Windows 11 Ver.25H2は、今秋の公開を予定しているが、そのプレビューは、Windows Insider Program(以下、WIP)のDevチャンネルで実施されている。今回は、そのプレビューの状況について解説する。
そもそもビルドとは
あらためて“ビルド”番号などに用いられている、「ビルド(build)」という用語の説明から。ビルドとは、ソースコードなどから、実行ファイルなどを含む「ソフトウェア生成物」(パッケージやソフトウェア製品と呼ばれることもある)を作ることを指す。
Windowsの開発過程では、特定の条件で集められたソースコード、たとえば、特定の日のソースコードをベースに作られたWindowsのことを意味する。ビルドが異なると、起点となるソースコードが違っているので、Windowsの機能や性能、不具合の修正状態も変わる。
そこでビルドを区別するためにビルド番号を付ける。ソースコードの選択に日にちを使う場合、多くはその日付をコード化してビルド番号とし、その後の修正(バグフィックスなど)を表す数値などをビルド番号に付加することが多い。
ただしWindowsは、日付とビルド番号の関係を公開していない。そもそも、ビルドを特定の日のソースコードで集めるとも言っていないが、開発関連文書に「Daily Build」(毎日のビルド)という表記があり、日付をベースにしてビルドを作っていることが推測できる。
Windowsでは、ビルド番号の整数部がベースとなるビルドを表し、小数点以下の数値がビルドの修正を表す。小数点以下の数値の意味は公開されていないが、小数点以下を整数としてみたときに、同じビルドで大きなものが後から作られたものであることを示す。整数部のビルド番号が異なれば、小数点以下の値の比較は意味を持たない。あくまでも同一ビルド内での修正日時の違いを示すだけのものだ。
Windows Insider Programのチャンネル
WIPには、4つのチャンネルがあり、それぞれ配布されているWindowsのビルドが異なる。以下の表に記事執筆時点でのWIPのチャンネルとビルド番号を示す。
ビルド番号が最も大きいのは、Canaryチャンネルで、これは、将来のWindowsの機能プレビューである。ここで導入された新機能に関しては、Windowsに取り込まれることもあれば、消えてしまうこともある。なので、新機能の評価が無駄足になる可能性はありえる。
カーネルを含め、内部プログラムモジュールが更新されている場合もある。このため、ソフトウェア開発者が将来のWindowsに自身のプログラムが対応可能なのかを見るために利用される。
Devチャンネルでは、現在次のバージョンのWindows 11(Ver.25H2)のプレビューが進行中。ここで公開された機能は、よほど問題がなければ、次のバージョンに搭載される。
ただし、その新機能のプレビューは2種類に分かれており、1つはプレビュービルドのインストール時点で利用可能な新機能である。
もう1つは、段階的にWIPユーザーに配布される新機能である。後者はハードウェアの違い(マイクロソフトでもすべてのハードウェアを検証することは困難)による障害発生の可能性、互換性に対する懸念などにより、段階的に導入し、反応を見るために行なわれる。この機能を早期にインストールしたい場合には、「設定」→「Windows Update」→「その他のオプション」→「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」をオンにする。
また、Devチャンネルでの配布は特定のビルドのため、原則としてWindowsは再インストールされる。
Betaチャンネルは、現バージョンの24H2における毎月のアップデートのプレビューである。毎月のアップデートに先立ち、そのプレビューを公開している。
Release Previewチャンネルは、プレビュービルドのうち、比較的安定したビルドを配布するチャンネルである。
25H2はどのように進行中なのか
今年6月に公開されたMicrosoftのブログ「Get ready for Windows 11, version 25H2 - Windows IT Pro Blog」(https://techcommunity.microsoft.com/blog/windows-itpro-blog/get-ready-for-windows-11-version-25h2/4426437)では、25H2のプレビューが開始されたことが公表された。ただし、Devチャンネルでは、ビルド番号26200を持つビルドは、今年3月24日から公開されている。
一方でBetaチャンネルでは、7月28日のビルド26120.5722から、小数点部がDevチャンネルと同期するようになった。それぞれのリリースノートで公開される新機能も同じものになった。
24H2の毎月のアップデートは、25H2用のプログラムモジュールを含んでいるが、Betaチャンネルでは、「有効化パッケージ」を適用しないと25H2の新機能が発現せず、24H2と同じものになる。このときのビルド番号は、24H2と同様に26100となる。
「有効化パッケージ」を適用した場合、25H2の新機能が発現する。この際のビルド番号には、24H2+有効化パッケージという意味で、26120が使われる。このビルド番号は、Devチャンネルとも現行版とも異なる点に注意してほしい。

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