Arrcusの“ネットワークOSソフトウェア“と富士通の“コンピューティング技術”を融合
富士通が新興ネットワーク企業「Arrcus」とタッグ AIインフラ向けトータルソリューションを展開
2025年09月04日 15時00分更新
富士通および同社のネットワーク事業を担う1FINITYは、2025年9月3日、米Arrcusと戦略パートナーシップを締結したことを発表した。同協業により、ArrcusのネットワークOSソフトウェアと富士通のコンピューティング技術を組み合わせた「AIインフラ向けのトータルソリューション」の提供を目指す。
Arrcusは、NVIDIAをはじめ、ソフトバンクや日立ベンチャーなどから出資を受けてきた新興ネットワーク企業であり、AIインフラをつなぐネットワーク向けのソフトウェアを提供している。
富士通 執行役員専務 ネットワーク&データセンターBG長 兼 1FINITY 代表取締役社長である森林正彰氏は、「Arrcusは、富士通にとって有望なパートナーであり、ネットワーク業界において“ゲームチェンジ”を起こす可能性を秘めている」と強調する。
(左)Arrcus Chairman & CEO シェイカー・アイヤー(Shekar Ayyar)氏、(右)富士通 執行役員専務 ネットワーク&データセンターBG長 兼 1FINITY 代表取締役社長 森林正彰氏
富士通・1FINITYがネットワークOSベンダーと手を組んだ理由
Arrcusが提供するのは、データセンターからクラウド、5・6Gネットワーク、エッジ環境までを横断して同一のOS・ソフトウェアで接続・管理可能なネットワークOSソフトウェアである。
ArrcusのChairman & CEOであるシェイカー・アイヤー(Shekar Ayyar)氏は、かつてVMwareでEVP 兼 GMを務めた経歴を持ち、「VMwareでは、コンピューティング向けの抽象化ソリューションを開発していたが、Arrcusでも同様に『AIネットワーキング向けの抽象化ソリューション』を提供したいと考えた」と語る。
同社の中核製品である「ArcOS」は、汎用的なハードウェア(ホワイトボックス)向けのネットワークOSだ。様々なスペックのシリコンを配置できるハードウェアの柔軟性によって、AIインフラに最適なネットワークを構築でき、従来ネットワークと比較して40%以上のコスト削減も見込めるという。
一方で、富士通では、AIインフラの需要に対して、省電力プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」や量子コンピューターなどのコンピューティング技術の開発に注力してきた。「コンピューティングの性能は拡大しているが、忘れてはいけないのはネットワーク。コンピューティングが優れていても、それをつなぐネットワークがないと、AIを活用することができない」と森林氏。
今回のArrcusとのパートナーシップによって、富士通は、同社のコンピューティング技術とArrcusのネットワークOSソフトウェアによるネットワーク機器、運用サービスまでを組み合わせた「AIインフラ向けのトータルソリューション」を提供できるようになる。
富士通のネットワークを担う1FINITYも、ポートフォリオにArrcus製ソフトウェアが加わる。これまで通信・データセンター事業者向けに光伝送装置や無線基地局装置を提供してきたが、新たにエンタープライズ領域を開拓していく。
今後は、1FINITYが富士通やチャネルパートナーにArrcus製ソフトウェアを提供して、それぞれのパートナーから独自のネットワークソリューションが展開される予定だ。Arrcusのソフトウェアライセンスのみを利用したいというケースには、1FINITYからの直販で対応する。まずは、国内外のチャネルパートナーとの契約を進めていくという。
森林氏は、「2030年までに2億ドル規模(約300億円)にまでビジネスを広げたい。国内外にサービスを広げるだけではなく、富士通社内での活用も考えている」と展望を語った。











