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さくらインターネットがGPUクラウドサービス「高火力」の最新動向を披露

AIネイティブになった自動運転 その技術開発にさくらの「高火力」がもたらしたメリットとは?

2025年08月27日 14時30分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 GPUクラウドサービス「高火力」の最新動向を披露するさくらインターネットの発表会において、ドライバーなしでのレベル4の自動運転で多くの実績を誇るティアフォーが導入事例を発表した。AIを前提とした技術革新が進む自動運転技術でいま何が求められているのか? 高火力の最新動向とともにお伝えする。

着々と整備されるGPU 次は価値を向上させて売っていくこと

 発表会の冒頭、さくらインターネット 執行役員 霜田純氏が登壇。会社概要やGPUの整備計画の現状、GPUクラウドサービス「高火力」の最新動向について説明した。

さくらインターネット 執行役員 霜田純氏

 来年30周年を迎えるさくらインターネットは、インターネット黎明期にレンタルサーバー事業から創業し、その後データセンター、クラウドサービスなどに事業を拡大。今回のメインテーマであるGPUクラウドサービスが生成AIブームとともに急成長し、昨年は売上高300億円超えを達成している。

 同社のAI基盤事業は、2024年度に経済産業省からの130億円規模の助成金でスタートし、まずはNVIDIA H100を2000基設置。その後、2025年度から始まった1000億円規模の第2次投資計画ではH100を840基設置。2026年度にはH200を1072基、B200も現在までに約400基設置し、1100基まで設置する予定となっている。また、市場の動きがスピーディーなこともあり、データセンターはコンテナ型で増強を行なっているという。

さくらインターネットのGPU整備計画と進捗

 生成AI向けクラウドサービスは、ベアメタル型の「高火力PHY」、仮想マシン型の「高火力VRT」、Dockerコンテナ型の「高火力DOK」の3種類を提供しており、利用期間とワークロードに合わせた「高火力三兄弟」としてラインナップしている。直近では、高火力VRTにてH100を正式版として提供し始めたほか、高火力PHYにてB200の提供を開始。「Blackwell GPUを整備し、総計算能力は5エクサFLOPS弱となっている」(霜田氏)という。

 生成AIの市場は特にプラットフォーム、インフラ分野で高い成長率を遂げており、2028年度には1兆9397億円になると予想されている(富士キメラ総研調べ)。さくらインターネットの事業環境も大きく変化しており、「想定より早く推論のニーズが急拡大している」(霜田氏)という。とはいえ、学習のフェーズが縮小したわけではなく、推論のフェーズとともに学習のニーズも拡大しているとのこと。

 また、5月には国内で完結したクラウド型のLLM実行環境「さくらの生成AIプラットフォーム」もリリース。学習用途に最適なGPU基盤に加えて、従量課金で推論の利用を拡大できる環境を強化。国内で完結する信頼性の高いインフラをベースに「使える」サービスとしての地位の確立を目指している。

 今後の戦略としては、確保した「GPUの提供価値の向上」に加え、全社横断の体制構築やパートナー制度の設立など「売る力の向上」を挙げる。社内体制としては8月に「AI推進室」を新設し、戦略・企画・開発・営業が一気通貫する体制を構築していく。

自動運転システムにAIは必須のテクノロジー

 発表会の後半は高火力のユーザーとして、自動運転ソフトウェアを手がけるティアフォーのアーキテクトである大里章人氏が登壇。同社が手がける自動運転の技術概要や最新の取り組み、そして導入した高火力のメリットについて説明した。

ティアフォー アーキテクト 大里章人氏

 2015年に創業したティアフォーは、世界初のオープンソース自動運転ソフトウェア「Autoware」の開発を主導する。物流、旅客、自家用など多種多様なサービスで用いられる車を、自動車メーカーやインテグレーター、テック企業などとともに共同開発し、自動運転システムの社会実装を推進している。

 同社は2016年以降、全国の97を超える地域で自動運転の実証実験を実施。直近では、長野県塩尻市において自動運転レベル4の運行許可を取得し、2025年1・2月に運転席にドライバーを配置しない自動運転バスの公道実走を実施したという。

国内で数多くの実証実験を行なっている

 最新の自動運転システムにおいてAIは欠かせない要素技術になっている。刻一刻と変わる道路状況をリアルタイムに把握し、安全に車を走行させる自動運転は、そもそも技術的にハードルが高い。特に都市部は、トラフィックもビジーで、対向車も歩行者も多い。車内のリソースが限られたシステムで、安全な走行を行なうのは、高度な技術が必要になる。こうした自動運転で必須のテクノロジーになっているのがAIである。

GPUのヘビーユーザーにとっての高火力のメリット

 自動運転システムは、センサーによる外界の「認知」、次に行なうべきの動作の「判断」、ハンドル・ブレーキ・アクセスなどによる「制御」のサイクルを、非常に短い周期で繰り返すことで実現されている。また、開発もサイクル化されており、運転時に収集されたデータが学習され、反映されたソフトウェアとしてビルドされ、安全かどうかのテストのフローを経て、自動運転システムにデプロイされる。

 当初AIは物体検知や領域分類など認知領域のほか、データのトレーニングに用いられていた。ここで用いられていたのはおもにディープラーニングで、現在の量産車の運転支援技術の基盤にもなっている。そして最近はAIの適用範囲が認知のみならず、判断、制御まで拡大しており、テスラのような自動運転をエンドツーエンドのAIで実現するメーカーも出てきた。また、トレーニングやテストにおいても生成AIが導入され、人間だけでは難しい作業がどんどんAIに置き換えられている状況だ。

AIの適用範囲はどんどん拡大し、エンドツーエンドAIへの移行も加速

 AIがヘビーに利用される自動運転技術の開発。しかし、GPUサーバーは非常に高価だ。高性能だが、電力も大量に消費し、構築や運用のハードルも高い。そこで選択したのがさくらインターネットの「高火力PHY」と「高火力VRT」になる。インフラ構築コストを大幅に削減でき、契約開始後1日で立ち上げられるスピードが大きなメリットだったという。

 特に大きかったのは手厚いサポート。「機能拡張やシステムのフェイルなどにおいても手厚いサポートをいただいた。Slackでもかなり高頻度にやりとりさせてもらい、親密にサポートいただけたのは、現場としてもありがたいところだった」と大里氏は語った。

AI前提となった自動運転技術の開発に、高火力を採用

 今後は自動運転2.0の潮流となるエンドツーエンドAIの利活用を促進すべく、多種多様なモデルを必要に応じて組み合わせて利用できるフレームワークを構築していく。また、グローバルでデータを共有し、構築したモデルをユーザー間で協調・協力していく「Co-MLOps」のデータ駆動型開発を促進していくという。先端AI技術をフォローしながら自社でのソフトウェア開発を強化し、自動運転開発のプラットフォーマーになっていくという展望を示し、大里氏は登壇を終えた。

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