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6年目のテーマは“創る運用、遺す運用”

今年も「Cloud Operator Days Tokyo」開催 IT運用者が生成AI時代を生き残るには?

2025年07月14日 14時05分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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遺したいのは、運用を継続する上で重要な“ドキュメント”

 受賞者によるプレゼンの後には、パネルディスカッションも行われた。ひとつ目の話題は、今年のCODTのテーマでもある「運用の現場で“創った”もの」だ。

 日鉄ソリューションの田村氏は、Service Meshを用いずにカナリアリリース(段階的にユーザーに展開するリリース手法)を実装した話に触れ、「リリースのハードルが低くなった」と説明した。

 JCBの平松氏は、セッションで紹介したGKEベースのプラットフォームが、「既存の枠にとらわれず、クラウドベースで構築したプロジェクトであり、すべてをゼロから構築した」と、大きな挑戦になったことを振り返った。

 ダイキン工業の角田氏も、セッションで披露した自動チェックの仕組みについて、「製造業の工場ではフェイルセーフがうたわれる一方で、ITにおいては進んでいなかった」と説明。システム管理側でフロントエンドのアプリを作る機会がなかった中で、ダッシュボードまで開発したのは、いろいろな学びが得られたと述べた。

パネルディスカッションの様子

 2つ目は、同じく今年のテーマから「どんな運用を“遺そう”としているか?」だ。

 角田氏は、今はR&D部門で活用している自動チェックのダッシュボードを、他部門にも広げるためには、作った意図などが伝わるドキュメントを残す必要があると回答。平松氏も同意し、「せっかく作った運用を続けていくためには、ドキュメントが必要。どういった事情で作られたかを記録しなければならない」とコメントした。

 田村氏が重要だとしたのは、SREの考え方だ。「特にポイントとなるのは『標準化』と『自動化』。標準化は、人の入れ替わりや育成の視点で同時に推進していくべきであり、自動化では、保守のしやすいコードを残していくことが大切になる」と語った。

生成AI時代に、運用者の価値を高める鍵は「人の意思」

 最後のテーマは、イベント自体の目的でもある「運用者の価値をどう高めていくか?」だ。

 田村氏は、「運用には“定型的な作業なので、AIに取って代わられそう”というイメージがあるが、結局、最終的な説明責任や判断は人が負う」と述べる。「AIができることが増えても、継続的に学ぶ“知的好奇心”を失わないことが求められる」と強調した。

 平松氏は、「オンプレミスからクラウド、そして生成AIと、IT技術の進化が早い中で、運用者にしても開発者にしても、それぞれの時代に適応できる人が活躍できる」と語った。

 角田氏は、「AIには“運用の価値”を広げることはできない」としたうえで、「生成AIは、上層部や新人などに、相手に刺さるように説明するのは難しい。そのコミュニケーションが運用者の価値を高める」とコメントした。

 最後に実行委員長である長谷川氏は、「3人に共通するのは、“人間の意思”が大切だということ。『こうしていきたい』という気持ちが何よりも重要になる。このイベントを通じて、そういう想いを持った人の輪を広げていきたい」と締めくくった。

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