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ASCII Power Review 第296回

AFも液晶も手ブレ補正も最強化されていました

最強化した1憶画素の超絶ミラーレスカメラ=ハッセルブラッド「X2D II 100C」実写レビュー

2025年10月06日 00時01分更新

文● 写真 岡田清孝 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 ハッセルブラッドの中判ミラーレス最新モデル「X2DⅡ100C」が発売された。撮像素子は43.8×32.9mmの1億画素と2022年の前モデル「X2D100C」と同じだが、ボディー周りに改良が加えられたとのこと。どのように進化したのかが気になるところ。

「X2DII100C」実写レビュー

ボディーのみの量販店価格は115万5000円とさすがの金額だが、前モデルは126万5000円だったので、11万円も値下がりしている。

 また同時に交換レンズ群では最高峰に位置する「XCD E」シリーズの標準ズーム「XCD2.8-4/35-100E」も登場した。

「X2DII100C」実写レビュー

「XCD2.8-4/35-100E」を「X2DⅡ100C」に装着した状態。レンズ単体の量販店価格は71万5000円。

 今回はこの組み合わせ(金額にすると187万円!)の試用機を借用することができた。せっかくの役得なので存分に楽しませてもらった。

グリップ形状は細身に変更
オレンジのシャッターは健在
 

 まずは外観から。ボディーデザインは前モデルから踏襲されているが、上部のロゴや刻印が黒塗の文字に変更されているのが渋くてカッコイイ!

「X2DII100C」実写レビュー

上部ロゴや上面刻印は印字ではなく、削り込まれているのがうれしい。

 スペック上のサイズでは奥行が0.5mm増し重量は55g減と微妙な差はあるが、ほほ同等といっていいだろう。相変わらず中判ミラーレスとは思えないほどコンパクトで軽い。

「X2DII100C」実写レビュー

ボディーサイズは148.5×106×75mm、バッテリー込みの重量は840g。前モデルは148.5×106×75mm、重量はメディア・バッテリー込で895gだ。

 手にしてみて最初に違いを感じたのがグリップの形状で、やや細身になっているようだ。思い返せば前々代の「X1DⅡ50C」から前モデル「X2D 100C」にモデルチェンジした際に、わずかにグリップ厚が増したもののホールド感に不満はなかったはず。ただ今回再改良されたグリップを握ってみると、やはり細身ほうが構えやすく思える。

「X2DII100C」実写レビュー

見た目ではわかりにくいがグリップの形状は改良され、後部の指掛かりと合わせしっかり構えられる。

 上面の液晶パネルやボタン配置は変わらず、シャッターボタンの鮮やかなオレンジ色が印象的だ。液晶パネルは電源オフ時に電源ボタンを一瞬押すとバッテリー残量が表示されるのは何気に便利である。

「X2DII100C」実写レビュー

初代から変わらないオレンジ色のシャッターボタン。もはや伝統と言ってもいいかも。

「X2DII100C」実写レビュー

撮影時の液晶パネル表示と、電源オフ時のバッテリー残量表示の様子。

 地味な変更点として、前モデルでは後方のコマンドダイヤルのみプッシュ式だったが、今回は前面コマンドダイヤルもプッシュ式になり、割り当てた機能を呼び出せるようになった。

「X2DII100C」実写レビュー

プッシュ式コマンドダイヤルに割り当てる機能は、もちろんカスタマイズが可能だ。

ジョイスティックを新たに採用
背面液晶は下向きが可能に
 

 主にタッチパネルでおこなう操作系も変わりはないが、背面に新設されたジョイステックでも操作が可能である。特にEVFを覗きながら設定を変更したいときに便利だった。

「X2DII100C」実写レビュー

液晶横に並ぶボタンの一番下を押すとメニュー画面が表示され、液晶のタッチやジョイステックで項目の変更や設定ができる。

 ジョイステックは撮影時に測距点の移動もできるが、上下左右の4方向のみで斜め移動には非対応。素早く測距点を移動したいときは従来機と同じく、背面液晶をなぞるタッチパネルAFのほうがスムーズな場合もある。この辺りはシーンに合わせて使い分けるといいだろう。

「X2DII100C」実写レビュー

背面にはジョイステックにくわえコマンドボタンも新設された。

 液晶ディスプレーも上方90度にくわえ下方42.7度に可動するチルト式に変更された。というか前モデルは上方向のみの可動という謎仕様だったので、当然の改良と言えるだろう。

