学側を繋ぐオペレーションも担当。企業と教員・学生がチームを作って課題解決に当たる「共創プログラム」や、都市圏の中核人材と企業をマッチングする「ひろしまバリューシフトプログラム」、大学で生まれた研究成果を社会へと還元する「大学発ベンチャー」の推進など、日々忙しく走り回っている。既存の枠組みを揺さぶる「イノベーション思考」で知を価値に変え、未来の社会のプロトタイプを、ここ広島から創っていくのだ。

叡啓大学にあるPWS(プロジェクトワークスペース)では企業や自治体関係者など、学生と地域の多様なステークホルダーとが交流している。
左:デザイン思考のフレームワークである「ダブルダイヤモンド」を、課題解決型の授業やプロジェクトで採用している。
右:PWSの一角には多彩な企業・団体の名刺が貼られている。

大学は中立な存在だからこそ誰とでも客観的に連携できる

産学官を結び、社会全体をイノベーティブに変革するために、どうして大学が重要なのか? 早田はその理由について以下のように語る。

「大学のメリットは主に3つあって、1つめは中立性です。叡啓大学は公立大学なので特にその傾向が強いのですが、ステークホルダーからお金をもらっているわけでもなく、利害関係が生じることもありません。中立という立場だからこそ柔軟にかつ幅広く、どんな機関とも連携がとれるという特徴があります。2つめは、さまざまな分野の知識を使えるという多様性です。社会課題を解決するには多分野を俯瞰する視点が必要です。例えば、地域の活性化を実現するには、人口、観光、福祉、産業……など、あらゆる領域の問題が絡んできます。大学は専門知識を持つ人と多く繋がっているので、そうした知識を編集したり接続したりする役割が果たせます。3つめは、大学のアプローチが基本的に仮説検証である点です。課題を解決するには一度仮説を立ててそれを検証し、違ったらまた仮説を立てて……ということを何度も繰り返します。しかし通常の組織は計画主導で運営されているため、単年で結果を出すことが求められます。時間をかけてじっくり試行錯誤ができるのは大学くらいなんです」

早田教授が描いた産学官連携のイメージ図。授業でも学生たちとホワイトボードを駆使しアクティブな学修を促す。

これらのメリットの中でとりわけ重要なのは中立性と多様性の部分だという。

「基本的に1つの企業が抱えている問題は、その企業の内部だけの問題でないことがほとんどです。そこにはステークホルダーが関わってくるし、行政も関わるし、金融機関、教育機関、メディア、NPO……いろんな機関が関係しています。つまり1つの企業の課題を解決するには全体の関係性を見て調整することが必要で、それを実現するには各領域の言語体系すべてを理解したうえで臨まなければならないのです。各分野の体系をすべて理解して、それらと関係を持てる機関というのは大学くらいしかないわけで、私たちはそこにチャレンジしています」

人も健康のために特定の部位だけ治療すればいいわけではない。食生活も関わるし、運動不足かもしれないし、ストレスも影響しているかもしれない。体全体を見たうえで最適な解決策を探る必要があって、それは社会課題の解決でも同じである――そう説明されると非常に分かりやすい。客観的に「全身」を診察できるのが大学の強みということなのだ。

相手の成功は自分の成功共創関係で進むプロジェクト

社会課題の解決を目的に叡啓大学が作られて早5年が過ぎた。「産」や「官」と共同でプロジェクトを進めるに当たって早田が意識してきたこととは、いったい何だろう?

「それぞれのセクターごとに背景と文化があるので、まずはそれを理解して、しっかりとした関係性を築くことです。相手のメカニズムを理解せず、勝手にこういうことをやりましょうと提案しても誰も聞く耳を持たないですよ。そもそも何かを変える行為って、人間にとって非常に負荷のかかることで。急にコンサルがやって来て『御社はこうしたほうがいいです』と言っても、素直に聞いてくれるはずがありませんからね」

