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2025年は訴訟が多発、一方で協業の動きも……これからの見通しは

「生成AIの学習」「AI検索」が著作権侵害に当たるケースは? 日本弁理士会が解説

2026年02月04日 07時30分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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利用が急増する「AI検索」、著作権の視点から見た問題点

 2つめのテーマである「AI検索」については、2025年8月、日本の大手報道機関が記事などを無断で利用しているとして、米国のAI検索サービスであるPerplexityを提訴したこと、その一方で、AI検索事業者と報道機関が提携して収益を分配する動きも見られることを題材に取り上げた。

 現在利用者が急増しているAI検索は、ユーザーの質問意図をAIが理解し、ユーザーの代わりに検索を実行して、得られた情報をAIが統合/整理して回答を生成する「RAG(検索拡張生成)」の仕組みを使っている。このとき、インターネットで検索した結果を「複製」し、そのままAIに入力している場合が多い。ここで、情報を「複製」する行為が介在していることで、問題が起こりうると説明する。

 「合法入手以外の部分は、原則、著作権侵害となる。だが、例外として一定範囲内の公正利用がある。日本では、著作権法30条の4 、47条の5、32条についての議論になる」

 具体的には、先に触れた30条の4の例外規定(「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し……」)に、AI検索も含まれるかどうかが問題だという。久村氏は、文化庁の公開資料などを基に考えると「一部のRAGには30条の4は適用されない」と指摘する。検索AIが元記事と類似する表現を出力するようなケースでは「アウトと判断されることになると見られる」という。

 さらに、AI検索がどのような回答を出力するのかは、ユーザー側の利用方法よりもサービス提供側の設計による部分が大きい。加えて、サービス提供側が、元記事と類似する表現を避けるような技術的対策も可能と想定される。そのため、「十分な対策がなされないまま、類似表現を頻繁に出力するようなAI検索サービスを提供した場合は、サービス提供者の責任が問われる可能性がある」と指摘する。

 ただし、久村氏は「(サービス提供側に)そこまでの責任を問えるのかどうかが、著作権法の難しいところ」「果たして、侵害行為の責任主体はどこにあるのか。利用者なのか、提供者なのか。その点での議論が生まれることになる」とも語る。

 もっとも、著作権法113条の3項では、ウェブサイトに海賊版の情報が掲載されている場合、サイトの提供者が技術的に可能な防止措置を取らなければ、著作権侵害行為と見なされると規定されており、AI検索でも同様の責任が問われる可能性があることを示唆した。

 AI検索と従来型のインターネット検索の、著作権法上の扱いの違いにも触れた。

 著作権法47条の5では、情報の検索や解析、およびその結果を提供する行為に付随した「著作物の軽微利用」を認めている。従来のインターネット検索では、検索にヒットしたサイトの冒頭の1~2行が複製して表示されるが、これは軽微利用に該当し、著作権侵害とは見なされない。

 一方で、従来のインターネット検索との差別化を目的とするAI検索では、これまでよりも多くの情報が表示される。「これは『軽微利用』や『付随して』という範囲を超える情報を出力し得るものであり、47条の5は適用されないと判断される可能性がある」と指摘する。

 それでは、著作権法32条で規定されている「著作物の引用」という利用行為についてはどうか。久村氏は「AI検索では、インターネット記事のほぼ全文を解析のために複製しており、引用の要件は満たしにくいと思われる」と述べつつ、「47条の5において、AI生成物の出力が著作権侵害になるかどうかという議論が出てくるとすると、そのAI生成物の出力が、引用に当たるのか当たらないのかも議論となり、判断が複雑化する可能性がある」とコメントした。

 AI検索についてのまとめとして、久村氏は次のように語った。

 「AI検索についても、正規ダウンロードなどの合法入手以外の部分は、原則、著作権侵害となる。『例外として』一定の範囲内のみをOKとするという考え方に立ち戻る意識が大切だ。また、30条の4などの創設時には、AI検索などは想定されていなかった。その点では、その条文が有効に働くのかどうか、設けられている権利制限規定の真価が問われることになる」

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