ポイントはノーコードツール「Node-AI」とNTT Comの伴走支援
データ専門人材ゼロでもできる 地方中小企業が「AI予測モデル」開発に成功した理由
2025年05月27日 09時00分更新
深刻化する中小企業の人手不足。事業継続のために、DX推進は「待ったなし」の状態にある。山口県で最終処分場を運営する住吉工業も、365日業務が発生する「水質管理」の人件費に頭を悩ませ、DXに迫られていた。
住吉工業は、“自走”でのデータ活用DXを選択し、担当者自らが水質予測のAIモデルを開発。この自走でのDXが成功したのは、ノーコードのAIモデル開発ツール「Node-AI」とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)の伴走支援によるものだという。
NTT ComでNode-AIのプロダクトマネージャーを務める切通恵介氏は、「Node-AIは、プログラミングやデータ分析の習得が難しく、環境構築などに時間をかけられないという、中小企業のデータ活用DXにおける課題にフィットするツール」と説明する。
水質管理の人件費を減らしたい
山口県下関市に本社を構える住吉工業は、土木・建設業をはじめ、最終処分場といった環境産業も手掛ける、従業員数144名(2024年4月時点)の中小企業だ。同社が抱えていた課題が、最終処分場の水質管理業務における労務管理だ。
最終処分場で発生する排水の水質は、環境省が定める基準を常に満たす必要がある。月1回以上の水質検査が義務付けられているが、住吉工業では安心安全のため、自主的に365日の点検作業を実施。作業員は毎日、施設内に7箇所ある点検ポイントに向かい、pH値や水温を測定している。必要な業務であるものの、特に休日出勤は作業員の負担にもなり、人件費も増大。さらに、施設は危険な場所にあるため、労災リスクもはらんでいた。
休日対応を減らすべく、住吉工業が考えたのが、過去15年間蓄積してきた水質管理データの活用だ。このビッグデータを用いて、未来の水質を予測し、施設への派遣判断ができないかと検討するが、そもそも社内にデータ活用人材がいない。
NTT Comへの相談を経て、同社が決めたのが、データ活用DXを“自走で”推進することだった。NTT Comが内製開発したAIモデル開発ツール「Node-AI」を用いて、2日後の水質を予測できるAIモデルの開発を目指した。
住吉工業が“外注ではなく自走”を選択できた理由
なぜ、住吉工業は、外注ではなく自走という選択をしたのか。
外注は、短期目線では、結果が出るまでの立ち上がりが早く、最低限の分析で済むため、コストを抑制できるメリットがある。ただ、長期的な視点では、分析1回あたりのコストが高額なため、何度も委託はできない。ドメイン知識の提供といったコミュニケーションコストも発生する。さらに、自ら分析していないため、結果の解釈も難しくなる。
一方の自走は、データ・AIの知見やプログラミングの習得は一朝一夕では難しく、結果を得るまでに時間を要していまう。しかし、長期的にみると、仮説・検証を素早く回すことができ、ドメイン知識の活用も可能で、分析コストも抑えられるなどメリットは多い。何より、将来に向けたDXの文化を醸成することにつながる。
とはいえ、人材的にも時間的にも余裕のない中小企業にとって、自走は理想的であっても、現実的ではない。それでも住吉工業が自走を選べたのは、今回利用したNode-AIの存在と、NTT Comの支援があったからだ。
Node-AIは、販売データ・IoTセンサーデータといった時系列データに特化した、ノーコードデータ分析ツールだ。現在は、マネージドサービスの商用版と、ブラウザ上ですぐに使える無償のベータ版を提供している。特に、今回の住吉工業のような数値予測や、需要予測、異常検知などの需要に最適だという。
プログラミングを必要とせず、使いやすいビジュアルインターフェースを採用、マウスの操作だけでAIモデルを構築できる。データ分析に必要な機能もプリセットで用意され、「自走によるデータ活用DXを実現するツール」(切通氏)だという。
加えて、データ活用人材を育成するための伴走支援も提供している。住吉工業も、ハンズオンセミナーの実施から分析方針のディスカッション、データクレンジングツールの提供、分析結果へのアドバイス、レポート作成の補助など、自走に向けての伴走支援を受けている。













