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私→WRC 第69回

「絶望のエンジン故障」久万高原ラリーは悪夢のサバイバル! 梅本まどか、最高の走りを見せた直後のリタイア劇

2025年10月12日 15時00分更新

文● 梅本まどか 編集●ASCII

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 ASCII.jp読者のみなさん、こんにちは! CUSCO Racingから全日本ラリーJN2クラス・モリゾウチャレンジカップに、GRヤリス前期MTでコ・ドライバーとして参戦しました、梅本まどかです。

コ・ドライバーの梅本まどかです

GRヤリスで挑む久万高原
英語ノートへの挑戦と準備

 10月3~5日に、愛媛県の久万高原町を中心に開催された、全日本ラリー選手権第7戦「久万高原ラリー2025」。第4戦のモントレー以来のGRヤリス、ドライバーの田部井翔大選手なので約4ヵ月ぶりのパッケージで参戦させていただきました。

 田部井選手とは以前の飛鳥戦、モントレー戦と組ませていただいたので3回目のコンビ。飛鳥はGRヤリスのDAT(Direct Automatic Transmission)、モントレーは前期のMTでしたが、今回はモントレーと同じ車両でした。

 モントレーでは悔しい結果になり、そのあとのモリゾウチャレンジカップの練習会では一緒にノートの見直しをして、まずは日本語ノートから英語ノートへの変更。言葉を変えたので、用語の入れ方なども見直し、練習ではかなりいい感触を掴むことができました。

 英語ノートの実戦としては今回が初めてなので、まずは慣れること「完走する」ことを目標に取り組みながら、試せることは試して引き出しを増やそうと挑みました。

今回はゼッケン29です

 久万高原ラリーといえば! 景色が綺麗だけど霧が出やすい場所で、基本的に使う林道は大谷と大川嶺の2本です。土曜日の1日目で順走を各2本。日曜日の2日目は土曜日の逆走を各2本というアイテナリー(スケジュール表)。アップダウンも激しく、昨年も霧でまったく見えず、難しいラリーでした。今年も土曜日は霧。日曜日は晴れたけど路面はウェットで、かなり難しくサバイバルなラリーになりました。

Leg1(1日目))

SS1.大谷  13.51km 4番手(救済タイム)
SS2.大川峰 13.80km 8番手
SS3.大谷  13.51km 8番手
SS4.大川峰 13.80km 7番手

Leg2(2日目)

SS5.大川峰リバース 13.57km 8番手
SS6.大谷リバース  14.00km 8番手
SS7.大川峰リバース 13.57km 7番手
SS8.大谷リバース  14.00km

最高の走りの直後に発生した「突然のエンジン故障」

 結果を先にお伝えすると、リタイアしてしまいました。SS中ではなく、SS7からSS8に向けて普通に移動をしている途中に、急に「エンジン故障」という表示が出てしまったのです。

 その後、動けなくなってしまい、止まった場所が1車線の細い林道だったので広い道まで車を押して、なんとか道を塞いでいた状況からは脱出。急に表示が出たので、解決策をいろいろ試していたところ、後続車のコ・ドライバーさんが降りてきてみんなで一緒に押してくださったのです。本当に申し訳なさと感謝の気持ちで、胸がいっぱいになりました。

 そこからみんなを見送りながらも、原因となりそうな場所をメカニックさんと電話を繋ぎながらチェックし、サービスパークではいろんな方が考えてくださり、なんとか走れないか全員で試みましたが、再びエンジンが動くことはなく、リタイアとなってしまったのです。

 正直、急なことだったので呆気にとられた感覚でしたが、この前のSS7は田部井選手と組んで一番いい走りができました。

 タイムだけを見ると、まだ前に追いつけていない部分もありますが、どうすればいいのかが見えてきたことが大きな収穫です! 走っていても車の動きが変わったことがわかり、いい感触でした。だからこそ、もう1本走って同じ感覚を得て、自分たちのものにできたらと思っていたので、残念です。

 メカニカルトラブルでのリタイアは私自身初めてで、車のことをしっかり理解している田部井選手の動きやメカニックさんの指示を聞き、とても勉強になりました。

リタイア届を出したあと

 久万高原ラリーは霧が出て難しいのはわかっていたつもりですが、今年はレッキから真っ白。徐々に濃くなり、最後の方は前が見えないほどでした。レッキの時に見えないのは初めての経験で、距離感が掴みづらかったり、これはやりにくいなと。言葉には出さなかったのですが、走ったことがあるのとないのでは、だいぶ差が出そうと感じた部分でもありました。

コ・ドライバーとして得た収穫と成長
パートナーの得意技を発見!

