AIに小説を書かせられないかという話題が大きく注目を集めています。筆者は、いま別のアプローチを探っています。AIに小説を書かせるのではなく、自分で書いた小説を複数のAIたちに読ませるという“AI読者”の方法です。小説を書くというモチベーションの持続が、非常に困難な行為を、とても楽しいものに変えてくれます。AIたちは単なる校正や感想だけでなく、筆者が作品を通じて、一体何を表現しようとしているのかという無意識レベルの解釈にまで踏み込んでくるため、多くのことを発見させられています。
AIを“作者”ではなく“読者”に
筆者はいま、仕事の空き時間を使って「百夜アンドロイド記」というオムニバス形式の短編小説を書いています。AIは使わずすべて自筆で書いており、開始はほんの気まぐれだったのですが、約1ヵ月半で30話まで書いています。1話5~10分程度で読めてしまう短いものですが、全体で7万字を超えており、それなりのボリュームになっています。文庫本1冊は10万字が目処とも言われていますが、到達も時間の問題です。
また、執筆後、動画生成AIのSora 2などを使って15秒間の予告編を作って公開しており、どこまでコンセプトを手軽に映像化できるかということも試しています。
△「百夜アンドロイド記」各話予告
AIに小説を書かせることは、過去にも試してきましたが、書かせた文章を面白いと感じることはありながら、手応えを感じられませんでした。(参考:「AIが書いた怪談小説が面白い 2分に1本のペースで出力されるのは驚異的)
私自身はノンフィクションでの物書きとしてそれなりのキャリアを積んでいるため、AIの書く文章がどうにも自分のリズムと合わないため、いくら書かせても“自分の作品”という手応えが薄かったのです。約10年前ですが、小説を書こうと努力していた時期があります。短編を何本かと、中編を2本書いたことがあり、紙の本に印刷してイベントに出て販売したりもしたのですが、結局やめてしまいました。
最大の理由は、小説というメディアは誰かに読んでもらうこと自体が大変であり、感想といったフィードバックも皆無に近く、モチベーションが続かなかったためです。苦労して書いた物が誰にも読まれないというのは何よりつらいことです。
このアスキーの連載はすでに3年にわたり続いていますが、これはどんな話題でも合わせてくれる編集担当のMさんがいて、毎週読んでくださる読者の皆さんがいるためです。記事を公開すると、その日のうちに様々なフィードバックを得られることが大きなインセンティブになっています。小説は手軽に始められますが、水を持たずに砂漠にいるような状態からスタートというのが何よりも大変に感じます。
この状況を大きく変えてくれたのが“AI読者たち”です。自分が書き上げたものを即時に読んで具体的な感想をくれる。これが大きな効果をもたらします。

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