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「GMO AI・ロボティクス大会議」GMO熊谷代表、石破総理、平大臣らセッションレポート

AI・ロボットは“日本の救世主”となるか ドラえもんが活躍する国に必要なもの

2025年10月06日 11時30分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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GAFAMはAIに4兆円投資 平大臣が明かす「AI・ロボット大国日本」復活への3つの戦略

 次に登壇したのは、平将明デジタル大臣だ。近く内閣改造を控えていることから、今回は「一議員の立場」として、より踏み込んだ未来への提言を行った。

 平氏は、日本のAI政策が「ヨーロッパのような厳しい規制はしない」という方針を貫いてきた結果、GAFAMをはじめとする海外のビッグテックから4兆円を超える投資を呼び込んでいる現状に触れた。この流れをさらに加速させ、AIがロボットという身体を得る新たなフェーズで、日本が再び主導権を握るべきだと説く。

 かつて世界をリードした日本のロボット産業が、今やその存在感を失いつつあるという厳しい現実認識のもとで、平氏は、「AI・ロボット大国日本」を復活させるための3つの戦略を語った。

 ひとつ目は、国内外の開発者が集い、実践的なデータ収集や安全性のテストを行える「世界的な中核拠点」の整備。2つ目は、優れた人材や技術を発掘するための「世界的なロボットコンテスト」の継続的な開催。そして3つ目は、政府自らが率先して「AIロボットを積極的に活用」し、調達を通じて市場を創出していくことだ。

「AIは中国とアメリカが2強の状態ではありますが、例えばインドとの協業なども、進めていきたいと思っております」(平氏)。

 欧米がロボットに対して「ターミネーター」のような恐怖のイメージを抱きがちなのとは対照的に、日本には「ドラえもんの世界観」が根付いている。この文化的背景を強みに、兵器ではなく、料理のような繊細な作業や災害救助といった平和的な分野で世界をリードできると平氏は語った。

「AI・ロボット大国日本を復活させたい」と平大臣

戦場は「ロボット対ロボット」へ 元陸将がウクライナの最前線から見通す未来と警鐘

 続いて、前陸上自衛隊教育訓練研究本部長であり元陸将の廣惠次郎氏が、ウクライナの戦場を訪れた経験を基に、安全保障の視点からAIとロボティクスの現在地と未来を解説した。

 廣惠氏が紹介するのが、戦場で使われる「システムの成熟度」と「無人化の進展度」を4つの世代に分類する独自のフレームワークだ。

 戦場におけるシステムの成熟度は、各システムが独立している「第1世代」、相互に連携する「第2世代」、処理が自動化される「第3世代」、そしてAIが判断を担う「第4世代」に分けられる。

 同時に、無人化の進展度も4つの世代で整理する。人間が戦う「第1世代」、無人機が人間を支援する「第2世代」、無人機が主役となる「第3世代」、そしてロボット同士が戦う「第4世代」だ。

現在の戦場におけるAIとロボットの関係は、第2世代から第3世代への過渡期にある

 世界のほとんどの軍隊は、システムの成熟度、無人化の進展度の両面で「第2世代」に位置するという。しかし、その均衡は今、まさに崩れようとしている。廣惠氏は、ウクライナの最前線で起きている衝撃的な変化を明らかにした。

「現在のウクライナ最前線では、第2世代から第3世代へと進展しつつあり、火砲による戦死者よりも無人機による戦死者が上回っています」(廣惠氏)

 現在、戦場の主役は、生身の人間から無人の機械へと急速に移行している。そして、その先に見えるのは、AIを搭載したロボット同士が戦闘を繰り広げる「第4世代」の戦争だ。このような未来が現実のものとなろうとしている今、その技術をどう制御し、どう活用すべきかが人類に問われている。

 廣惠氏は、軍事専門家としてのリアルな未来予測を示した上で、この技術が持つもう一つの側面、すなわち平和利用の重要性を訴えた。「最後に申し上げたいのは、ロボット技術は戦闘利用にとどまるものではないということです。むしろ、平和利用のためにこそ皆で伸ばしていくべきものです」と締めくくった。

「今後、(日本も)戦場のシステムはAIを使った第4世代を目指す」と廣惠氏

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