Gmailからの他社メールサービスへのアクセスに使われていたPOPプロトコルがこの1月で廃止になる(https://support.google.com/mail/answer/16604719)。2~30年前なら「あっ、そう」で済ませられた話かもしれないが、今や電子メールは「古代の超技術」と呼んでもいいようなものになりつつあり、大多数の人が仕組みを理解せずに利用している。
このため、Googleによる告知(昨年9月)が何のことやらサッパリという人も少なくない。しかも、メール設定は一回してしまうと、そうそう頻繁に変更するものではなく、中には何年か前に誰かにやってもらったので、何がどうなっているかわからないという人もいる。
そういうわけで、今回は電子メールのプロトコルについて簡単に解説し、その上でGoogleの告知がどういう意味を持つのかを解説する。
そもそもPOPとは?
POPとは、「Post Office Protocol」の略で、メールサービス(メールサーバー、MDA:Mail Delivery Agentとも)から、メールを取得(受信)するために使うプロトコルである。通常は、ThunderbirdやOutlookなどのメールソフト(MUA:Mail User Agent)が、これを使ってメールを取得する。なお、このPOPにはバージョンがあり、現在はVer.3であるPOP3が使われている。
POPは、メールサービスからメッセージ(メール)をダウンロードするためのプロトコルだ。設定にもよるが、メールソフトはPOPでダウンロードしたメッセージをサービス側から消去し、メッセージをローカルのHDDなどに保存する。
サーバー側のメッセージは、コマンドを使って消去をするため、必ずしも削除する必要はない。しかし、POPには前回読み出したメッセージよりも後に来た「新着」メールを調べる方法がない。添付ファイルを含め、サーバーにあるすべてのメッセージを読み出して、メールソフト自身が保存したメッセージと比較しなければならない。これには時間がかかり手順も面倒なので、通常はメッセージを読み出した後に削除し、次回アクセス時には新着メールのみが残るようにしておく使い方が普通である。
POPは簡単なプロトコルで、新着メッセージの総数とサイズ取得、メッセージの一覧取得のコマンドでサーバーの状態を調べ、メッセージのダウンロードコマンドや消去コマンドで新着メッセージを処理する。
同じようにメールを取得するためのプロトコルとして、IMAP(Internet Message Access Protocol)がある。IMAPでは、メッセージはメールサービス側に保存され、これをアクセス、管理(フォルダ作成やメッセージ移動など)することができ、機能の1つとしてメッセージにアクセスできる。IMAPの最新版はVer.4のIMAP4。最近では、ISPが提供するメールサービスでもメッセージをサービス側に保存し、IMAPでアクセスさせる場合が普通になってきた。
というのも、現在ではメールをデスクトップPCだけでなく、スマートフォンやモバイルPCなど複数のデバイスで同時並行的に利用することが普通で、IMAPはそうした使い方に向いている。メールをローカルに保存してしまうPOPは、こうした複数デバイスからの利用とは相性が良くない。
後述するWebメールでもサーバー側にメッセージを保存する必要があり、IMAP/Webメールの両方をサービスするところが多いからだ。
IMAPは、POPと比べた場合には複雑なプロトコルで、メッセージの取得だけでなく、メッセージの管理機能も統合されている。また、メッセージのMIME構造を理解し、本文だけ、もしくは添付ファイルだけ取り出すこともできる。
メールを読むもう1つの方法として「Webメール」がある。これは、サービス側に保存したメッセージをWebブラウザで表示させるもの。メールソフトが不要で、ブラウザがあれば、どこからでもメールを読める。この場合、ブラウザとメールサービスの間は、通常のWebページと同じくHTTP/HTTPSを使い、メールサービス側にWebサーバー機能が組み込まれている。
ではGmailの何が使えなくなるのか?
Gmailは、POPを「受信メールの取得」という通常の使い方をするとともに「他社メールサービスからのメッセージ取得」にも利用する。前者ではメールソフトがPOPでGmailサービスからメッセージを取得できる。この使い方をするときにIMAPでのメッセージの取得も可能だ。
後者は、Gmailサービスがメールソフトの代わりにPOPを使って他社メールサービスからメールを取得して、Gmailの受信トレイに入れる。この機能がこの1月で終了する。問題が発生するのは、他社のメールサービスで受信したデータをGmailの受信トレーに取り込んでいる場合のみだ。
「Gmailの設定」→「すべての設定を表示」→「アカウントとインポート」→「他のアカウントのメールを確認」→「メールアカウントを追加する」を使うことで、他社メールサービスで受信したメッセージをGmailに取り込むことが可能だった。このとき指定可能なプロトコルはGmailifyとPOPしかない
ちなみに同時にGmailify機能も終了する。Web版のGmailでは、他社サービスへのアクセスは、GmailifyかPOPに限られている。Gmailでは実質他社メールサービスからメッセージを取得できなくなる。
スマートフォン版Gmailには、IMAPを使って、他社メールサービスにアクセスする機能がある。ただし、この場合はGmailと他社メールサービスでアカウントを切り替えて利用する。
GoogleとしてはGmailのみを利用してもらい、他社メールサービスとは分離したいのだと考えられる。逆に言えば、これまでPOPなどで他社メールサービスに接続していたのは、Gmailの利用を促すためだと考えられる。
インターネットが商用化された1990年台には、TCP/IPやその上のPOP、IMAPといったプロトコルの解説記事も結構人気があったが、雑誌媒体が廃れ、Web記事が多くなった頃には、解説記事のような長い記事は人気がなくなった。それもあってか、インターネットプロトコルなどは、今では「忘れられた」技術となった。もっとも、知らなくもメールを使うことはできるし、知識が役立つのはアカウント登録のときぐらいかもしれない。

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