
仕事において上司から「自由にやっていい」と伝えられたとき、どんなことを考えるだろうか。上司としては信頼して任せたつもりでも、昨今のZ世代は「正解が分からない」「失敗したらどうすればいいのか」とプレッシャーを強く感じる可能性があるようだ。
Z世代をめぐるマネジメント意識の実態に関する調査を、ファッション・ラグジュアリー・ライフスタイル分野に特化した専門広告会社、ザ・ゴールが発表した。2025年9月にインターネットによる調査を実施し、全国の20〜59歳、男女500サンプルを対象とした分析である。
調査結果によれば、Z世代(おおむね1990年代後半〜2000年代生まれの世代)は、職場での「失敗・ミス」を非常に嫌う傾向が強いという。30〜50代と比較して、「マニュアルどおりに動きたい」「ミスしたときに周囲の目が気になる」「試されていると感じると萎縮する」といった回答が大幅に多く、心理的な不安の高さが浮かび上がっている。

また、Z世代の理想とするマネジメントスタイルとして、自由な服装や髪型、有給休暇の理由を聞かないなど“個の自由”を支持する傾向はみられるが、「まずは自由にやってもらう」「失敗しても再挑戦を後押しする」といった裁量や挑戦を促す働き方には、他世代よりも支持が低かった。

つまり、「自由な職場環境」は好むものの、「自由=放任」のような働き方には不安を感じていると考えられる。
さらに「上司との理想の距離感」に関する意識も、他世代と大きく異なっていた。Z世代は同世代・先輩・後輩といった存在には比較的近い距離感を望むものの、上司に対しては「一定の距離」を置きたいと考える傾向が強く、他世代よりもその傾向が顕著だという。

そして、「距離感が小さい上司」像には「信頼できる指導者」「安心できる存在」といったポジティブなイメージがある一方で、「距離感を置きたい上司」には「敵」「反面教師」といった否定的な印象を抱く層が一定数存在した。

Z世代の中でも特に「上司と距離を取りたい」と感じている層が、どのようなマネジメントを理想とし、逆にどのような対応を望んでいないのかを調査したところ、「プレッシャーをかけすぎないようにする」「褒めて伸ばすことを大切にする」といった回答が目立った。

一方、「自由にやってもらう」「難しい仕事を経験させる」といったマネジメント施策は、上司世代が「若手の成長を促すため」と善意で取り入れがちな対応であるにもかかわらず、Z世代にとっては放置や丸投げと受け止められ、心理的な負担となっている可能性が考えられるという。
このような背景を踏まえ、ザ・ゴールの分析では、従来型の「まず任せてみる」「自由にやらせる」といったマネジメントは、Z世代にはむしろ不安や萎縮をもたらす可能性があると指摘する。
Z世代にとって理想なのは、自由と裁量を残しつつも、「見守り」「支え」「信頼」を感じられる“見守り型マネジメント”であるという。強制や放任ではなく、伴走しながら安心して働ける環境を整えることが、彼らの自発性とパフォーマンスを引き出す鍵だとしている。
今回の調査は、Z世代の特徴的な心理傾向や価値観、そしてそれに即したマネジメント手法のヒントを浮かび上がらせた。若手社員の育成や組織運営に悩む企業にとって、「自由=正義」ではなく、「安心と信頼」を土台にした関係性の設計が、重要になる可能性が高いといえるだろう。








