プラットフォームは社会が使い方を発明する場所
Tools for HumanityはWorld IDの使い方を規定していない。牧野氏も講演の中で「使い方を僕らが決める必要はない」と強調していたが、この発言の背景には「用途は社会が発明する」という、プラットフォームのあり方に対する牧野氏自身の経験と明確なフィロソフィーがあるようだ。
「TwitterもInstagramも、当初は今の使われ方を想定していませんでした。結局、ユーザーが勝手に新しい文脈を作り、文化が育っていった。World IDも同じです。僕らはIDという基盤を提供するだけで、どのようなアプリケーションが生まれるかは社会が決めるものだと思っています」(牧野氏)
上述したマッチングアプリの年齢確認のほか、コミュニティの会員証、SNSでのスパム対策、チケット転売の防止など応用の可能性はいくつか挙げられた。
World IDが持つ「匿名でありながら唯一無二の人間であることを証明する」という目的は、多くの社会的課題の前提を覆す可能性を秘めている。World IDにはSDKやウェブキットがあり、アプリなどにもは簡単に組み込める設定になっているという。「数が増えれば増えるほど、社会インフラに近づく。そこが重要だと思っています」と牧野氏は語る。World IDを社会の共通基盤へと成長させる考え方を貫いている。
「我々が全ての未来像を描く必要はなくて、むしろ、僕らの想像の範囲に収まるのは失敗なんです。World IDという基盤を開き、社会側が自由に応用できる状態にすること。それがプラットフォームとして最も重要だと考えています」(牧野氏)
「匿名で一人一つのIDが実現できたので、それでしかできない新しいものが出てくるといいなと思います。企業や個人、コミュニティがWorld IDをこう使うということを発明していくと期待しています」(牧野氏)
牧野氏は、World IDの意義を「未来を決めるのではなく、未来を生み出す基盤」だと語る。匿名で、一意で、個人情報を持たず、世界中で共通に使えるWorld IDの登場は、インターネットが抱えてきた構造的な問題を根本から覆す力を持ち、これまで経験したことのない世界を生み出す可能性がある。
「一人一つ」がもたらす巨大な社会インパクト
現在Facebookが30億人というアカウントを持っているが、World IDはそれに匹敵する、あるいはそれを超える規模となっていくだろう。そのときWorldプロジェクトが社会にもたらすインパクトは想像もできないパワーを秘めている。
匿名性を保ちながら一意の個人であることを証明するWorld IDが何十億人という単位で当たり前に使われる時代となったとき、このプラットフォームはどのような世界を作り出すのか。まだ見たことのないサービス、インターネットの概念を覆す新たな情報インフラ、世界中の人々がWorld IDを用いて活動する未来。我々の未来はその新しい扉を開ける入り口に立っている。

この連載の記事
-
第4回
ビジネス
日本におけるスタートアップの発展に向け、起業家とそれを取り巻く環境、知識や意識を強化する「Startup Business School」のインパクト -
第2回
ビジネス
全成分を資源循環させるリサイクル技術、持続可能な社会の実現に関わるプラットフォームへのヒントは? -
ビジネス
ウェルビーイング時代の経営デザイン 時代の変遷と知財がもたらすこれからの戦略 -
ビジネス
スタートアップに求められるもの エコシステムの更新が生み出す次への挑戦 - この連載の一覧へ









