ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第843回
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する?
2025年09月29日 12時00分更新
今年1月に開催されたCESの折にNVIDIAはProject DIGITSという新しい取り組みを発表した。具体的にはBlackwell GPUをベースにしたGB10と呼ばれる新しいAI向けパーソナルコンピューターを提供するというもので、今年5月から2999ドルで提供を開始するという予定だったが、現時点ではまだ出荷開始されたという話は出ていない。
また今年3月にはASUSがNUC……というにはやや大きいがGB10を搭載する、やはりコンパクトな構成のAscent GX10を発表したが、こちらも第2四半期に予約注文が可能とされつつも出荷時期は未定である。要するにGB10の出荷が遅れており、ASUSもこれにともなって出荷を始められないと思われる。
そんなGB10の仕様はNVIDIAのウェブサイトに公開されている以上の話はなく、またGB10はGPUとCPUの2つのダイからなるチップレット構成だが、GPUはNVIDIAが製造するものの、CPUはMediaTekが開発を担当したことが1月に公開されているが、その詳細などは明らかになっていなかった。
ところが今回Hot Chips 2025ではNVIDIAのAndi Skende氏(Senior Distinguished Engineer)が"NVIDIA's GB10 SoC: AI Supercomputer On Your Desk"と題した講演を行なったので、その内容を解説したい。
データセンター向けのBlackwellを卓上サイズにしたGB10
GB10はもともと、研究者や学生のために卓上にAIスーパーコンピューターを提供しようという発想で企画されたものであり、すでに広範に利用され始めているBlackwellをベースとしながら卓上に置けるサイズになるようにスペックを落とした構成である。
厄介なのは、Blackwell世代はデータセンター向けとゲーミング向けがどちらも基本構造は同じなのだが、それでもGB10はゲーミング向けではなく、データセンター向けが基本構造となっているようだ。
そんなGB10の基本的な発想が下の画像だ。GPUの構造そのものはBlackwellをそのまま継承しており、基本要素を省いたりはしない。ただしUMAの採用などが大きく異なる部分である。GB200の場合はそれぞれのダイにHBM3EのI/Fが4つずつ搭載されていたが、GB10でこれを採用するとコストと消費電力の両面で無理があると判断されたのだろう。
GB10の基本的な発想。インターポーザーを利用した2.5D Packageというのもゲーミング向けのBlackwellとは異なる部分だ。後述するが、GB10のGPUはディスプレー出力を持たない。ここもBlackwellとは異なる
下の画像が、GB10を搭載したDGX Spark Workstationの概要である。NVIDIAの仕様ページとは若干の食い違いがある。というのは仕様ページにはDisplay Connectorsが"1x HDMI 2.1a"となっており、このままだと接続できるディスプレーは1枚に限られるのだが、こちらでは"Multi-head display support"と書かれていることで、仕様が変更になったのかもしれない。
本格的に使うなら複数画面が欲しくなるのは当然だし、DGX Spark Workstationには拡張カードを差す余地はないので、これはうれしい変更かもしれない
I/F周りが下の画像だ。コネクティビティとしてConnectX-7を搭載するのはオーバースペックな気がする。
ConnectX-7は複数台のマシンを接続して連携して動作させる際には必須のカードであり、これをサポートする目的でNCCL(NVIDIA Collective Communication Library)やRDMA(Remote Direct Memory Access)、GPU Directのサポートなどが用意されているわけだが、そもそもDGX Spark Workstationはそんな風に使う製品ではない気がする。
あるいはDGX Spark Workstationを数十台つなぐ構成などを考えているのかもしれないが、それならGB200ベースのサーバーを導入した方がいいだろう。

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