日本オラクルとのタッグで「物流倉庫の『止まらない運用』」実現目指す
イトーキ・湊社長「AIを経営の中核に」 まずは物流自動倉庫向け予知保全サービス発表
2025年11月06日 07時00分更新
イトーキは2025年11月5日、自動物流倉庫向け装置「システマストリーマー SAS-R」の新たな保守サービス「ITOKIアドバンスドメンテナンス」を発表した。
同サービスは、SAS-Rの稼働データをエッジPCで収集、AI分析して、故障発生前の兆候を検知して保守作業を実施する「スマートメンテナンス(予知保全)」と、イトーキからの遠隔サポートを行う「リモートメンテナンス」を組み合わせることで「物流の『止まらない運用』」の実現を目指すもの。
予知保全のためのデータ収集/蓄積、AIモデルの構築/チューニングには、オラクルが提供する「Oracle Autonomous AI Database」や「Oracle Cloud Infrastructure(OCI) Data Science」を採用している。記者発表会にはイトーキ、日本オラクルが出席し、同サービスの開発背景とともに、イトーキがデータとAIのビジネス拡大を目指す方針が語られた。
物流の「止まらない運用」実現を目指す、新たな保守サービス
オフィス家具や什器などのワークプレイス事業で知られるイトーキだが、実は売上のおよそ4分の1は、工場/物流施設、調剤薬局、災害対応施設、文化施設(博物館など)に設備機器やソリューションを提供する「設備機器・パブリック事業」が占める。
今回発表されたのは、この設備機器事業の主力製品のひとつである、SAS-R向けの保守サービスだ。
SAS-Rは、荷物を載せて高速に水平移動し、棚への入荷/出荷も行うシャトル台車(ドーリー)と、棚の各段間で垂直移動を担うエレベーター(リザーバー)、それら全体を制御するLCU(ローカルコントロールユニット)で構成される自動物流倉庫システムである。
高速な動作を特徴としており、エレコム、モノタロウ、大手自動車メーカーといった顧客企業の倉庫で、およそ750基の導入実績を持つ。
イトーキ「システマストリーマー SAS-R」の説明ビデオ
物流業界では、人手不足(労働力減少)を背景として、SAS-Rのような自動化設備の導入が急速に進んでいる。ただし、そこで課題となるのが、設備故障などによる「突発的な稼働停止」だ。特に現在のサプライチェーンは複雑化しており、一部の物流機能が止まるだけで、サプライチェーン全体に遅延や混乱を引き起こすリスクがある。
設備故障の発生後に部品交換や機器調整を行う「事後保全」では、ダウンタイムが長引きがちとなり、事業に大きな影響を与えてしまう。そこで従来は、定期点検(たとえばSAS-Rならば6カ月ごと)のタイミングで部品交換を行い、故障を未然に防止する「予防保全」が行われていた。これならば、事前に計画して設備を休止することができ、ダウンタイムも比較的短く済む。ただし、部品の消耗状況に関わらず交換をしなければならない点が非効率だ。
今回のサービスでは、故障の兆候をAI分析で検知し、故障発生前に部品交換などを行う「予知保全」を実現する。これにより、突発的な稼働停止を防ぐのと同時に、部品をなるべく長く使えるよう部品の交換タイミングを最適化できる。
イトーキでは、今回の保守サービスには「ダウンタイムの回避による生産性向上」や「無駄な部品交換の削減」に加えて、「状態可視化による保全業務の効率化」「保全人員の人件費削減(省人化)」「保全作業者の後継者問題の回避」という、合計5つのメリットがあると説明している。













