イノベーションを担う日本に今後5年間で1470億円の大規模投資も
2年後には「44TB HDD」投入へ ウエスタンデジタルCEO、AI時代こそHDDが必要な理由を語る
2025年10月08日 07時00分更新
2025年2月に、NANDフラッシュメモリ事業をSandiskとして分離上場させ、「データセンター向けHDD」に注力するウエスタンデジタル(Western Digital)。
同社は、2025年10月1日、事業戦略説明会を開催。CEOのアーヴィン・タン(Irving Tan)氏が初来日し、AI時代におけるHDDの位置付けや日本市場への投資などを語った。
タン氏は、「データが新しい原油になる時代。AIの力も相まって、2030年にはデータ量が現在の3倍まで増えると予測されている。その中で、HDDがストレージの“中心的な役割”を果たしていく」と強調した。
AI時代にHDDが不可欠な3つの理由
1970年に創業したウエスタンデジタル。当初は、消費者向け製品のHDDに強みを持っていたが、「長い時間をかけ、データセンター事業の強化に努めてきた」とタン氏。直近の四半期では、ハイパースケーラー向けビジネスが売上の「9割」を占めるまでに成長しているという。
その背景には、現代社会において、データが国家や企業の競争力を左右するほどの価値を持つようになったことがある。さらに、AIの登場によってデータの量も急増しており、2030年には現在の3倍にまで達するという試算もあるほどだ。それに伴い、そのデータを保存するストレージの需要も高まっている。
こうした潮流の中で、タン氏は、「HDDはまだまだストレージの中心的な役割を担う」と主張する。実際、IDCの調査によると、現在はデータセンターストレージの8割がHDDに依存しており、5年後も同じ割合で推移する見通しだ。あわせて、タン氏は、HDDが選ばれ続ける理由を3つ挙げた。
ひとつ目は、HDDのもたらす優れた「堅牢性と信頼性」だ。そして2つ目は、特にハイパースケーラーにおける「TCO(総所有コスト)」の最適化にHDDが欠かせないことだ。
ハイパースケーラーでは、NANDフラッシュベースのSSD、HDD、テープメディアの3階層でストレージメディアを使い分けている。すべてのデータをSSDに保存すると高くつくため、ここではデータの状態に応じて階層間で動的にデータを動かしながら、TCOを最適化している。その結果、8割のデータがHDDに保存されているのが現状だ。
そして、最後の理由は、現在HDDで進む「大容量化」だ。「容量の改善が続いていくと、TCO自体が有利になるだけではなく、省電力化にもつながる」とタン氏。
同社のHDDの容量は、3年前では1台あたり最大18TBだったが、現在では最大32TBに拡大された。さらに、2026年半ばには36TB、2027年後半には44TBのHDDを投入予定だ。
なお、これまでは、HDDにデータを高密度に書き込む技術としてePMR(エネルギーアシスト垂直磁気記録)を採用してきたが、2027年に出荷する44TB HDDからは、「HAMR(熱アシスト記録)」に移行することも明らかにした。HAMRは、記録時にレーザー光で瞬間的にディスク媒体を加熱する方式であり、「1台あたり100TBの容量を目指せる技術」(タン氏)だという。
「一方で、ハイパースケーラーから求められているのは、容量だけではなく(納品台数の)スケール。我々は、容量を向上させつつ、信頼性と品質を保ちながら、四半期に100万台を出荷できる体制を築いていく」(タン氏)











