エンジニア魂が燃えたぎる!生成AI開発イベント「AI Challenge Day」 第8回
第4回「AI Challenge Day」速報レポート
“買いたくなる体験”をAIでどう作る? ─ RAG×エージェントで火花を散らす12社の挑戦
2025年06月27日 09時00分更新
ブレインパッド・クラスメソッド・Commerble
4番手はブレインパッド。新卒3年目のデータサイエンティストたちがチームを組んだ。AIアシスタントのコンセプトは、検索から「対話」、推定から「理解」だ。対話のコンテキストから、顧客の目的や背景を汲み取るような顧客体験を目指した。
同チームもマルチエージェントを採用し、「マネージャー」「リサーチ」「取引実行」という3体のエージェントが連携する仕組みを構築。RAGに関しては、AI Searchのセマンティックハイブリッド検索を活用したり、データの種類に応じてインデックスを作成したりすることで、精度を高めた。
スコアは「142.0点」という結果に。網羅的に正しく回答するシステムの難しさを痛感しつつ、「文化祭的な楽しさがあった」と感想をこぼした。
5番手は、まさかの参戦となったクラスメソッド。Azureをメインで扱わないメンバーでどこまで開発できるかに挑戦した。
同チームでは、「買い物のカート担当」「クレーマー担当」「外国客担当」など、実店舗にならってエージェントを役割分担させ、ペルソナの異なる顧客エージェントに柔軟に対応できるようコンセプトを定めた。
アーキテクチャは、データベースやWeb API、RAGを使うツールを実装して、エージェントがまとめて呼び出すというシンプルな構成に。インターネット経由で不特定多数が利用することを前提にセキュリティ面も考慮した。
スコアは「149.4点」を記録。Azureに初めて触るメンバーもいた中での一定の成果に、手ごたえを感じた様子だった。
6番手は、Commerbleの竹原氏を中心に、所属がバラバラなメンバーが集結したチームだ。諸事情でイベントのレギュレーションから離れ、顧客自らが意識せずに、バイブコーディングで求めるものを生成する“真にパーソナライズされたEC体験”を披露した。バイブコーディングとは、自然言語による指示だけでAIにコーディングを任せる手法だ。
同チームが作成したデモアプリは、顧客のチャットからターゲット層を推論して、UIを自動生成。例えば、老人会で使用するノートパソコンを買いたいと質問すると、シニア層に合わせて検索結果のデザインやフォントなどが最適化される。さらに一歩進み、チャットのコンテキストから「検索のプロンプト」をより自然な検索文になるよう生成し、その検索プロンプトを用いてLLM+RAGで適切な商品を検索する。もちろん、このデモアプリも、バイブコーディングを経て実装されている。
こうした世界では、「SEOではなく、AI向けに上手に情報提供する『AIO』が重要になるのではないか」と投げかけ、プレゼンを締めくくった。
ソフトクリエイト/ecbeing/ATLED・ヘッドウォータース・野村総合研究所
ここからは後半戦。7番手は、ソフトクリエイトとecbeing、ATLEDからなるグループ会社3社の合同チームだ。
同チームは、普段ECサイトを使わない顧客に対する“次世代の購入導線”をつくることを目標とした。従来のECサイトを感じさせないつくりで、会話の内容から商品を提案。特にこだわったのが、実店舗のスタッフがいるかのように、音声とタップ操作だけ購入まで可能なUI/UXだ。
技術的には、「AutoGen」フレームワークを活用した開発にチャレンジ。リアル店舗のスタッフを意識した7体のエージェントが連携する仕組みを構築した。
スコアの結果は「149.2点」。エージェントのデバッグやMCPの接続などに苦戦したものの、最終日まで開発サイクルを何度も回せて「純粋に楽しい体験」だったと感想を述べた。
8番手はヘッドウォータース。22歳の若手からベテランまで多様な世代で構成されたチームで臨んだ。
同チームは、情報量と選択肢の多さがストレスになる中で、“探す”という行為をエージェントに“託す”ことが次世代のECサイトと定義。人とAIが協調する購買フローを目指した。
アーキテクチャは、Azure Well-Architected Frameworkをベースとし、AutoGenでマルチエージェントの仕組みを構築、エージェントの接続はすべてMCPを利用した。さらに、ベストプラクティスのフレームワークの枠を越え、エージェント時代に求められる要素を議論。特に「エージェントの権限管理」について、Buildで発表された「Microsoft Entra Agent ID」が、Azureにデプロイされているエージェントに対しても、動的に権限付与できるようになることを期待して構成を組んでいる。RAGにおいても、チーム全員で与えられたデータセットと向き合い、パーソナライズ情報をPostgreSQLのApache AGE拡張でGraphDBに取り込むことで、長期記憶を可能にした。
これらの工夫が実り、「180.8点」と高スコアを叩きだす。UIに関しても、コンテキストに応じて動的に最適化する「Generative UI」を採用するなど、限られた時間で完成度の高いアプリを作り上げた。
9番手は野村総合研究所。流通業向けシステムを開発するメンバーでチームを編成。「顔が見え、会話で買えるEC」を目指し、リアルタイムに音声で対話できる、アバターAIとAIエージェントを組み合わせたシステムを構築した。
Azure Well-Architected Frameworkをベースに構成し、マルチエージェントはApp Serviceでホスト、データ検索にはAI Searchを用いている。「LangGraph」のフレームワークで全体を構成しており、オーケストレーターとなるエージェントが、始めにユーザー情報を取得することでパーソナライズ化にも対応した。
審査員を感嘆させたのが、ECエージェントであることを踏まえ、低遅延・スケーリング・セキュリティを突き詰めた点だ。特にセキュリティ面では、エージェントにユーザーの個人情報を渡すリスクを指摘。実運用を見据え、エージェントと決裁システムを分離する対策を提案した。スコアも全チーム最高となる「182.6点」を記録した。

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