ANAグループの共通データ基盤「BlueLake」 最新版はIcebergを採用し、AI時代に備える
グループ4万人のデータ活用で“ANA経済圏”確立を目指せ 進化するANAのデータレイクハウス
2025年08月15日 15時45分更新
「生成AIアプリ」「データカタログ」など、多様なPoCを内製開発で実施
BlueLake V4の開発に合わせて、ANAでは「データ活用のチャレンジ」も進めている。井岡氏は、いくつかのPoC事例を紹介した。
1つ目は、生成AI(LLM)とBlueLakeを組み合わせたデータ活用のPoCだ。ユーザーが自由文で希望する旅行の内容や日程を入力すると、LLMがフライトの空席情報などもふまえたうえで、希望に合った旅行先候補を提案するアプリのプロトタイプを開発した。
ここでは、開発言語として「Streamlit」を活用し、Snowflakeが備えるLLM関数も活用することにより、「ロジックとLLMを合わせて、200行にも満たないコードで、単一のプログラムで実装できた」(井岡氏)と話す。
2つ目のPoC事例は、外部システムとSnowflakeをつなぐカスタムデータコネクタの内製開発だ。具体的には、Snowflake上のNotebookとdbt Cloudを連携させて、X(Twitter)APIから取得したデータを用いたツイート数の予測を、エンドトゥエンドのデータパイプラインとして構築している。
井岡氏は、この内製開発は3日で済み、月間の利用料も1500円に抑えられたとして、SaaSとして提供されているデータコネクタを利用するよりも効率的だと説明した。
3つ目の事例は、データ民主化を推し進めるための「データカタログ」と「データ抽出ツール」の内製開発だ。それぞれのツールは、データに対する専門知識を持たないユーザー、抽出のためのSQL文が書けないユーザーでも利用できるよう設計してあるという。
「事業の方向性を導けるのがデータアーキテクチャ戦略の面白さ」
講演のまとめとして井岡氏は、「(激しい変化の時代において)未来がどうなるかは分かりませんが、あらゆる情報を収集し、価値観を磨き、組織の共感を獲得しながら、事業の方向性を導けるのがデータアーキテクチャ戦略の面白さだと感じています」と語った。
また「現在のビジネスは1社だけでは成り立たなくなってきている」ことから、今後は社外のパートナー企業との“データコラボレーション”にもチャレンジし、新たなビジネスチャンスを模索していきたいと抱負を述べた。
「AIやデータの世界が劇的に進化する時代だからこそ、ANAグループの強みである人の力に最新のデジタル技術を組み合わせることで、社員、お客様、社会の可能性をさらなる高みへと進化させていきます。 創業73周年目を迎えた私達のチャレンジはまだまだ続きます」
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なお、井岡氏の講演に先立って登壇したSnowflakeのホイットニー・ホーソーン氏は、旅行業界とホスピタリティ業界向けのビジネスを率いる立場から、現在の航空業界で求められているデータ活用と、その実現に向けた課題を紹介した。
ホーソーン氏によると、多くのパートナーとともにサービスを提供する航空業界では、システムのサイロ化や顧客データの分散といった複雑さがある。そのため、顧客体験の向上、収益性の向上、そしてイノベーションの推進と新たな収益源の創出といったデータ価値を実現するには、組織をまたいだ「エンドトゥエンドのデータサプライチェーンがとても重要だ」と語り、そうした用途におけるSnowflakeの優位性を説明した。