「X2DII100C」実写レビュー

背面液晶はようやく下方に動くようになった。

 EVFは変わらず576万ドット撮影倍率1倍(35mm換算では0.8倍)、電子式視度補正も引き続き搭載する。

「X2DII100C」実写レビュー

EVFのスペックは変わらず。アイセンサーの反応は少し早くなった気もするが、それでもワンテンポ間がある。

 メディアは1TBの内蔵SSDとCFexpressTypeBを採用。また側面端子にはリモートケーブル(別売の「レリーズコードX」1万290円)が利用できる端子が追加されている。

「X2DII100C」実写レビュー

左側面の上部はUSB3.1 Gen2 Type-Cとリモートケーブル端子。下部はCFexpressTypeBのメディアスロット。

 バッテリーも共通でレバー&プッシュ着脱式を採用。スタミナもRAW+JPEGで333カット666枚撮影することができたので、ほぼ同等といえるだろう。

「X2DII100C」実写レビュー

バッテリーのスタミナは中判ミラーレスとしては満足できる。バッテリー単体価格は1万4660円とハッセルにしては手に入れやすい価格。

最高描画の標準ズーム登場
「XCD2.8-4/35-100E」
 

 同時発表となった「XCD2.8-4/35-100E」だが、35mm換算28-76mmの標準ズームで、広角側開放F値はF2.8と大口径なのが特徴だ。

 全長138mm最大径90 mmmで重量894g、フィルター径は86mmと大柄だがスペックからすると順当なサイズだろう。

 とはいえコンパクトボディーの「X2DⅡ100C」には、同じくコンパクトなレンズのほうがよく似合うと思うのが本音のところ。この辺りは悩ましい。

 価格は70万円超えと高価だが、定番の単焦点レンズ「XCD V」シリーズはいずれも50万円オーバーなので、さまざまな画角で撮れるズームでこの価格ならある意味リーズナブルかもしれない。

 内蔵のレンズシャッターも最高1/4000秒と高速。ただサイズのせいかシャッター動作音が大きめで、フォーカルプレーンのスローシャッターのような感覚がする。レンズシャッター特有の静寂で上品な撮り心地とは異なるのは好みが別れるかもしれない。

「X2DII100C」実写レビュー

「XCD2.8-4/35-100E」には3つのリングがあり、前方がフォーカスで中央がズーム。手前は各種設定を割り当てられるコントロールリング。

認識AFで車両と動物が可能に
手ブレ補正強化で安心の中判カメラだ
 

 画質面では階調や高感度ノイズ処理などの調整機能は引き続き搭載されず、好みの画質に仕上げるにはRAWから現像というスタイルは変わらない。

 初期設定ではJPEG(もしくはHEIF)画像でHDRがオンの状態になっている。ところがHDRは露出オートモードのみに適応されマニュアルモードでは使用不可という不可解な仕様だった。撮影モードによって階調が異なると整合性がとれないので、今回の作例はHDRオフのJPEGで掲載することにした。

「X2DII100C」実写レビュー

HDRをオンすると「スマート測光」に固定されると設定画面に書いてあるが、この測光がどのような機能なのかは不明だ。

「X2DII100C」実写レビュー

一応HDRのオンオフも比較してみた。HDRオンのほうが露出は1EV明るく写っていて、このあたりが「スマート測光」の効果なのだろうか。こちらはHDRオフ。

「X2DII100C」実写レビュー

HDRオン

 実際に撮影した写真をみると1億画素の撮像素子と最高峰のレンズが写しだす描写は、細部の精細な解像感はもちろん、階調の豊富さやしっとりとした色乗り発色、滑らかなボケなど、JPEG撮ってだしでも魅力的ある描写だ。

「X2DII100C」実写レビュー

さすが1億画素と思わせるキレのある写り。拡大したときに細部の解像感にも注目。焦点距離35mm(換算28mm)・絞りF8・シャッタースピード1/200秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

「X2DII100C」実写レビュー

モノトーンな景色だが、そのぶん微妙な階調再現がよくわかる。焦点距離100mm(換算80mm)・絞りF11・シャッタースピード1/100秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

「X2DII100C」実写レビュー

柔らかいボケ感でピント部のシャープさを引き立たせてくれる。焦点距離100mm(換算80mm)・絞りF4・シャッタースピード1/90秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

「X2DII100C」実写レビュー

絞り開放で撮影すると周辺光量低下があるが、それがかえって効果的だ。焦点距離35mm(換算28mm)・絞りF2.8・シャッタースピード1/125秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

「X2DII100C」実写レビュー

35mm換算47mm相当で撮影。標準レンズの画角は中判カメラでも扱いやすい。焦点距離60mm(換算48mm)・絞りF3.5・シャッタースピード1/400秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

