“量子コンピューター時代”に備える暗号通信技術に向け前進
東芝・NEC・NICT、IOWN APNの高速データ通信と量子鍵配送の統合に成功 世界初
2025年07月31日 07時00分更新
「広域かつ低コストな量子暗号通信サービスにつながる成果」、今後は
今回の実証実験では、IOWN Open APNの大容量光伝送システムをNICT量子ICT協創センター内に構築し、通常の高速データ通信に加えて、東芝/NECの異なる方式のQKD信号(BB84方式-QKD、CV-QKD)および制御用光信号を、25kmの距離で波長多重伝送した。実験の結果、8時間連続で2つの異なるQKD方式による鍵生成に成功したという。
また、今回は通信キャリアが実際に使用する基幹光ネットワークを模すため、CバンドとLバンドの波長帯全域を用いて通信を行ったが、1波長あたり400G/800Gの高速データ通信用信号をエラーなしで伝送しながら、単一光子レベルのQKD信号も伝送することができることも確認されている。
NEC アドバンストネットワーク研究所 主任研究員の河原光貴氏は、「Cバンドの短波長側では、信号間で干渉が起きないように波長配置を事前に設計したうえで、QKD信号や鍵生成制御用信号、クロック信号を配置した。2つのQKD信号とデータ通信信号に、異なる波長を適切に割り当てて信号間の干渉を解消することで、良好なQKDの鍵生成と高速データ通信の両立を実現できた」と説明した。
この実証は、IOWN Global Forumにて公開された「Open APN Functional Architectureリリース3」ドキュメントに新たに記載されたOne-span PtP Wavelength Pathサービスのユースケースとして位置づけられている。
今後は、実験結果をベースとして、IOWN APNデータ通信とQKD信号との波長多重伝送が良好に動作するための指標の具体化や、APNサービスのユーザー間に、QKDの鍵を適切に届けるためのAPNとQKDネットワーク間の情報連携技術などについて引き続き研究開発を行う。さらに、APNシステムへのQKD機能の統合に向けたリファレンスデザインを構築することで、量子暗号通信への適用を容易にし、APNサービスを導入する通信キャリアの付加価値向上や競争力強化に貢献できるとしている。









