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BoxWorks TOKYOで語られた、AIファーストなBoxプラットフォームの進化

コンテンツの価値を“最大限”引き出す Box純正の「AIエージェント」が間もなく登場

2025年06月13日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 「非構造化データ(コンテンツ)」を理解する生成AIの登場によって、かつてはクラウドストレージとして活用されていたBoxが、コンテンツから価値を生み出す「インテリジェントコンテンツ管理」のプラットフォームへと変貌している。

 Boxは、2025年6月10日~11日、年次イベント「BoxWorks TOKYO」を開催。掲げたテーマは、サンフランシスコで開催された本社BoxWorks同様に「Content+AI」だ。

 基調講演のオープニングにて、Box Japanの社長執行役員である佐藤範之氏は、「コンテンツとAIの組み合わせにより、イノベーションが起きようとしている。非構造化データが構造化されることで、コンテンツ本来のポテンシャルが最大限に引き出され、業務やビジネスにインパクトをもたらす」と語った。

Box Japan 社長執行役員 佐藤範之氏

検索・調査・抽出のAIエージェントを間もなく展開、MCPサーバーも

 同イベントでは、Boxの共同創業者 兼 CEOであるアーロン・レヴィ(Aaron Levie)氏も登壇。「AIファーストなビジネスの時代に突入して、われわれの仕事のやり方がすべて変わっていく」と強調した。

Box 共同創業者 兼 CEO アーロン・レヴィ(Aaron Levie)氏

 それは、AIエージェントが非構造化データを構造化することで、インサイトを瞬時に生み出し、従来は困難であった業務フローの自動化も可能になっていく世界だ。一方で、依然として残る課題が、この変革を実現する鍵を握る「非構造化データの管理」だという。

 企業データの9割を占める非構造化データは、さまざまなアプリケーションに分散して、サイロ化しており、AIエージェントは必要なデータを得られない状況だ。これに対して、Boxは、コンテンツ中心のプラットフォームにAIを組み込んだ「インテリジェントコンテンツ管理」を提供している。

 「コンテンツをシステム間で動かさず、“ひとつの場所”で安全に管理しながら、各システムにつなげられるのがBoxのプラットフォームの持つ力。AI活用でも同様で、AIシステムにコンテンツを置かず、主要モデルによるAI機能を安全に適用できる」(レヴィ氏)

Boxのインテリジェンスコンテンツ管理プラットフォーム

 このプラットフォームに組み込まれたBox AIに、間もなく「Box AIエージェント」が追加される。「検索」「ディープリサーチ」「抽出」の3つのエージェントが、今後数か月で展開される予定だ。

 検索のエージェントは、質問の複雑さに応じて、これまでの生成AIのような素早い回答だけではなく、何百ものコンテンツを参照したうえで包括的な回答も返してくれる。ディープリサーチは、AIが計画立てて、必要な情報を適宜集めながら、多角的な調査結果を導き出す。抽出のエージェントは、複雑なコンテンツから構造化データを抽出してくれる。

間もなく登場するBox AIエージェント

 加えて、他社のAIエージェントとのエコシステムも構築していく。Boxは、もともとAPIファーストで設計され、1500以上のサービスとのエコシステムを形成しており、その流れをAIエージェントにも汲んでいく。

 既に、Agentspace(Google)やAgentforce(Salesforce)、Amazon Q(AWS)、AI Agent Fabric(ServiceNow)といったAIエージェントを通じて、Box AIが活用でき、間もなく、Microsoft 365 Copilotも対応予定だ。加えて、外部のAIアプリケーションやAIエージェントがBox内のコンテンツにアクセスするためのMCP Serverも公開している。

AIエージェント本格化を見据えたBox AIの機能拡充

 ここまでBoxは、AIエージェントの本格活用を見据えて、Box AIの機能を拡充してきた。Box Japanのエバンジェリストである浅見顕祐氏は、レヴィ氏が挙げた「インサイトを瞬時に生み出す」「非構造化データを構造化する」「あらゆるワークフローを自動化する」という3つのテーマに沿って、Box AIの新機能と機能強化を振り返った。

Box Japan プロダクトマーケティング部 エバンジェリスト 浅見顕祐氏

 ひとつ目のテーマは、「インサイトを瞬時に生み出す」だ。

 Boxは、2023年、最初のAI機能として「Box AI for Documents」をリリース。ドキュメントのプレビュー画面からBox AIを呼び出し、内容の要約や質問ができる機能だが、今では、画像やプレゼンテーションのオブジェクトなども認識できる。加えて、2025年2月には、すべての有償プランのユーザーに本機能が解放されている(従来はEnterprise Plusプラン以上)。

 複数のドキュメントにまたがりAI活用できる機能が、「Box AI for Hubs」だ。コンテンツを整理し、公開できるポータルサイトを作成できる機能であり、ポータルに紐づけたコンテンツを対象にBox AIを適用できる。

 さらには、純正のAIエージェントに先駆け、カスタムAIエージェントを作成可能な「Box AI Studio」も用意している。

 今後、Box AIエージェントが、独自のエージェントと連携したり、Box AI for Hubsのコンテンツを検索・分析できるようになる。さらに、「Box Archives」の機能で、古いコンテンツをAIの対象外にして、分析や回答の精度を高めることも可能だ。

インサイトを瞬時に生み出すBox AIの機能

 2つ目のテーマが、「非構造化データを構造化する」だ。

 これまで、コンテンツを構造化データとして管理する機能として「Box AI for Metadata」を提供してきた。AIが文章や画像から、キーとなる情報をメタデータとして抽出。メタデータを付与したコンテンツは、ノーコードアプリツール「Box Apps」で管理できる。例えば、メタデータを基に文書の種類や有効期限をソートできる契約書アプリなどを作成可能だ。

 コンテンツにメタデータを付与することで、「AIエージェントが高速かつ必要な時に、コンテンツにアクセスできる状態をつくれる」と浅見氏。Box AI for Metadataを応用し、コンテンツセキュリティである「Box Shield」にて、コンテンツに自動でラベル(社外秘分類など)を付与する機能も開発中だという。

「安全基準を遵守する」というメタデータが付与された画像

 3つ目のテーマは、「あらゆるワークフローを自動化する」だ。

 ワークフローを自動化するための機能として「Box Doc Gen」と「Box Forms」が追加されている。Box Doc Genは、予め定義したテンプレートに沿った文章を自動生成し、Box Formsは、このテンプレートに、データを流し込むためのフォームを作成する。

 例えば、Box Doc Genのテンプレートを基に、Box Formsから得た情報で契約書を生成、Box Relay(ワークフロー自動化機能)で契約書の署名依頼を送信し、Box Signで署名、Box Archiveで7年凍結保存といった、一連のワークフローを自動化できる。今後は、Box AIエージェントが、こうしたワークフローと連携して、タスクをこなすようになっていく。

ワークフロー自動化の機能とその例

 こうして拡充されたBox AIの新機能を利用できる新プラン「Enterprise Advanced」も、2025年1月に追加している。

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