このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

「AWS Summit Japan 2025」レポート

“開発・運用・成長”3つのフェーズでゲーム産業を支援するAWS

「モンスターハンターワイルズ」のクロスプレイを支えるゲームサーバー なぜAWSが選ばれた?

2025年05月29日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ゲーム産業を支えるAWSのテクノロジー

 続いて、AWSジャパンのサービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長/ソリューションアーキテクトの小林正人氏から、ゲーム業界向けに展開するAWSのテクノロジーについて紹介された。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン サービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長/ソリューションアーキテクト 小林正人氏

 小林氏は、AWSでゲームサーバーを稼働させるメリットとして、用途ごとに専用に設計されたマネージドサービスで、素早く開発環境を立ち上げ、運用負荷を下げられる点、信頼性の高いグローバルなインフラストラクチャーでグローバル展開にも対応できる点を挙げる。ネットワーク接続するゲーム体験に必要な、広範なサービスも用意されている点も強みだという。

 構築方法も自由に選択でき、モンスターハンターワイルズのようにカスタマイズされたインフラを作成するだけではなく、ゲームサーバー自体をホスティングで提供する「Amazon GameLift」も用意する。

 独自構築する際に、中核となるサービスが、スケーラブルなコンピューティングを提供する仮想サーバー「Amazon EC2」だ。多様なスペックを取り揃えており、大規模接続するゲームサーバーでは、コストパフォーマンスの高い「Graviton プロセッサー」が活用されているという。

Amazon EC2

 また、ゲーム業界でも採用が進むのが、コンテナオーケストレーションのマネージドサービス「Amazon EKS」だ。EKSでコンピューティングリソースを柔軟に管理するためのツール「Karpenter」を利用することで、ゲームサーバーのさらなるコスト効率化を推進できる。

Karpenter

 今回のモンスターハンターワイルズのゲームサーバーは、マイクロサービスを組み合わせて構築されたという。このマイクロサービスの相互関係をインフラストラクチャーに反映していくサービスが「Amazon VPC Lattice」だ。マイクロサービスの論理的な関係性を記述すると、それに従って、ネットワークやアクセスコントロールを自動構成してくれる。

Amazon VPC Lattice

 ゲーム業界の生成AI活用も支援している。AWSは、独自で基盤モデルを開発するためのインフラストラクチャー、既存モデルを使った生成AIアプリケーションを開発するための「Amazon Bedrock」、AWS自身が提供する生成AIアプリケーション「Amazon Q」の3層で生成AIサービスを展開中だ。

 事例も出てきており、Electronic Artsでは、AWS独自の基盤モデル「Amazon Titan」を採用して、テストシナリオを自動作成している。HUDstatsは、eスポーツの映像をリアルタイム分析して、プレイデータを抽出したり、試合のハイライトを生成したりと、eスポーツを盛り上げるためにAmazon Bedrockを活用する。

「開発・運用・成長」3つのフェーズで包括的なソリューションを展開

 最後は、AWSジャパンの常務執行役員 情報通信・メディア・エンターテイメント・ゲーム・スポーツ・戦略事業統括本部 統括本部長である恒松幹彦氏から、ゲーム業界における同社のビジネス戦略について説明された。

 調査会社であるOmdiaによると、世界のエンターテイメント産業の市場価値は1兆ドルに達し、その内ゲームが25%を占め、実に地球上の約2.3人に1人が毎週ゲームをしている状況だという。また、別調査では、日本のゲーム市場の規模は約1.9兆円で、グローバルの約6%を占める。海外輸出額の観点から見ても、鉄鋼や半導体と並ぶ規模のコンテンツ産業の中で、ゲームが6割を占めるといわれている。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 常務執行役員 情報通信・メディア・エンターテイメント・ゲーム・スポーツ・戦略事業統括本部 統括本部長 恒松幹彦氏

 このような状況下で、AWSは、「Build(開発)」「Run(運用)」「成長(Grow)」の3つのフェーズで支援を展開する方針だ。ゲーム業界のトレンドにも対応しながら、各フェーズで包括的なソリューションを提供していく。

 開発においては、潤沢なリソースを提供しつつ、クロスプレイや他言語対応の実現や、AIなどによる開発の効率化を推進。運用においては、低遅延かつ安定した、柔軟性の高いアーキテクチャーをベースに、長期化を続ける運用の負荷を軽減する。そして、成長フェーズでは、AIを用いた高度な分析やコミュニティの形成をサポートし、ユーザーの獲得やビジネスの成長に寄与していく。

AWSのゲーム領域のソリューション

 恒松氏は、「世界中で、毎月7億5000万人以上が、AWS上で稼働するゲームを楽しんでいる」と強調。「ゲームの開発・運用・成長のためのテクノロジーだけではなく、グローバルでゲーム業界を支援してきた経験や、AmazonのショッピングサービスやPrime Videoなどを支えてきた知見も活かし、今後も、ゲーム業界のお客様を支援していきたい」と締めくくった。

■関連サイト

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事
  • 角川アスキー総合研究所