「ストーリー性や世界観の伝達力」「ブランドらしさの表現」が課題
生成AIのデザインはどれも同じに見える? 便利だけど「競合他社と似てしまう」と考える人も多い
2025年10月06日 11時30分更新

TARO WORKSは、マーケティング担当者やブランド担当者、広告・販促部門責任者を対象に「生成AI普及後のデザイン」に関する意識調査を実施した。調査期間は2025年9月11日〜12日、対象者数は1004人。
この調査によれば、まず「生成AIや既成のビジュアル素材を採用したことがあるか」という設問に対して、85.1%(「よくある」32.3% + 「ときどきある」52.8%)が利用経験を持つと答えており、業務実務においてこれらの技術がすでに定着しつつあることがうかがえる。
主な利点としては、「制作コストを抑えられた(51.6%)」「制作時間を短縮できる(44.6%)」「社内外のやり取りを減らせる(37.4%)」といった効率化・省力化の声が目立った。

一方で、こうした手法の導入には表現面での懸念も根強い。「生成AIや既成のビジュアル素材を使用したデザインに不足していると感じる要素」については、「ストーリー性や世界観の伝達力(39.4%)」「感性や情緒に訴える力(34.6%)」「ブランドらしさの表現(33.6%)」という回答が上位に挙がっており、生成AIや既存素材では十分に担えない“深み”や“個性”の領域に対する不足感を覚えている人が多数派のようだ。

さらに、「生成AIや既成素材を使用することでデザインが没個性化し、競合との差別化が難しくなるか」という問いには、合計79.0%(「非常にそう思う」26.0% + 「ややそう思う」53.0%)が肯定的に回答しており、差別化リスクへの警戒感が強いことが示されている。
こうした背景を踏まえ、調査では「人の手による表現」の価値も問われた。「世界観を伝えられる(36.8%)」「感性や情緒に訴えられる(33.1%)」「ブランドらしさを表現できる(29.3%)」といった回答が多く挙げられ、人間らしい創造性・表現力に対する期待も根強い。

また、オーダーメードでビジュアルを発注する際の課題としても、「言葉では伝えきれないニュアンスがあること(41.6%)」「ラフなど確認のやり取りに時間がかかること(35.0%)」「表現したいイメージを正確に伝えること(32.3%)」といった点が指摘され、コミュニケーションや要求仕様のあいまいさが障壁となっているようだ。

こうした現状を受け、TARO WORKSは、プロのアート作家が制作したアート作品をヴィジュアル素材として提供するサービス「AinD(アインド)」を展開している。AinDでは、既に完成したアート作品の画像を活用可能とし、素材発注時の手間ややり取りを削減するとともに、独自の表現性を担保できる点を強みとして打ち出している。
この調査およびAinDの導入意図を総括すれば、生成AIと既成素材の普及が進む時代において、企業やブランドにとっては「効率」と「表現性・差別化」の両立がますます重要なテーマとなっている。今後、どのようなクリエイティブ設計やガバナンス体制を持つかが、ブランド価値構築の鍵を握る可能性がある。
また、OpenAIが9月30日、テキストから高品質な動画と同期した音声を生成する最新の動画生成モデル「Sora 2」を発表し、ネット上を中心に話題となっている。日進月歩のAI技術ならば、現状の課題もすぐに解決されてしまうかもしれない。








