抽象的なので、少し掘り下げましょう。
具体例を挙げれば「顧客データを活用して常連向けのサービスを提供」したり、「来店傾向を分析してメニュー改良につなげたり」といった施策がこれに当たります。
山敷さんは、高田馬場のラーメン店「博多ラーメン でぶちゃん」を例に挙げ、完全キャッシュレス化や予約システムだけでなく、オンラインサロンを運営し、サロンメンバー限定のメニューを提供するなど、DXを活用した多面的な取り組みが実施されていることを説明しました。
忙しすぎる個人店でこそ、DXの価値は大きくなる
そして話題は「飲食店におけるデータ活用の重要性」へと映ります。
この日のモデレーターを務めた吉川は、角川アスキー総合研究所でデータ分野を管掌。ラーメンWalkerキッチンの運営などに携わっています。
吉川は、ラーメンWalkerキッチンを例にとって、具体的な事例を紹介します。
ラーメンWalkerキッチンは、全国の名店から“店長”が厨房に立ち、都度提供メニューが入れ替わるブッキング型の運営を開店時から実施しています。こうした運用のため、券売機に表示される“画像”もひんぱんに変わります。
そこで、吉川は券売機に表示した画像がウェブサイトにも反映される仕組みを、FileMakerを使って構築しました。画像は実店舗で配布するショップカードにも活用しており、いわばClaris FileMakerをハブとして、同じビジュアルを多面展開できる状態にしているわけです。
飲食店は集客やバラエティー生活の増強を目的として「期間限定メニュー」などを提供するケースもありますが、中小規模の飲食店では、店主が現場のオペレーション、インターネットを通じた広報活動、財務の管理、スタッフの育成やマネジメントを兼ねているケースもしばしば。
そんな多忙を極める日頃のオペレーションをこなしながら、メニューが変わるたびにウェブサイトを更新するのはなかなか大変です。「正直、そこまで手が回らない」という方も多いのではないでしょうか。こうした仕組みを構築することで、店舗運営の負担を減らせるのは、DXの大きなメリットのひとつですね。
また山敷さんは、「美味しさ」「雰囲気」といった、来店者の主観的な要素をデータ化する難しさに触れつつも、menuでは“レビュー”を通じて「味や体験に客観的な指標を与え、ユーザーが参考にする」というプロセスが実現できている点について語ります。
この話題から派生して、将来的には、AIやデータ分析を活用して、個人の好みを分析して最適なラーメンを推薦したり、塩分計で味を微調整したりといった、新しい飲食体験が可能になる可能性にも触れました。
会場にデリ麺が到着! 満席でも売り上げを伸ばせる仕組み
セッションの中盤には、会場に大門の名店「鶏ポタラーメン THANK」から、お店を代表するメニュー「スペシャルぽてり・とろり」が到着! 大山鶏と9種の野菜をじっくり煮込んだ、トロリとした舌触りのスープが特徴のラーメンです。
このラーメン、実は、menuとラーメンWalkerが共同開発した、カップ麺やチルド麺に次ぐ新たなラーメンの形態「デリ麺」によるもの。
ラーメンは温度管理や麺の“伸び”などの問題から、デリバリーとの相性が悪いとされてきました。しかし、このプロジェクトでは麺とスープ分離式の密閉容器などを含めて“30分後に楽しめる”をテーマに開発を進め、配達でもおいしく食べられるラーメンを実現しています。
山敷さんは、「雨の日や忙しい日でもデリバリーなら楽しめる」とユーザー側のメリットにも触れつつ、ラーメン店側のメリットにも触れます。
「ずっと混んでいて店舗は満席だけれども、実はキッチン側に余力があるとき、イートイン専用の店舗では作れなかった売上を、(デリ麺の仕組みを使えば)別で作れます。単純に、店舗を構えながら(デリバリー分の)売り上げを伸ばしていくことができます。店舗さんによっては、そもそも集客に課題を感じられていることもありますが、(menuのデリ麺を活用すれば)アプリ上で集客していけるっていうのも我々のサービスですね」
試食した日比野さんは、「デリバリーだっていうのが本当に信じられないぐらい、できたてを食べてるいる感覚で食べられるので、みなさんにも本当に食べてみて欲しいです」と話しました。













