Windows PC向けプロセッサーとして、最近魅力をグッと増したのがクアルコムのSnapdragonだ。今年、日本語入力システム「ATOK」がARMプロセッサーに対応したことにより、特にビジネス用途でインテルやAMDなどのx86系プロセッサー搭載PCとほとんど変わらない使い勝手を実現している。
今回レビューする「ASUS Zenbook SORA 16(UX3607OA)」は、クアルコムの最新プロセッサー「Snapdragon X2 Elite Extreme X2E-94-100」を採用したノートPCで、本日4月8日に発売となった。
このプロセッサーは前世代よりもCPU、GPU、NPU性能が大幅に向上。さらに、ディスプレーを16インチにサイズアップすることにより、魅力的な大画面ノートPCに仕上げられている。
ASUSから試用機を借りたので、新型プロセッサーの採用により処理能力がどのぐらい向上しているのかにスポットを当ててレビューしていこう。
AI処理能力は従来の45TOPSから80TOPSへ
「Snapdragon X2」搭載機ついに発売
「ASUS Zenbook SORA 16(UX3607OA)」(以下SORA 16)はOSに「Windows 11 Home 64ビット」、プロセッサーに「Snapdragon X2 Elite Extreme X2E-94-100」を採用。メモリーは48GB(LPDDR5X-9523)、ストレージは1TB(PCIe Gen4 x4接続SSD)を搭載している。
Snapdragon X2 Elite Extreme X2E-94-100は前世代の「Snapdragon X Elite」よりスペックが向上しており、特にAI処理能力は従来の45TOPSから80TOPSへと引き上げられている。
ディスプレーは16型有機ELで2880×1800ドット、リフレッシュレート120Hz、応答速度0.2ms、最大輝度1100ニト、DCI-P3カバー率100%、コントラスト比100万対1、グレアを搭載。ディスプレー上部には207万画素ウェブカメラ(顔認証対応)、マイクを内蔵。オーディオ機能としてはDolby Atmos対応の6スピーカーシステムを装備している。
インターフェースは、USB4(Type-C、Power Delivery、映像出力対応)×2、USB 3.2 Gen2 Type-A、HDMI、SDメモリーカードスロット、3.5mmコンボジャックを用意。ワイヤレス通信はWi-Fi 7、Bluetooth 5.4をサポートしている。
本体サイズは353.5×242.4×13.8~16.5mm、重量は約1.2kg。70Whのバッテリーを内蔵しており、バッテリー駆動時間は最大22時間と謳われている。
ハードウェア的にはこの1モデルのみであり、MS Officeなしが33万9800円、MS Officeありが36万9800円に設定されている(どちらも希望小売価格)。メモリーはプロセッサー統合型で増設できないが、48GB搭載していればクリエイティブ系用途でもよほど大きなデータを扱わないかぎりは十分事足りるだろう。
有機ELノートを先行投入した
ASUSならではの安心感
SORA 16の売りのひとつが、16型の有機ELディスプレーだ。解像度は16型として十分精細な2880×1800ドット。リフレッシュレートは120Hz、応答速度は0.2msと、描画性能はゲーミングノートPCに匹敵する。
また色域はDCI-P3カバー率100%、コントラスト比は100万対1を実現しており、色精度はDelta E < 1を達成。正確な発色により、クリエイティブワークからコンテンツ鑑賞まで幅広く活用できるディスプレーだ。
有機ELで懸念される焼き付きについては、ASUS独自の保護機能がソフトウェアレベルで実装されている。同社は早い段階から有機EL搭載ノートPCを市場に投入しており、このカテゴリーにおける実績、信頼性は高い。
「ASUS Lumina OLED」と名付けられたディスプレーはHDR(VESA DisplayHDR True Black 1000)対応で、Pantone認証、低ブルーライト認証を取得。色精度はDelta E < 1が確保されており、正確な発色、鮮やかな映像を実現している
「MyASUS」にASUS独自の有機ELディスプレー保護機能が実装。「ピクセルリフレッシュ」は特殊なスクリーンセーバーにより、すべてのピクセルを均等に更新する機能。「ピクセルシフト」は表示ピクセルをわずかに移動することで静止画像が表示され続けるのを避ける機能だ
キーボードはASUS製品らしく剛性が高い。キーピッチは実測19.2mm、キーストロークは実測1.1mmが確保されている。
キーストロークが1.1mmというのはやや浅めだが、反発力を強めるとともに、クッション性を高めているのか、強めに打鍵しても不快な底打ち感は抑えられている。
英語キーボード用パネルの流用により一部キーが密着しているものの、16型ボディーを活かしてEnterキーが大型化されるなど、レイアウトには余裕がある。短期間でフルスピード入力できるようになるキーボードだ。
ウェブカメラはRGBカメラとIRカメラが独立しており、207万画素というスペックどおりの精細さを備えている。
色見本代わりのサクラクーピーペンシルを見たかぎり、色の再現性も高い。黒いケースも、白い棚もディテールが残っており、ダイナミックレンジも広い。
気になったのは左上がわずかに白っぽくなっていることだが、おそらく左上方向のシーリングライトの影響を受けているのだろう。総合的にはノートPC用ウェブカメラとしてはトップクラスの画質である。
Snapdragon X2はNPUだけじゃない
CPU、GPU性能が爆上がっていた
さていよいよ本記事のクライマックスだ。「Snapdragon X2 Elite Extreme X2E-94-100」を搭載したSORA 16はどのぐらいのパフォーマンスを発揮するだろうか。
今回は前世代プロセッサー「Snapdragon X Elite」を搭載した「ASUS Zenbook SORA(UX3407)」(以下SORA)と、直近でAMD Ryzen AI 9 465搭載16インチノートPC「ASUS Zenbook S16(UM5606GA)」(以下S16)を比較対象機種として使用している。
