ドイツ・ベルリンで開幕、世界注目のイベント「IFA 2025」 第7回
紙のようなディスプレー搭載スマホ「NXTPAPER 60 Ultra」をTCLが発表、ペン入力も対応
2025年09月29日 12時00分更新
TCLはベルリンで開催されたIFA 2025で新型スマートフォン「NXTPAPER 60 Ultra」を発表した。電子ペーパーのような目にやさしい、7.2型のNXTPAPERディスプレーを搭載し、ペン入力にも対応している。
カメラ性能も高いミドルハイレンジモデル
毎年9月に開催されるIFAだが、近年はスマートフォンの新製品発表の数は減っている。その中でもTCLは、毎年コンスタントにモバイル製品の発表をしており、ここ数年は「紙のように目にやさしいディスプレー」として、液晶をベースに開発した「NXTPAPER」(ネクストペーパー)ディスプレーを搭載した製品を発表している。
今年のIFA 2025で発表したスマートフォン「NXTPAPER 60 Ultra」は、最新の「NXTPAPER 4.0」ディスプレーを採用、見やすさと長時間視聴時の安心感を高めたモデルだ。
NXTPAPER 60 Ultraは7.2型(2340×1080ドット)、リフレッシュレートは120Hzとなる。フロントカメラは3200万画素だ。正面からディスプレーを見ると、確かに一般的な液晶や有機ELと比較して、ディスプレー内からの光(明るさ)が控えめであり、また反射も少なく、それでいながらカラー表現はしっかりしている。
本体サイズは81.2×174.5×7.6mm、重量は227g。バッテリーは5200mAhを内蔵している。右側面には上からボリューム、電源、そしてディスプレー表示を切り替える「NXTPAPER KEY」も備えている。
カメラは5000万画素広角、800万画素超広角、そしてペリスコープ式の5000万画素3倍望遠を搭載している。チップセットはMediaTekのDimensity 7400を採用しており、性能的にはミドルハイクラスの製品となる。
カメラにはAI機能も多数搭載されており、暗いシーンでもノイズを自動除去するAIナイトモード、映画風やアーティスト風への加工、さらに不要オブジェクトの自動消去などが可能だ。また望遠カメラはロスレス6倍ズームにも対応している。
紙のような自然な光の表現のNXTPAPER 4.0
NXTPAPER 4.0ディスプレーは、すでにTCLのタブレットにも搭載されており、日本でも販売中の「NXTPAPER 11 Plus」でも採用されている(電子ペーパー風からカラーまで、自在なディスプレー搭載TCL製タブレット「NXTPAPER 11 Plus」レビュー)。スマートフォンへの搭載はこのモデルが初めてだ。
NXTPAPERはブルーライトをカットし、反射防止とアンチグレア保護を施すことにより、紙のように目にやさしい表現を実現する。一般的なディスプレー素材の液晶や有機ELとは異なり、TCLが開発板CPL技術を採用することで自然光のような光源をつくり、明るくクリアな表示を可能にしているとのこと。カラー表示だけではなくモノクロ表示でも輪郭や文字のエッジをはっきりさせられる。
画面のモードは4つに切り替え可能だ。通常のカラーモード表示のNormal Mode、色彩を抑えオフホワイトベースにパステル調の表示とするColor Paper Mode、白黒のモノクロ表示とするInk Paper Mode、さらにInk Paper Modeに読書や作業に集中できるデジタルデトックス機能も含めたMax Ink Modeとなる。
このうちColor Paper Modeはカラー電子ペーパー、Ink Paper ModeとMax Ink Modeは一般的なモノクロ電子ペーパーのような表示となる。
モードの切り替えは、側面のNXTPAPER KEYをスライドさせる。デフォルトではスライド後に画面上に3つのモードが表示され、好みのモードをタップすることで切り替えられる。下の写真はInk Paper Modeにしたところ。確かに電子ペーパー風の表示となる。言われなければ電子ペーパーだと思う人も多いだろう。しかし、画面をスクロールしたりページをめくっても、電子ペーパーのように残像が残ることは一切ない。
電子ペーパーはディスプレーの文字やグラフィックの表示をするために、片側が黒、反対側が白のカプセル状の素子をドットごとに配置し、それを180度、白か黒に反転させて表示を行う。そのため画面を切り替えた際に残像が残りやすいし、動画など高速に動くものの表示にも向いていない。一方、NXTPAPERは液晶そのものであるため、電子ペーパーのような表示の乱れは起きないのだ。
ちょっと面白いと感じたのは、Ink Paper Modeにしていても、写真の表示だけはカラー表示となる点だ。これは電子ペーパーにはできない芸当である。本来ならモノクロ表示のモードなので、写真もモノクロで表示するべきなのかもしれないが、ユーザーがモノクロのモードに求めているのは電子ブックのテキストなどを長時間見ていても目が疲れないこと。一方、カメラで撮った美しい写真は、モノクロのモードであってもカラー画面モードに切り替えずそのままフルカラーで見たいだろう。NEXTPAPERは液晶であるからこそ、このようなことができるのだ。
こちらはColor Paper Modeモードだ。カラー電子ペーパー風の表示に近いが、カラー電子ペーパーよりも解像度は高く、また色の表現もしっかりいている。淡い色合いのカラーであり、カラーの電子コミックなどを読むのにもちょどいいだろう。また、地図などフルカラー表示は必要ないが、モノクロでは建物や店の見栄えがわかりにくい、といったアプリでも使えるモードだ。
これらのモードに加え、電子書籍だけを読みたい、あるいはバッテリー残量が低い時に最低限のアプリしか使用しない、という場合に使えるMax Ink Modeと、表示画面を自在に切り替えて使うことができるのがNXTPAPER 60 Ultraの大きな魅力なのである。
充電不要のペンでメモ書きもラクラク
NXTPAPER 60 Ultraはペン入力にも対応した。過去の一部のモデルでもペン入力が可能だったが、NXTPAPER 60 UltraはT-Pen Magicスタイラスに対応している。これは充電不要で使えるスタイラスで、タブレットのNXTPAPER 11 Plusに付属するUSB充電方式のT-Penとは異なるものだ。
T-Pen Magicスタイラスは画面のタッチ操作、メモアプリなどに手書きで入力ができる。プリインストールされているTCLのノートアプリを使えば、ラフに書いた図や文字をなめらかにするAI補正なども利用できる。
蛇足ながら、NXTPAPER 60 Ultraが展示されていたTCLブースでは「Galaxy Noteが……」と、サムスンのスタイラス入力対応スマートフォンの話をする来客が多かった。NXTPAPER 60 Ultraはサムスンのペン対応スマートフォン「Galaxy S25 Ultra」よりも画面サイズが0.3型大きいことから、メモ取りデバイスとして使いたいと感じる人が多かったようだ。
T-Pen Magicスタイラスは、残念ながら本体には収納できない。その代わり、手帳型カバーの内側にペンホルダーを付けたものが提供され、本体と一緒にペンを持ち運ぶことが可能になる。
さらにノートメーカーと協業したデザインの手帳カバーも販売される。まるで本物のノートのような外観となるわけだ。
NXTPAPER 60 Ultraのヨーロッパ価格は、ストレージ256GBモデルが499ユーロ(約8万7000円)。すでにNXTPAPER搭載スマートフォンを販売しているアジア各国にも投入される予定だ。
日本での展開は未定だが、NXTPAPER 11 Plusが当初はクラウドファンディングで販売されたこともあり、本モデルの投入も望みたいところ。
価格は若干高めではあるものの、アイケアを必要とする学生向けのスマートフォンとしても最適な製品と言える。

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