内容がいくら正しくても、理詰めで人は動かない。共感や信頼といった情に加えて、さらに必要なものがあるという。

「関係性ができると次に先方が言ってくるのは『それが正しいのは分かるし、そうしたほうがいいのも分かる。でも、やったことがないんだよ』ということです。そこで重要なのは最初の一歩を私たちがやってみせること。学生を入れたり、専門人材を連れてきたり、やり方はいろいろありますが、まず私たちが事例を示すことで『こういうふうにやれば変えられるんだ!』と成功体験してもらえます。ただしそれをやるには、こちら側にも先方と同じくらいの当事者意識が必要です。この成功は先方にとっての成功だけど、私たちにとっても成功だというある種の共創関係にならないとそこには行き着けないと思います」

変革プロジェクトを進めていくために必要なのは、「このままではマズイですよ」という健全な危機感と、「こうやって進めていけばこういう未来にたどり着けますよ」というワクワクするようなゴール設定。大学と企業が協力して事案を進めていく過程では、最終目標である課題解決に近づくのはもちろん、相手の組織も変容してくる。

広島からソリューションを発信するとなれば、世界中に届けられる。

「企業との共創プログラムでは、最初に先方の担当者と私たち教員が何を実証したいか話し合う『価値探索プロジェクト』を実施します。そこで自社の歴史を振り返ったり、自社の文化を捉え直したりしてもらうんですが、まずここで発見や気づきがあったという声を数多く聞きます。そのプロセス自体に大きな意味があります。あと、今の企業の大半は上意下達のヒエラルキー型組織ですが、プロジェクトでは学生と企業の経営者や担当社員が新たなチームを作ります。チームでは対等なフィードバックを意識しているので、特定の誰かが牽引するのではなく、相互にリーダーシップを発揮し合うような組織文化に変化していくという効果もあるようです」

広島で実験できないものはないここにはすべてが揃っている

こうした大学をハブにした共創システムは、地域特性を最大限に活かせる地方だからこそ実現可能だと早田は語る。

「地方は範囲が限定され、行政や中核となる事業会社はもちろん、銀行、新聞、鉄道、テレビ局といった主要プレイヤーが明確で互いの顔が見え、日常的な関係性の中で連携が生まれやすい環境にあります。東京や大阪といった大都市は大学だけでも山ほどあるため、特定の組織が中心になるという構造自体が不可能なのです」

広島駅から徒歩10分の都市型キャンパス。広島のまち全体をキャンパスと捉え、さまざまな取り組みをしている。

数ある地方都市の中で、なぜ広島なのか。

「社会実装の実験には多様な環境が必要です。広島は120万都市の機能、自動車や造船などの重工業、農水産業、そして山・川・海・島の自然まですべてがバランスよく揃っています。『広島で実験できないものはない』と言えるほど多様で、かつ都市部はコンパクトに集約されています。心理的・物理的な距離の近さが、思いついたアイデアを即座に実験・実装できる圧倒的なスピード感を生むのです」

さらに「HIROSHIMA」という圧倒的な世界ブランドも大きい。世界中から人々が訪れるこの地からソリューションを発信すれば、あらゆるグローバル都市にアプローチしていける強力な流れが作れるのだ。プロジェクトの先に見据えるのは、「地方の復権」という大きなテーマである。

「AI普及により大企業の仕事の半分が代替される中、残る本質的な仕事は意思決定と現場での課題探索です。経営人材が枯渇する地方の中小企業こそ、首都圏の大企業で活躍した人や、より成長したいと願う若者の自己実現の場となります。産業基盤の厚い広島は、これからの時代において選ばれる地方都市の筆頭になれる期待があるのです」

教育・研究機関だった大学をイノベーションのハブに再定義し、「日本でもっとも成長できる場所」として街の価値を向上させる。このアクションは一地方大学の実験にとどまらず、社会全体に波及する可能性を秘めている。世界的なパラダイムシフトの中、理想の未来をつかむための希望と躍動がここにある。

「今は明治維新や戦後復興期に匹敵する、歴史的な転換点。変化には不安も伴いますが、新しい価値観をゼロから創り出せるチャンスです。また地方都市は自己実現のフィールドとして可能性を持ち始めています。人生で何をしたいのかを問い直し、自らの意志で「挑戦する場所」を選び取ってほしい。少しでも『面白そう』と感じていただけたなら、遠慮なく叡啓大学のドアをノックしてください。私たちと一緒に新しい未来を創っていきましょう」

(制作協力=叡啓大学

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