Core Ultra 9 275HX搭載、MSI「Vector 16 HX AI A2XW」シリーズをレビュー
どこでもモンハンワイルズが快適プレーできるRTX 5070 Ti搭載ゲーミングPC、高性能でも動作音が静かなのは冷却に秘密アリ
こうしたスペックを冷やすのがMSIノートPCではCooler Boostという冷却機構。Vector 16 HX AI A2XWシリーズでは「Cooler Boost 5」が採用されている。ファンは左右に1基ずつ、ヒートパイプは6本という構成だ。そして興味深いのが「シェアパイプ」。通常、CPUならCPU用に、GPUならGPU用にヒートパイプをレイアウトするが、シェアパイプはCPUとGPUをまたぐ格好で、どちらの熱も輸送する。CPUとGPUで熱量の偏りがあるような場合においては、通常レイアウトならヒートパイプ3本のところ、シェアパイプなら6本相当の熱輸送能力が期待できるというイメージだろうか。Vector 16 HX AI A2XWシリーズでは6本のうち3本でこれを採用している。
重量級AAAタイトルもWQXGA&高画質設定がOK。MFGなど最新機能でヌルヌル映像を味わえる
ベンチマークの前に、Vector 16 HX AI A2XWシリーズの性能を最大限引き出すための準備について説明したい。
製品にレターが同梱されており、これに(日本語でも)手順が記載されているので、これに従って操作をすればよい。どんなものかと言うと、購入後セットアップを行なったら、プリインストールされているMSI Centerを起動し、Vector 16 HX AI A2XWシリーズのファームウェア、RTX 50シリーズのドライバを最新のものにアップデートするといったものだ。RTX 50シリーズはまだ登場したばかりでドライバのアップデートも頻繁に行なわれている。さまざまな改善がされている最新ドライバを充ててパフォーマンスを引き出そう。
まずは2つのタイトルでフレームレートを計測した。どちらもGPU負荷が高いタイトルで、モンスターハンターワイルズ ベンチマーク、サイバーパンク2077だ。
最初にモンスターハンターワイルズ ベンチマーク。Vector 16 HX AI A2XWシリーズの2560×1600ドットという解像度を選べるものの、上下に黒帯がついて実質的には2560×1440ドットになる。この2560×1600ドット設定で画質設定を切り換え、どのくらいの高画質設定が可能か試してみた。フレーム生成はONとしている。
ゲーム初回起動時に自動的に最適な設定が適用されるが、これは高画質設定だった。その高画質設定では132.47fps。かなり余裕があるし実際映像はなめらかだ。また、高画質設定にレイトレーシング「高」を加えた場合も123.26fpsでひとつ上のウルトラ画質では114.39fpsとこのあたりまでは映像がなめらかだった。
ただし、ウルトラ画質にレイトレーシング「高」を適用したところ、102.91fpsと平均フレームレート的には十分だが時折極端にフレームレートが低下しカクつくことがあった。このあたりがグラフィックスメモリ12GBの限界だ。平均フレームレートが高いように、カクつきはそう頻繁に生じるわけではない。このくらいなら……という方もいるだろう。
それにモンスターハンターワイルズ ベンチマークはさまざまなシーンが連続するので実際のモンスターハンターワイルズでは重いシーンもある一方、大半は軽いシーンで十分なフレームレートが得られる。いや、妥協できないという方はプラス10万円出してGeForce RTX 5080 Laptop GPUモデルを選ぼう。そちらならグラフィックスメモリが16GBに増えるので2560×1600ドットならメモリ不足になることも少ないだろう。
| モンスターハンターワイルズ ベンチマーク | ||
|---|---|---|
| ウルトラ+RTX高 | 102.91fps | 17353points |
| ウルトラ | 114.39fps | 19391points |
| 高&RTX高 | 123.26fps | 21016points |
| 高 | 132.47fps | 22607points |
サイバーパンク2077では、2560×1600ドットネイティブでプレイ可能。プリセットのレイトレーシング:ウルトラ設定で平均94.49fps、最小fpsも81.57fpsと十分に快適だが、さらに高負荷のカスタム設定を行なうとさすがに60fpsを割り込んだ。DLSS Ray Reconstructionだ。ただし、RTX 50シリーズGPUではDLSS MFGが利用できる。同設定にMFG 2xを加えたところ102.64fps、最小91.49fpsと余裕で実際の映像もスムーズだった。このように、タイトル次第ではMFGによってわずかに足りないフレームレートを向上さえられることもある。
| サイバーパンク2077のフレームレート(fps) | |
|---|---|
| レイトレーシング:ウルトラ+DLSS Ray Reconstruction+MFG 2x | 102.64、最小91.49 |
| レイトレーシング:ウルトラ+DLSS Ray Reconstruction | 59.47、最小53.67 |
| レイトレーシング:ウルトラ | 94.49、最小81.57 |
| レイトレーシング:中 | 97.06、最小84.21 |
重いゲームタイトルでの検証はここまで。ここからは代表的なベンチマークソフトで計測したスコアを紹介していこう。製品検討時の比較に活用してほしい。
PCMark 10はOverallが11813ポイント(Extended)。Essentialsが10727、Productivityが11297、Digital Content Creationが17017、Gamingが25515というスコア配分だ。EssentialsやProductivityが10000ポイント超であるように、ホーム&ビジネス用途では超高性能PCといったところ。高性能CPUや十分な容量のメモリ、高速SSDが効いている。そして高性能GPUがいきるDigital Content Creation、本命のGamingといったシナリオではさらに高スコアになる。
3DMarkの主要なスコアは以下のとおり。
| 3DMark | |
|---|---|
| Speed Way | 4322 |
| Steel Nomad | 3559 |
| Steel Nomad Light | 17349 |
| Port Royal | 10802 |
| Time Spy Extreme | 8375 |
| Time Spy | 16458 |
ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークは最高画質設定で3つの解像度を計測したがいずれも「非常に快適」評価だった。
| ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク | ||
|---|---|---|
| 2560×1600ドット、最高品質 | 15258 | 109.02fps |
| 2560×1440ドット、最高品質 | 16548 | 118.27fps |
| 1920×1080ドット、最高品質 | 21346 | 158.97fps |
RTX 50シリーズ世代のゲーミングノートPCでPCゲームを楽しもう
ここまでVector 16 HX AI A2XWシリーズを解説してきた。パフォーマンス検証をした「Vector-16-HX-AI-A2XWHG-0853JP」は3モデルあるラインナップ中ではもっとも安い30万円台半ばのモデルになるが、強力なGeForce RTX 5070 Ti Laptop GPUによって快適なゲーミング性能を得ていることが分かった。2560×1600ドットの高解像度パネルをそのままの解像度で十分に高画質設定が望める。ゲームタイトルが用意しているプリセット以上の真の最高画質を追求するとなると60fpsを割り込むシーンもあったが、ここは12GBというグラフィックスメモリが要因と思われる。これをクリアしようとなるとGeForce RTX 5080 Laptop GPUの性能が必要だ。そしてその価格差は約10万円。このあたりは求める画質と予算で検討してほしい。
なお、「Vector-16-HX-AI-A2XWHG-0853JP」の検証で好印象だったのは動作音。比較的静かな印象だった。もちろんゲーミングノートPCの中ではという括りがあるとして、Cooler Boost 5とシェアパイプの採用が効いているのかもしれない。超高速ファンのキーンッといった高音ノイズやブーンという風切音がそこまで気にならないというのは高評価だ。3Dゲーム性能と併せて、ゲームプレイの快適さもVector 16 HX AI A2XWシリーズの推しポイントに挙げておきたい。


