「GMO AI・ロボティクス大会議」で語られた産業界からのメッセージ
AIは身体を持つのか? NVIDIAとOpenAI、二つの巨人が描く日本のAI・ロボティクス革命
2025年10月15日 09時00分更新
OpenAIが牽引する「インテリジェンスの時代」 チャットからエージェントへの進化と日本市場の重要性
AIの「知性」そのものを開発する最前線に立っているのがOpenAIだ。同社のCOO(最高執行責任者)であるブラッド・ライトキャップ(Brad Lightcap)氏は、ビデオメッセージで「日本は最も急成長している市場のひとつであり、今や米国以外で最も重要な市場」と語り、日本市場への強いコミットメントを示した。
続いて登壇したOpenAI Japanの代表執行役員社長を務める長﨑忠雄氏は、2023年4月にアジア初のオフィスを日本に開設してからの1年で、同社自身も大きく進化したと振り返る。
ChatGPTも目覚ましい進化を遂げた。以前はテキストでのコミュニケーションしかできなかったが、今や音声、画像、動画など、あらゆる情報を扱うマルチモーダル化が進んでいる。さらに、人間のように思考を巡らせる「リーズニング(推論)」能力も大きく向上した。今では、数学オリンピックの問題を解けるほどまで進化している。
長﨑氏は、最新フロンティアモデルである「GPT-5」に言及し、ChatGPTが単なるチャットツールから、ユーザーに代わってタスクを実行する「エージェント」へと進化していると説明した。そして、「この進化スピードを1年前に予想できた人はいないはず」と付け加える。
OpenAIは2015年に研究所として設立され、「AGI(汎用人工知能)が全人類に利益をもたらすこと」をミッションに掲げている。AGIとは、人間と同等、あるいはそれ以上に幅広い仕事をこなすAIを指す。長﨑氏は、同社は研究機関であると同時に、この技術を活用して新しい価値を生み出す製品を展開することこそが最大の使命と語る。この1年で状況は大きく変わり、AIはたまにしか使わない道具から、毎日欠かさず頼ることができる土台のような存在へと進化した。
「我々は(以前のチャットボットの時代に続いて)現在を“インテリジェンスの時代”と呼んでいます。我々の知性をより加速させてくれるAIシステムが、我々に代わって考えたり、計画を立てたり、直接仕事を進めてくれるような時代が到来したと思っています」(長﨑氏)
企業活動においても、この「知性」がインフラとして業務に組み込まれる動きが日本でも広がっている。AIはもはや検証や実験の段階を終え、本格的な導入と活用のフェーズに入っている。
現在、OpenAIの週間ユーザー数は世界で7億人を超え、日本でもこの1年で週間利用者数は4倍に増加したという。個人利用だけでなく、スタートアップから大企業、大学、自治体まで、AIが業務になくてはならないものになりつつある。金融や小売り、製造など、あらゆる業界のトップ企業がOpenAIのサービスを導入し、業務フローの変革を進めている。
OpenAIにとって日本は、米国に次ぐ重要な国であり、国際戦略の中心だ。特に長﨑氏が強調したのは、日本の強みであるロボティクス分野での連携についてだ。AIとロボティクスには大きなチャンスがあり、日本が抱える社会課題をAIが解決する可能性に期待を寄せているという。
学術連携も進めており、東京大学をはじめとする様々な大学と連携し、ロボティクス研究をスタートさせている。また、滋賀大学や近畿大学などでは、教育版の「ChatGPT Education」を導入し、学生がAIネイティブとして活躍できる人材の育成を支援している。OpenAIは産官学の連携を通じて、安全で信頼できるAI社会の実現を目指すという。
筆者は、2つのセッションを通じて、NVIDIAとOpenAI、両社のビジョンは共鳴していると感じた。NVIDIAは、AIファクトリーと高度なシミュレーション技術によって、AIが身体性を獲得し、現実世界で自律的に行動するための開発環境とインフラを提供する。
一方、OpenAIは、GPT-5をはじめとするフロンティアモデルの開発によって、その身体を制御する知性を人間のレベル、あるいはそれ以上に高めようとしている。この「身体」と「知性」が融合するとき、ロボティクスの可能性は飛躍的に広がるだろう。
両社が共通して強調するのは、日本市場への期待だ。日本には、長年にわたって培ってきた精密なハードウェア技術、ものづくりのノウハウがある。高齢化や労働力不足といった世界に先行する課題先進国だからこそ、その解決策としてのAIロボティクスに対するニーズも切実なものがある。
大崎氏が語ったように、日本が培ってきた技術と最新のAIを繋げ、ユニークなアイデアを形にすること。それが、日本が世界に示すべきリーダーシップだという心強いメッセージに期待したい。そして、OpenAIのいう「インテリジェンスの時代」において、日本の技術力と創造力が試されている。