「X2DII100C」実写レビュー

望遠側での撮影では、ついボケ感が際立つ写真が撮りたくなる。焦点距離100mm(換算80mm)・絞りF4・シャッタースピード1/125秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

「X2DII100C」実写レビュー

光源が写り込む逆光でもハレーションを起こすことなくシャープに写った。焦点距離35mm(換算28mm)・絞りF16・シャッタースピード1/4秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

「X2DII100C」実写レビュー

木漏れ日に照らされた葉の緑。艶めかしい発色がいい感じである。焦点距離100mm(換算80mm)・絞りF5.6・シャッタースピード1/60秒・ISO200・ホワイトバランスオート。

「X2DII100C」実写レビュー

何気に撮影した一枚だが、明暗の階調が印象に残った。焦点距離100mm(換算80mm)・絞りF4・シャッタースピード1/200秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

「X2DII100C」実写レビュー

意外とコントラストの高いシーンだが、それでも階調豊かに再現されている。焦点距離60mm(換算48mm)・絞りF3.5・シャッタースピード1/500秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

「X2DII100C」実写レビュー

これも明暗差のある状況だが、ハイライトに粘りがあるので白とびは気にならない。焦点距離100mm(換算80mm)・絞りF4・シャッタースピード1/80秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

「X2DII100C」実写レビュー

見慣れた街中のスナップでも独特の空気感があるのは、中判サイズだからか。焦点距離60mm(換算48mm)・絞りF3.5・シャッタースピード1/250秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

「X2DII100C」実写レビュー

望遠側のほぼ最短撮影(50cmくらい)で撮影。割とアップで撮れる。焦点距離100mm(換算80mm)・絞りF4・シャッタースピード1/200秒・ISO400・ホワイトバランスオート。

 感度はISO50からISO25600までで拡張感度は設定されていない。高感度画質はISO12800くらいから細部の画質劣化が目立つが、もとの解像度が高いせいか、最高のISO25600でも大きく破綻することはない。

「X2DII100C」実写レビュー

感度別で撮影した画像の一部を等倍に拡大して比較、左上からISO800・1600・3200・6400・12800・25600。

「X2DII100C」実写レビュー

ISO6400で撮影。焦点距離60mm(換算48mm)・絞りF4・シャッタースピード1/30秒・ホワイトバランスオート。

「X2DII100C」実写レビュー

ISO12800で撮影。焦点距離60mm(換算48mm)・絞りF3.5・シャッタースピード1/80秒・ホワイトバランスオート。

「X2DII100C」実写レビュー

ISO25600で撮影。焦点距離35mm(換算28mm)・絞りF5.6・シャッタースピード1/25秒・ホワイトバランスオート。

 また最低感度がISO50なのも嬉しいポイント。拡張感度ではないので、コントラストが高くなることもなく、最高1/4000秒(レンズによっては1/2000秒)とシャッタースピードの上限が低いレンズシャッターでも明るい屋外で絞りを開いて撮影することができる。

 AFも暗所では迷うこともあったが、体感的には少し素早くなったような気がする。また前モデルではシングル(AF-S)のみだったAFもついにコンティニュアンス(AF-C)が可能になった。

 カメラと被写体が完全に止まっているのならAF-Sのほうが確実にピントを合わせられるが、スナップなど手持ちで歩きながらだと撮影時の微妙なズレでピントが甘くなることがある。そんな時は常にピントを合わせ続けてくれるAF-Cのほうが有効だ。状況によってユーザーが選べるようになったのは嬉しい限りだ。

 AFでは、「人物」にくわえ「猫/犬」と「車両」の検出機能も追加された。試しに電車を連写(最高秒3コマ)で撮影してみると、きちんと追随してピントを合わせていた。

「X2DII100C」実写レビュー

AF-Cで撮影するにはレンズが対応している必要がある。さらにレンズシャッターのみで、電子シャッターでは使用不可。

「X2DII100C」実写レビュー

被写体検出の「車両」で電車も認識してくれが、「猫/犬」で鳥は認識しなかった。

「X2DII100C」実写レビュー

AF-C連写で撮影した写真。いずれも先頭部にピントを合わせ続けていた。

 ボディー内手ブレ補正も強化され、広角側の遠景なら1秒でも高確率でブレを防いでくれた。中判デジカメとは思えない手ブレ補正効果で前モデルの7段から10段に向上したというアピールに偽りはなさそうだ。

「X2DII100C」実写レビュー

シャッタースピード1秒で撮影。焦点距離は70mm(換算56mm)と標準粋だが、それでもブレはほとんど感じない。絞りF5.6・ISO320・ホワイトバランスオート。

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