HPEが3年かけて構築した“後付けではない”ソブリン基盤とは
「日本は“真のソブリン”を実現する素地がある」 HPE幹部が語るデジタル主権の本質
2026年03月26日 09時00分更新
「パブリック」という言葉が付いた時点でソブリンではない
ソブリンクラウドは成長市場だ。Gartnerによると、2026年の世界ソブリンクラウドIaaS支出は、2025年から35.6%の増加となる800億ドルに達するという。
この市場を狙い、AWSなどハイパースケーラーもソブリン戦略を進めている。HPEの差別化はどこにあるのか。これに対し、モットラム氏は、「ハイパースケーラーはインフラを所有している。これに対し、我々はソリューションを構築し、プロジェクトが完了すれば顧客に渡す。つまり(HPEのソブリンソリューションでは)インフラは顧客のものだ。顧客がインフラを所有・運用し続ける」と語る。
ウィースト氏は、「ソブリンの根本はデータを自分で所有することだ。ハイパースケーラーのクラウドの場合、自社のデータは他社のデータと同じ場所にある。そもそも”パブリック”クラウドでどうソブリンを実現するのか。この2年で、顧客はその矛盾に真剣に向き合うようになった」と付け加えた。
欧州委員会は2025年10月、クラウドサービスの主権を8つの基準で評価する「Cloud Sovereignty Framework」を発表した。本社所在地だけでなく、サプライチェーンの透明性、セキュリティ、EUコンプライアンスなども評価対象となる。「我々はそのすべての基準を満たせている。グローバルな製造拠点と、日本を含む世界各地での60年以上の事業展開がその根拠だ」(ウィースト氏)。
ソブリン対応で先行しているのは欧州だが、日本はどうか。
ウィースト氏は、「欧州はソブリンが必要という意識においては成熟している。しかし、実現するための産業基盤は成熟していない。これに対し、日本は半導体産業、スーパーコンピューター産業、(半導体製造に関わる)リソグラフィ技術――と、真のソブリンを実現するための素地をすでに持っている。欧州が10年後に向けて準備している間に、日本は先行できる立場にある」と評価する。
さらに、日本政府も自律的なデジタル基盤の構築に本腰を入れ始めており、その動きが企業にも波及しつつあるという。2025年12月に閣議決定された「AI基本計画」はこの流れを加速させる政策的後押しとなる。KDDI、ソフトバンク、さくらインターネットといった国内通信・クラウド事業者もGPU搭載のAI対応データセンターへの投資を積極化しており、HPEはKDDIとのAIデータセンター構築連携も進めている。
ただし、モットラム氏は、通信事業者によるホスティング型のクラウドだけでは、すべての需要を満たせないと見ている。例えば製造業の場合、工場のラインに隣接したオンサイトAIへの需要がある。「製造業は製造ラインのすぐ近くにインフラを置きたいと考えている。400マイル先のクラウドでは、生産ラインに必要なレイテンシーが確保できない」とモットラム氏。
こうした多様な需要に応えるためにも、ソブリン対応は後付けでは実現できないと強調する。「多くの『ソブリンシステム』と呼ばれるものは、分断環境を想定していないレガシー基盤にポリシーを重ねただけのものだ。それは本来の主権ではない」(モットラム氏)
最後にモットラム氏は、「HPEはネットワーク、コンピュート、ストレージのすべてのレイヤーに設計段階からソブリン要件を組み込む『Sovereign by Design』アプローチをとる。我々は約10年前のGreenLake立ち上げ時からプライベートインフラとデータ管理の重要性を見据えてきた。今日のソブリン需要はその延長線上にある」と話す。そして、「コンプライアンスを理由に機能を妥協する時代は終わった。主権と競争力は両立できる」と語った。
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