パッケージに書かれていたスペック表記はことごとく怪しかった
こうなると、パッケージの誇らしげなスペック表記も気になってくる。特に「PD240W」「E-marker」は、USB Type-Cの世界では言った者勝ちでは済まされない領域だ。そこで筆者は自宅にあるUSBケーブルテスター類を総動員し、検証に踏み切った。
まず問題のケーブルをテスターにかけたところ、データ転送はUSB 2.0止まりでUSB 3.2は非対応だった。ここまでは「充電専用ケーブル」と言い張れば成立しなくもない。だが給電側では、PD3.0は通ってもPD3.1が×となり、240Wに必須のEPR(Extended Power Range)に届かない。
決定的だったのはE-marker検出である。テスターは「No Emarker chip detected」と明示し、E-markerチップ未搭載が判明した。E-markerが無いケーブルは基本的に3A運用が前提で、たとえば20V×3Aなら60Wが上限の目安となる。240Wどころか、100W級の5A運用すら“名乗れない側”だ。
抵抗値も高めだった。VBUS-GND間が382mΩという結果は、電力ロスと発熱の面で不利である。高出力をうたうほど、ここは効いてくる。
一方、比較用に用意したClub 3Dの「正しい240W対応ケーブル」は挙動がまったく違った。PD3.1が通り、E-markerが検出され、50V/5AのEPR対応として表示された。抵抗値も208mΩと低く、電力用ケーブルとして筋が通っている。つまり、240Wは「印刷」ではなく「交渉と実装」で成立する世界なのだ。
信頼性という意味では難有りだが、ネタとしては楽しめた
結論として、今回衝動買いした“衝動買いしたくなるUSBケーブル”は、心配な点が多い。パッケージに書かれたスペックで真実だったのは、少なくとも筆者の検証範囲では「1.5mというケーブル長」くらいである。とはいえ、普通の人にとっては60Wも出れば十分という場面も多い。E-marker必須ではないという考え方もあるだろう。
もしこの製品を使うなら、スタンドを先に広げてからポートに挿す、展開時にプラグへねじりを入れない、ケース干渉を事前に確認するといった「用心深い儀式」をセットにするべきだ。
そして今回の検証で筆者が最後に考え込んだのは、テストに使ったテスター類まで含め、全部が中国製だったという事実である。レアアースだけでなく、ガジェットの信頼性という意味でも、どこか一極依存から脱却する道筋を、そろそろ本気で考える時期に来ているのかもしれない。
もっとも、こうした学びを買えるのが衝動買いの醍醐味でもある。少なくとも筆者にとって、このケーブルは“高出力”ではなく“高密度のネタ”として、十分に元は取れた一品であった。

今回の衝動買い
・アイテム:240W T-shaped fast charging USB Cable
・購入:Lishun Trading Co.,Limited
・価格:40.88ドル(PayPalで約6700円)
T教授
日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。

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