まずCPU性能については、Snapdragon X2 Elite Extremeは前評判通りのパフォーマンスを発揮している。「CINEBENCH 2024」のマルチコアで比較すると、SORA 16は、Snapdragon X 搭載のSORAの152%、Ryzen AI 9 465搭載のZenbook S16の183%に相当するスコアを記録した。
シングルコアも両機種を上回っている。アプリケーションがARMプロセッサーに最適化されていれば、実使用においても明確な速度差を体感できるはずだ。
「CINEBENCH 2026」のCPU(Multiple Threads)は7114、CPU(Single Threads)は633。「CINEBENCH 2024」のCPU(Multi Core)は1663、CPU(Single Core)は151。「CINEBENCH R23」のCPU(Multi Core)は18691、CPU(Single Core)は1595
「CINEBENCH 2024」のマルチコアではSnapdragon X2のSORA 16は、Snapdragon X 搭載のSORAの152%、Ryzen AI 9 465搭載のZenbook S16の183%のスコアを記録した
GPU性能については、予想を裏切る結果となった。「3DMark」のPort Royal、Time Spy、Fire StrikeはARMプロセッサーにネイティブ対応しておらず、エミュレーション環境での動作となっているが、それでもAMD Ryzen AI 9 465搭載のZenbook S16と比較して、Port Royalで118%、Time Spyで133%、Fire Strikeで148%相当のスコアを記録した。
同様にエミュレーション動作となる3Dゲームベンチマークでも、今回の3機種中でトップのスコアを記録。「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマーク」は15416(非常に快適)、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」は6561(快適)だ。
AMD Ryzen AI 9 465搭載のZenbook S16比で前者が157%、後者が152%と、3DMarkよりもスコア差を広げている点は特筆に値する。
プロセッサー自体の性能向上に加え、エミュレーター「Prism」の恩恵により、このクラスのゲームであれば実用的な速度でプレイできる。ただし、エミュレーション動作では、相性問題などにより一部タイトルで正常に動作しない可能性がある点には留意が必要だ。
Snapdragon X2搭載のSORA 16は、AMD Ryzen AI 9 465搭載のZenbook S16と比較して、Port Royalで118%、Time Spyで133%、Fire Strikeで148%相当のスコアを記録
「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマーク」(1920×1080ドット、標準品質、ノートPC)は15416(非常に快適)。「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」(標準品質、1920×1080ドット、フルスクリーン)は6561(快適)
Snapdragon X2搭載のSORA 16は、AMD Ryzen AI 9 465搭載のZenbook S16比でFFXIVで157%、FFXVで152%と、3DMarkよりもスコア差を広げている点は特筆に値する
ストレージはPCIe Gen4 x4接続SSD「SAMSUNG MZVL81T0HFLB-00BTW」を搭載しており、「CrystalDiskMark」のシーケンシャルリード(SEQ1M Q8T1)は7108MB/s、シーケンシャルライト(SEQ1M Q8T1)は5724MB/sを記録した。
PCIe Gen4 x4接続SSDならではのリード、ライト性能は、本機種の体感速度を支えてくれるはずだ。
試用機はPCIe Gen4 x4接続SSD「SAMSUNG MZVL81T0HFLB-00BTW」を搭載。「CrystalDiskMark」のシーケンシャルリード(SEQ1M Q8T1)は7108MB/s、シーケンシャルライト(SEQ1M Q8T1)は5724MB/s
今回一番楽しみにしていたのがAIベンチマークであったが、「UL Procyon」のAI Computer Vision Benchmarkがなぜか動作しなかった。複数回実行しても結果は同じなので、なんらかの相性問題が発生している可能性が高い。機会があれば80TOPSのAI処理能力を再テストしたいと思う。
バッテリー駆動時間については、ディスプレー輝度、ボリュームを40%に設定し、YouTube動画を連続再生したところ、フル充電から90%に減少するまで2時間15分20秒(8120秒)かかった。
単純計算では、残量0%まで約22時間33分動作することになる。処理性能の向上とディスプレーの大型化を両立しながら、これほどのスタミナ性能を備えているのは驚異的だ。
知識と割り切りは必要だが
Snapdragon X2のハイパワー&スタミナは超魅力だ
「Snapdragon X2 Elite Extreme X2E-94-100」を採用した「ASUS Zenbook SORA 16(UX3607OA)」は、16型モバイルノートPCとして前世代からパフォーマンスを大幅に向上させている。バッテリー駆動時間については簡易的な検証ではあるが、20時間前後のスタミナを備えていることは確実だろう。
エミュレーション動作時の相性問題についても、ATOKをはじめとするメジャーアプリケーションのネイティブ対応が進んでおり、実用上のハードルは低くなっている。
導入にあたって多少の知識やアプリケーションの選別といった割り切りは必要だが、ハイパフォーマンスと長時間駆動を両立した本製品は、非常に完成度の高いニューモデルである。
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