赤煉瓦造りの優雅な外観が、丸の内の街並みにひときわ映える三菱一号館美術館。歴史ある重厚感と現代的な洗練さをあわせ持ち、丸の内エリアのランドマークとして多くの人々を魅了し続けています。企画展ごとに異なるテーマでアートの最先端を紹介する展示空間は、東京の美術館の中でもとりわけ個性が光り、都市生活の中で上質な文化と静謐な時間を提供してくれる場所として愛されています。館内のアトリウムや、庭園の緑を臨むカフェ、センスの良いミュージアムショップなど、アートと日常が自然に溶け合う“丸の内らしさ”も三菱一号館美術館ならではの魅力です。
2024年、三菱一号館美術館のリニューアルオープンに合わせて、1階エントランス横の「三菱センターデジタルギャラリー」も新たな姿で生まれ変わりました。最先端のデジタル技術と、三菱グループが受け継いできた文化財・名所が出会うことで、これまでにない“未来型文化体験”が、ここ丸の内から始まっています。
「三菱センターデジタルギャラリー」は、一言でいえば“日本文化の宝庫をデジタルで旅する場所”です。静嘉堂文庫美術館、東洋文庫、長崎造船所「占勝閣」など、三菱ゆかりの施設やコレクションから厳選された名品が、4Kの高精細映像でアーカイブされています。とくに注目すべきは、国宝「曜変天目」や俵屋宗達「源氏物語関屋澪標図屏風」をはじめとした、普段は厳重な管理下にあり現地でも間近に見ることが難しい作品の数々。平面作品50点、立体作品48点とラインナップは多彩で、それぞれの魅力を“手に取るように”体感できるのが最大の特徴です。
ギャラリーに設置されたタッチパネル型の閲覧ブースは、2人で並んで座れる仕様。各ブースには丸椅子が2つずつ置かれ、友人や家族、親子で一緒に、好きな作品を一画面に表示しながら鑑賞できます。画面をなぞって細部を拡大したり、立体作品は画面をスワイプすることで360度自由自在に回転したり。金彩の細かな輝きや、釉薬の溜まり、絵筆の勢いまでもが鮮やかに蘇り、「ただ眺める」だけではない没入感と発見をもたらしてくれます。美術館のガラス越しでは味わえない、デジタルならではの“作品との距離の近さ”も魅力です。
さらに、今回のリニューアルで大きく進化したポイントが、日本各地の三菱ゆかりの史跡・庭園を巡る4K動画コンテンツの充実です。高知の岩崎彌太郎生家、大阪の土佐稲荷神社、東京の旧岩崎邸庭園、岩手の小岩井農場、千葉の末廣農場別邸公園――歴史に名を刻む場所の数々が、現地に訪れたかのような映像体験として楽しめます。丸の内にいながら、日本文化の奥深さや、三菱が築いてきた伝統のスケールの大きさを実感できるのは、このデジタルギャラリーならでは。今後は清澄庭園、殿ヶ谷戸庭園、六義園など東京の名園の新規映像も公開予定で、訪れるたびに新しい発見がある“進化するアーカイブ”として期待が高まります。
ギャラリー正面に設置された大型モニターでは、「MCDG ~文化と価値の継承~」という3~4分のオリジナル映像も常時上映。三菱の歩みと日本文化の歴史を、詩的な映像表現で伝えています。美術館やオフィスへの行き帰り、あるいはショッピングやカフェタイムの合間など、ふと立ち寄った人が思わず足を止めて映像の世界に引き込まれる―そんな知的な余白が、この空間には流れています。
これだけ充実している「三菱センターデジタルギャラリー」ですが何と入場無料! 開館時間は10時から18時、仕事帰りや美術館巡りの途中、ショッピングやカフェタイムのついでにふらっと立ち寄れる、丸の内ならではの知的な寄り道スポットです。
伝統と最先端が出会う丸の内で、日本文化の深みと美しさを“触れて・語り合える”新時代の文化拠点。三菱センターデジタルギャラリーは、アートや歴史に詳しくない人にも開かれた知的遊び場として、そして丸の内散歩や美術館巡りの新たな寄り道として、きっと日常に彩りと発見をもたらしてくれるはずです。
丸の内に訪れた際は、赤煉瓦の美しい美術館とともに、未来へつながる文化体験の扉を開く特別なひとときを過ごしてみてください。
三菱センターデジタルギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内二丁目6番2号 三菱一号館内
開館時間:10:00~18:00
休館日:
毎週月曜
(ただし、展覧会期中の祝日、会期最終週は開館)
年末年始、臨時休業あり
公式サイト:https://www.m-cdgallery.com/
※展示や映像コンテンツは随時アップデートされています。詳細・最新情報は公式ウェブサイトをご確認ください。
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