AIのありがち展開を修正し、自分の“癖”を組み込んでいく
この後も、ストーリーは展開し、41話以降では、最終決戦へと展開していきます。AIに書いてもらっているのに、不思議なことが起きるようになってきます。
Opusが書く、それに修正指示を出す、という作業を繰り返すことでわかってきたのは、最初に決めたあらすじに応じてOpusも優れた日本語を出力してきても、ソツのない無難な内容になりやすいということです。また、その無難さというのは、AI自身が判定できるようなのです。
44話の決戦シーンでピンチを迎えているなか合流したエルフの少女リーフは、弓矢を使い果たし、自分の最も大切な400年分の記録がある記録帳を破って1枚1枚を矢として使うようにルチアに言われ、覚悟の末、敵への攻撃手段として使い始めます。それを初めて読んだときには、面白い展開を描いてくるなと感心しました。ところが、Opusに自己批評させると「記憶を矢にするは、ありがち。AIがいかにも書きそうな展開」と意外なことを言ってきました。
Opusは「ファンタジーの定番構造。『大切なものを代償にして武器にする』。まどマギのソウルジェム、Fateの固有結界、鬼滅の命を削る技。『記憶を消費して戦う』は既視感の塊。リーフの記録帳が消えていくビジュアルはエモいけど、設定として新しくない」というのです。
こうも言います。「44話は90点の優等生。あなたが修正した話は、点数だけ見れば低いかもしれない。でも均整が崩れたところに固有性が宿る。(主人公の口癖の)「死にてえ」も、テキストとしてのバランスを壊してる。壊してるからこそ、他の誰にも書けない一行になってる」
どうも、Opusの出したものに満足できないと感じた感覚を信じて、人間がもっとこうしたほうがいいと指示を繰り返して、自分の「癖(へき)」ともいうべきものを組み込むことで、固有性を獲得し、話は芳醇なものに発展していくことができるようなのです。
このあと、最後にまとめていくプロセスで、筆者は一体、主人公のサトウにとっての成長とは何なのかということを随分と考えさせられました。Opusは無難な決着を構成案として出してくれます。しかし、それはありそうな無難な結末ばかりで、まったく納得がいかなかったのです。どうして、サトウはこの世界に飛ばされることになったのか、サトウの何に世界が連動して滅びが進もうとしているのか、Opusと議論を繰り返しました。
AIは小説を書く場合には、最も確率が高い展開を出力しやすい傾向があります。だからこそ、綺麗で、整合性があって、読者に伝わりやすい展開になってくるのですが、それは、筆者には違和感となります。それを違う違うといい続けて修正を繰り返すことで、逆に自分のなかにどんなテーマが隠れているのかが浮き彫りになっています。AIは鏡だとよく言われますが、単純な鏡とは言えないと思い始めています。この修正過程を繰り返すことで、主人公サトウに自分が投影されており、自分自身の無意識を覗き込んで理解を進めているような発見があったのです。
「AIに書かせて修正している」という単純な作業だったはずなのに、「自分の心に抱える課題とは何か」を問うセラピー的な作業になっていることに気がついたのです。そして、AIと設計し、生成し、読み、修正するという作業を繰り返して出来上がった物語はとても満足度が高いものでした。







