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「GMO AI・ロボティクス大会議」GMO熊谷代表、石破総理、平大臣らセッションレポート

AI・ロボットは“日本の救世主”となるか ドラえもんが活躍する国に必要なもの

2025年10月06日 11時30分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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 2025年9月25日、GMOインターネットグループ主催の「GMO AI・ロボティクス大会議・表彰式2025」が開催された。2026年のヒューマノイド元年を目の前に、AIとロボティクス領域の橋渡しをすべく、産業界、政界、そして安全保障の専門家が一堂に会し、日本の進むべき道筋が熱く語られた。

 本記事では、GMOインターネットグループの熊谷代表のオープニングメッセージに加え、産官学の「官」である、石破茂内閣総理大臣、平将明デジタル大臣、前陸上自衛隊 教育訓練研究本部長 元陸将の廣惠次郎氏が登場したセッションをレポートする。

9月25日、セルリアンタワー東急ホテルにて「GMO AI・ロボティクス大会議・表彰式2025」が開催された

秒進分歩の進化に「恐怖した」 GMO熊谷代表が語るヒューマノイドの現実と日本の課題

 イベントは、主催者であるGMOインターネットグループの代表、熊谷正寿氏によるオープニングメッセージから始まった。熊谷氏は、生成AIを実装したロボティクスを「人類史上最大の技術革命」と断言し、その凄まじい進化のスピードについて語る。

 冒頭、中国Unitree Roboticsのヒューマノイドロボット「G1」が、わずか1ヶ月で歩行から走行までを習得し、数ヶ月後には戦闘シミュレーションまでこなす映像が流れ、会場に衝撃を与えた。この進化速度に対し、熊谷氏は「ある種の恐怖を覚えた」と率直な感想を漏らす。

 2022年11月にChatGPTがリリースされた日を境に、IT業界は日進月歩ならず、秒進分歩の勢いで成長している。そんな中、新たな転機となるのがロボティクスだ。「AIはパソコンやスマホの画面の中だけですが、ロボットに搭載されて初めてフィジカルに世の中を変えていきます。間違いなく来年は、ヒューマノイド元年と言われるようになると思います」(熊谷氏)

 GMOインターネットグループでも、ヒューマノイドロボットのG1に、熊谷氏の思考やフィロソフィーに基づき回答する「AI 熊谷正寿」を搭載した、移動可能なAI・CEO「ヒューマノイド 熊谷正寿」を開発している。

AI・ロボティクスは「人類史上最大の技術革命」だと語る熊谷代表

 一方で、世界のヒューマノイド開発競争に目を向ければ、アメリカや中国の企業名が並ぶ中に、日本の存在感は驚くほど小さい。「問題は、このヒューマノイドに対して、資金や人材、そして国の制度が、アメリカや中国などと全く違うということ」だと熊谷氏。

 例えば、中国は政府主導でリスクを取りながらも産業育成を進め、国内には110社ものヒューマノイド関連企業が存在するという。さらに、中国が開催したヒューマノイドのスポーツ大会では、500体以上のロボットが参加し、そのうち大半が中国製。さらに優勝したのは26種目のうち20種目が中国メーカーであった。

「かつて日本はものづくり技術で世界をリードしました。少子高齢化という課題すら強みに入れる千載一遇のチャンスです。失われた30年の停滞を打ち破る鍵は、このAI・ロボティクスです。全日本で協力し、テクノロジーで新しい時代を切り開くべきだと感じています」(熊谷氏)

最近ニュースで見かけるヒューマノイドは海外製ばかりと嘆く熊谷代表

 一方で、技術の進化は、光だけではなく影も落とす。熊谷氏は、ドローンが平和利用よりも兵器としてのニュースで多く語られる現状に触れ、ヒューマノイドが軍事転用されれば、映画「ターミネーター」のような世界が現実になりかねないという懸念を示した。

 だからこそ今、「日本は産官学が一致団結し、AIロボティクスの平和利用で世界を主導すべき」と力強く訴えた。そして、GMOインターネットグループ自身も、培ってきたサイバーセキュリティ技術を活かして、AIベンチャーとロボットベンチャーを繋ぐ仲人として、安全な社会実装に貢献していくと付け加えた。

「鉄腕アトムやドラえもんの国」だからこそ 石破総理が語るAIロボット国家戦略

 続いてビデオメッセージで登場したのは、石破茂内閣総理大臣だ。国のトップとして、AIとロボティクスが持つ潜在能力に大きな期待を寄せており、特に、日本が直面する喫緊の課題である「人口減少」と「少子高齢化社会」において、これらの技術が解決の糸口になると語った。具体的には、産業現場の効率化から、医療・介護現場での人的サポート、さらには災害対応まで、その応用範囲は広く、速やかな社会実装が不可欠であると強調した。

 政府としても、この流れを傍観しているわけではない。石破氏は、先の通常国会で成立した「AI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)」、そして2025年9月1日に発足したばかりの「人工知能戦略本部」に言及。総理自らが本部長を務めるこの組織を中心に、イノベーションの促進とリスクへの対応を両立させながら、国家戦略を強力に推進していく構えだ。

「イノベーションの促進とリスク対応、両立させながら、世界で最もAIを開発、活用しやすい国を目指してまいります」(石破氏)

 今年度中には、AI・ロボティクスの社会実装と競争力強化に向けた政府全体の戦略を策定することも明言。さらに、こうした政策的な後押しに加え、日本の文化的な強みにも触れた。「我が国は、『鉄腕アトム』や『ドラえもん』に象徴されるように、人とロボットが共存する未来を思ってまいりました。長年にわたり、このロボティクス技術の蓄積の実績もあります」と石破氏。

 この文化的な土壌こそが、技術を社会に受け入れ、独自の発展を遂げる上での大きなアドバンテージになり得るという。技術の蓄積と、国民が抱くロボットへの親和性。この双方を武器に、日本が再び世界の先頭に立つ可能性は大いにあると、力強い期待を示した。

「日本人は古くから人とロボットが共存する未来を思ってきた」と石破総理

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