 土曜日の1本目はリタイア車が道を塞いでしまったことからタイムアタックできず、救済タイムに。1日目だけでも何台かリタイアがあり、サバイバルラリーになっていました。路面も濡れて滑るし、霧はあるし、何かを試すにも危ないのでなかなか過酷なラリーでDAY1は終了。SSは4本しかないのに、だいぶ疲れていました。

 そんな中でも、初めて田部井選手の得意な部分を知れたのは一番テンションが上がった瞬間でした。SS2と4の大川嶺はサービスパークから少し歩けばギャラリーポイントがあるのですが、大きな広場のところからサイドブレーキを引いてくるっと向きを変えて細い道に入っていくところで田部井選手のサイドターンがすごく綺麗に決まったのです。

 今まであまりサイドターンするような場面がなかったのですが、今回はみんなに見られて緊張しそうな場面でしたが、綺麗にくるっと決まり、心の中で拍手を送っていました! SS2も4も決まったので田部井選手はサイドターンが得意なのだと知りました。もし最終戦もギャラリーでそんな場所があったら、ぜひ注目してみてください。

クルマの奥がギャラリーポイントです

 コ・ドライバーとして悔しい部分も、昨年学んだことから取り組めたことも、いろいろありましたが、この久万高原で私の2025年の全日本ラリー参戦は先に終わりを迎えました(残すは北海道のXCRだけ)。

 モリゾウチャレンジカップに2年連続で参加でき、CUSCO Racingの長瀬社長をはじめ、メカニックさんにも本当に感謝です。CUSCO Racingとしてはこの久万高原ラリーでジール選手が初優勝を飾りました。

ジール選手とバイデン選手のMCCカード

 今年はCUSCO Racingから同じクラスに4台参戦していることから、加勢さんや藤田さんという先輩コ・ドライバーの方々からも教えていただき、メカニックさんの人数も増えて、いろんな方とお話しできました。ラリーではこういったコミュニケーションもとても大事になってくるので、その大切さや気づきもたくさんあり、本当に参戦できてよかったです。

サービス中

乗る前に、滑るからとメカさんが足裏を拭いてくれます

メカニックさんのミーティング

空いている時間にはアドバイスをくれる、チーフメカ貴志さん

チームの絆と最終戦へのエール
モノマネ好きな田部井選手を応援しよう!

 私は参戦できませんが、最終戦も田部井選手は参戦します。今回、BRZからヤリスへの乗り換えや、タイヤの違いへの慣れで結果を出すことはできませんでしたが、コツコツ積み上げる慎重なタイプの選手なので、今回掴んだことを次戦では出してくれると思います!

 群馬の同期や先輩にも可愛いがられているので、少し期待を背負いすぎて空回りしてしまう部分もあるのですが、みんなに愛されているモノマネ好きな田部井選手。

 最終戦に行かれる方は「バズ・ライトイヤー、調子はどう?」と声をかければ、めちゃくちゃ似ているモノマネをいつでもしてくれると思います。しかも、モノマネしたあとの方が調子いいタイプなので、たくさん声をかけて応援してあげてください。

ファンや仲間の多い、田部井選手

新井選手・立久井選手に可愛いがられている田部井選手

 私も最終戦はモリゾウチャレンジカップのみんなや、田部井選手の走りを応援します! すでに来年のモリゾウチャレンジカップの応募も始まりましたが、これだけプロモーションしてもらえたり、著名なコーチ陣に教えてもらえたりという環境があるのは本当にありがたいこと。

 ドライバーはもちろんですが、私自身も昨年、今年と他チームのコ・ドライバーのみなさんとも仲良くなれて、本当に学ばせてもらうことができました。ラリーは“これ”という正解のラインがある程度はあっても、その先のほとんどは個人のやり方があるのが面白いです。

 私自身もどんなコ・ドライバーになりたいか、なるのか、そのためには考えて取り組み、また成長していきたいと思います。

 今シーズン応援してくださったみなさん、本当にありがとうございました(まだもうちょっとだけ続きます)。

ありがとうございました

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