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「AWS Summit Japan 2025」レポート

AWS Summit Japan 2025セッションレポート

メガネ選びの“わからない”に応える「JINS AI」 わずか3カ月でのローンチで乗り越えた壁

2025年06月26日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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生成AIプロジェクトをPoCで終らせないためのポイント

 こうしてβ版が完成したJINS AIは、2025年4月より試験導入を開始し、約3か月が経過した。実際の店舗では、特にインバウンド客に好評で、店員に質問はしたいが、あくまで自分で選びたいというニーズにも応えられているという。

 一番心配だった「想定外の使われ方をしないか」という点も、購買に役立てるための質問が大多数で、2割弱がメガネを選択したり、メガネのサマリー画面を表示したりと、購買に向かうやり取りに至っている。内容的にも、めがね購買の3つの「わからない」を解決するための質問が中心と狙い通りであり、「生成AIが店員の代わりになる」という新たな顧客体験が始まりつつある。

試験導入でのユースケースとよくある質問

 ただ、AI推進室 常務執行役員である松田真一郎氏は、「JINS AIはまだまだ発展途上、データ不足で回答できない問い合わせも多くある」と述べる。今後も、試験店舗を拡大しつつ、JINS AIに聞けば「自分に最適なメガネに出会える」ように、精度向上に取り組んでいく。

 最後に、松田氏から、PoCどまりの生成AIプロジェクトで溢れている現状に対し、そこで終らせないためのポイントが語られた。

 まず挙げられたのが、「経営陣のオーナーシップ」だ。JINS AIも、社内レビューやテストを通過した上で、CEOの判断によって試験導入に進んでいる。「毎週のようにCEOへ迫って、スピーディな意思決定をした。当然失敗をするリスクも伴うが、駄目出しばかりしない懐の深さも重要だ」と松田氏。加えて、「明確な価値創造の考え方」も必要となる。PoCそのものを目的にせず、その先で実現したいものを再確認することで、技術的リスクやバグなどで迷走したり、投資対効果の追求が一人歩きしたりすることがなくなる。

 そして何より重要なのは、「社員の情熱」と「確かな技術力」だという。本プロジェクトを担当した黒尾氏も、AIの専門知識はなかったが、「アイウエア体験においてナンバーワンを目指す」という想いでAI推進室に参加した。そういった情熱を、今回であればAWSのような、技術力のあるパートナーが補完することで、PoCを乗り越えることができるという。

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