エンジニア魂が燃えたぎる!生成AI開発イベント「AI Challenge Day」 第8回
第4回「AI Challenge Day」速報レポート
“買いたくなる体験”をAIでどう作る? ─ RAG×エージェントで火花を散らす12社の挑戦
2025年06月27日 09時00分更新
ソフトバンク・Sun Asterisk・ゼンアーキテクツ
10番手はソフトバンクだ。パブリッククラウドのMSPサービスを手掛ける部隊から、若手を中心としたチーム構成でハッカソンに挑んだ。
アーキテクチャはシンプルながら、慣れ親しんだSemantic Kernelでのプラグイン接続ではなく、すべてMCP接続することを選択。パーソナライズ化のためにメモリ機能を工夫し、スレッド単位ではなく、ユーザー単位で属性や好みなどを記録する“長期記憶”の仕組みも構築した。
また、曖昧な“期待”から検索できるUIを意識しており、例えば「炊飯器」を検索した際には、美味しいお米を食べたいという期待を推論して、火力調整ができるコンロなども提案。あわせてSNSも検索して、該当製品で得られる体験例までを提示する。
スコアは「110.0点」となり、評価用基盤への最適化が間に合わなかったことへの悔しさをあらわにした。
11番手はSun Asteriskだ。同社も海外のメンバーを含む、平均年齢26歳という新進気鋭のチームで参戦した。
最新技術への積極的なチャレンジとして、MCP連携を採用し、LangChainを用いて初めてのエージェント開発に取り組んだ。また、RAGでは、CLIPモデルでエンベディングすることで画像検索にも対応。他形式のファイルについても、種類に応じて処理変更することでスコアの向上を狙った。
当初は、エージェントが商品購入までのフローを実行してくれなかったが、プロンプトに具体的な指示を細かく記述することでチューニング。存在しない商品をリコメンドしてしまう問題も、商品を把握させるツールを用意するなど試行錯誤を重ねた。
今回、計画休暇日を挟むなど時間的な制限もあったが「172.2点」と高得点に。「普段使わない技術に触れられた良い機会になった」と次回参加の意欲もみせた。
12番手、ラストのプレゼンは、ゼンアーキテクツ。前回イベントに引き続き、同社が誇る各分野の先鋭Geekが集結した。
同社は今回も縛りプレーを敢行。データソースへのアクセスはすべてMCPサーバー経由とし、「MCPの登場でマルチエージェントは必要なのかという葛藤」から、あえてシングルエージェントで構築した。加えて、すべてサーバーレスで、1万円を超えないような構成にチャレンジしている。
さらに、ローカルでの実行を禁止して、すべてAzureにデプロイされた状態でスコア評価を実行するという縛りも設けた。コードやプロンプト、データの変更を都度出力するフローをGitHub Actionsで構築し、LLMOpsの完全自動化も達成。実運用での継続評価にも適用できる仕組みになっている。
こうした制約を設けつつも、スコアはRAGの部分は満点で「164.1」を記録した。
栄えある第4回グランプリ企業は……
こうして過去イチハイレベルだったプレゼンも終了。最後に各賞の結果を紹介しよう。
まず、優れたカスタマーストーリーを構想した「ASCII賞」は……アドインテが受賞。審査員であるASCIIの大谷イビサは、「プレゼンテーションの勢いとテンションの高さ、そして気合(kiAI)の実装が目を見張った。エージェントがメディアになるという構想など沢山のヒントをもらえた、イベントの精神に則った発表だった」と評価した。
続いて、優れたUI・UXを実装した「UX賞」は……ソフトクリエイト/ecbeing/ATLEDの合同チームが選ばれた。マイクロソフトの岡田義史氏は、「心を打たれたのは、興味のありなしを2つのボタンで表現したデモ。人の判断したくないという感情を後押しするその可能性を、一緒に追い求めたい」とコメントした。
エンタープライズを実装にまで配慮した「セキュリティ&トラスト賞」は……野村総合研究所が選出。スキルアップNeXtの小縣信也氏は、「決裁情報をエージェントに渡してもよいのかという課題に気づき、その回答も鮮やかで、唯一の提案となった。満場一致での受賞」と説明する。
独創的なアーキテクチャ構想であった「ブレイクスルー賞」は……ゼンアーキテクツが獲得。日本マイクロソフトの花ケ﨑伸祐氏は、「なぜかMCPで縛り、さらに1万円縛りを加えた、独自性あるアーキテクチャだった。多分何カ月も、擦り続けて、グレードアップしてくでしょう」とコメントした。
RAG・エージェントで優れた回答精度を達成した「インテリジェントエージェント賞」は……172.154点を叩き出したSun Asterisk。花ケ﨑氏は、「RAGでは、ファイルごとに丁寧に構造化の仕方を変え、エージェントのフロント部分を試行錯誤したところが高得点につながった。今後もチャレンジを続けて欲しい」と述べた。
さて、ラスト2賞。グランプリに次いでスコア+審査員点が優れていた「準グランプリ」は……ヘッドウォータースに!岡田氏は、「めちゃくちゃ審査がもめた。特に、ベストプラクティスを疑ったことは、審査員全員からポジティブな評価だった。当然スコアも高く、もっと詳細を知りたい内容だった」と評した。
さて、ハッカソンイベントもクライマックス、総合的に最も優れた「グランプリは」…………野村総合研究所!!セキュリティ&トラスト賞とW受賞となった。日本マイクロソフトの内藤稔氏は、「すべてにおいてレベルが高かった。最高スコアで、UI/UXも素晴らしく、セキュリティも配慮されていた。今回参加者のレベルが高かった中で、最も優れていたという意味も込めて、過去にないW受賞としている。本当におめでとうございます!」と祝福した。
内藤氏は、「未来を感じたイベントになった。これからのAIの時代を担う新しいスターが生まれ、ベテランが自分の価値を投入した。配信を視聴した人も一緒に、AIの社会実装を進めて欲しい」とイベントを締めくくった。
本記事で紹介しきれなかった、各参加企業の詳しいプレゼンは後日公開の詳報レポートでお届けする予定だ。楽しみにお待ちいただきたい。

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