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情報労連レポート「ITエンジニアの労働実態調査 2024年版」より

40代のITエンジニアを求める企業、5年間で倍増 人手不足を色濃く反映

2025年04月25日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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コスト上昇を価格転嫁できていない企業でも初任給・賃金を引き上げ

 最後に取り上げるのが、円安による物価高やエネルギーコスト上昇が長期化する中での「受託費用や価格の改定の必要性」だ。本テーマは、前年(2023年)に続いての調査である。

 この1年間で、人権費、外注費、エネルギーコスト(電気代)が「上昇している」という企業の比率は、7割から9割を占めており、前年調査よりもさらに増加した。とりわけ人件費については、約8割が「改定(賃上げなど)が必要だった」と回答している。

 ただし、取引先への価格改定の申し入れ状況を企業規模別にみると、大企業になるほど「申し入れた」と回答する割合が高く、小規模になるほど「申し入れができず」、価格転嫁が困難な状況にある。

企業規模別の価格などの改定の申し入れ

 一方、顧客からの受託費用や価格の改定の申し出の状況は、「申し出があった」との回答が7割近くを占め、前年から約10ポイント上昇している。ただし、回答のほとんどが「一部の顧客から申し出があった」という回答で、「半数ほどの顧客から申し出があった」という回答は少数となっている。「申し出はなかった」と回答した企業は、 1000人以上の企業では1割未満である一方、100人未満の企業では約半数に上る。

顧客からの受託費用や価格などの改定の申し出

 また、価格改定の対応評価について、「対応できた」と回答した企業は、人件費の上昇、外注費の上昇で7割から8割台を占めるが、その内訳としては「必要最低限の対応はできた」がほとんどで、「十分に対応できた」という回答は1割にも満たない。「必要最低限の対応もできなかった」と回答した企業は、1000人以上の企業では皆無である一方、小規模な企業では人件費・外注費・エネルギーコストの上昇それぞれで、1割から2割ほど存在している。

 また、初任給・賃金の引き上げ状況と価格転嫁の関係をみると、最低限の価格転嫁もできなかった企業でも、43.5%が初任給を引き上げ、68%が賃上げを実施している。「生産コストが上がっているのに、価格転嫁を自粛せざるを得ず、自社の中で対応している状況。そんな小規模事業者ほど発注者側の申し出が少ない状況の中で、経営を圧迫しかねない賃上げをしている可能性がある」(青木氏)。

 青木氏は、「労使(労働者と使用者)が、中長期的な視点に立って、人材をいかに育成・定着させ、産業の底上げを図っていくのか。また、どのような雇用・処遇環境が求められているかを、真摯に模索していかなければならないという調査結果となった」と締めくくった。

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