ウイングアーク1st×ユカイ工学「ものづくり対談」レポート
甘噛みするだけのロボットに心が動く 予想外のヒットを生む“妄想起点”のプロダクト開発
2026年01月15日 10時00分更新
指を差し出すと赤ちゃんや幼いペットのように甘噛みしてくれる「甘噛みハムハム」、撫でるとしっぽで応えてくれる「Qoobo(クーボ)」。
ユカイ工学は、こうした独創的で人の心をつかむロボットを生み出すハードウェアベンチャーだ。生成AIでも提案してくれないだろうこれらのロボットのアイデアはどう生まれたのか。
ウイングアーク1stはビジネスカンファレンス「UpdataNOW25」を開催。本記事では、ウイングアーク1stの執行役員CTO 島澤甲氏とユカイ工学のCEO 青木俊介氏による、ものづくりの熱意や発想、アプローチについて語られたトークセッションの内容をお届けする。
ロボットは人の心を動かす“次世代のインターフェイス”
ウイングアーク1st 島澤氏(以下、島澤氏):我々は、生成AIを始めとするデジタルに、日々振り回されています。なので今回は、“刺さる”ものづくりに取り組む人として、ユカイ工学の青木さんから話を聞きたいです。
ユカイ工学 青木氏(以下青木氏):名前の通り、人をユカイにするロボットのスタートアップをしています。私自身は、チームラボの創業メンバーとしてCTOを務め、その後、ピクシブのCTOを経てユカイ工学を設立しました。
僕たちが手掛けるロボットとは、技術的にいえば、センサー情報をもとに賢く振る舞う、自律的な機械です。洗濯機も炊飯器もロボットですが、名前をつけて愛着を持つような存在ではありません。僕たちは、もっと人が“欲しい”と思えるロボットを形にしたい。だから、“心が動かされる機械”をロボットと定義して向き合っています。
島澤氏:工場で働くロボットというよりは、人と触れ合って、感情的に受け取るものがあるのがロボットというイメージですね。
青木氏:今後ロボットは、人の心を動かすインターフェイスの役割を担っていくと思います。ただ現状は、例えば家庭内で2足歩行のロボットが家事をするにも、技術的な限界があります。なので僕たちは、身近なところから人に寄り添う形でスタートしています。
島澤氏:私も何個かユカイ工学さんのロボットを買っていますが、人の感性を揺り動かしたいという想いは伝わりますね。
社内コンペは経理も人事も参加 最大のルールは“妄想から始めること”
青木氏:例えば、2025年のCES(毎年1月に開かれる世界最大級のテクノロジー見本市)では、鞄に抱き着いてチラ見してくるロボット「みるみ」を発表しました。これは、電車で抱えられた赤ちゃんと目があった時の“何か嬉しい気持ち”を再現しようとしたのが開発のきっかけです。
同タイミングで発表した「猫舌ふーふー」は、マグカップにくっつけると、風を送ってコーヒーやスープを冷ましてくれます。
島澤氏:猫舌ふーふーは購入しました。せっかちな私でも、ロボットがフーフーするのを待つのは、不思議と苦痛ではないです。そして、実際触ってみると、滑らかで質感も心地よい。ソフトウェア開発でもディテールを大事にすべきと言われますが、同じような拘りを感じました。
青木氏:うれしいですね。僕自身、子供の頃からハードウェアが好きで、たとえばソニーのウォークマンを買った時のワクワク感を届けたいという想いでものづくりをしています。
他にも、プロダクトデザインの世界では、Nothing Phoneというスマホのデザインを手掛けるTeenage Engineering(スウェーデンの企業)が注目されています。任天堂のハードウェアに影響を受けているそうで、彼らもワクワクや遊び心を始め、色々な想いが詰め込まれているのが伝わるプロダクトを作っています。
島澤氏:ユカイ工学でも、プロダクトを設計する段階で色々な想いを込めるのでしょうか。
青木氏:まさに、最初にアイデア出しで、“個人の想い”をすごく意識しています。プロダクトは基本的に、チーム対抗戦での社内コンペから生まれるのですが、これに全社員が参加するのです。企画専門チームはないため、デザイナーやエンジニアはもちろん、経理や人事担当も参加します。
そのアイデア出しの最大のルールが“妄想から始める”というものです。その妄想の熱量が高ければ高いほど良いと設定しています。













