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全国規模で共同教育やインターンシップ、共同研究を推進へ

全国の高専生に「DX人材教育」を、ソフトウェア協会と国立高専機構が連携協定

2025年04月10日 12時50分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 ソフトウェア協会(SAJ)は2025年4月9日、国立高等専門学校機構(国立高専機構)と包括連携協定を締結した。DX人材育成、学術/産業技術振興、地域産業への貢献を目的として、全国の高専学生を対象にした共同教育やインターンシップ、人事交流、共同研究の促進などに取り組む。

包括連携協定書にサインした、国立高等専門学校機構 理事長の谷口功氏(左)とソフトウェア協会 会長の田中邦裕氏(右)

高専を拠点に全国規模でデジタル人材の育成を

 SAJは、国内のソフトウェア産業発展を目的とする業界団体(一般社団法人)。現在809社が加盟しており、ソフトウェアエンジニアの育成にも注力している。SAJ内には、全国9地域に担当理事を配置してデジタル化を推進する「地域デジタル推進委員会」もあり、各地域でのセミナー開催や地場の産業界/経産局/団体との連携、地域でのビジネス成功モデルの全国発信などを行っている。

 国立高専機構は、全国に51校の国立高専を設置、運営する独立行政法人。国立高専では、5年間の一貫教育で高度な専門性を持つ人材を育成しており、卒業生の約6割が就職して社会で活躍し、約4割が2年制の専攻科や4年制大学に進学/編入している。現在、国立高専の学生数は約5万人で、うち27%が女性だという。

(左)ソフトウェア協会(SAJ)会員プロフィール (右)全国の高専配置図(赤色が国立高専)

 今回の包括連携協定は、SAJが2024年9月に大阪公立大学工業高等専門学校と締結した包括連携協定を、新たに国立高専に展開して全国規模に広げるものになる。以前からSAJの地域デジタル推進委員会では高専との連携を模索していたが、そこに国立高専機構からデジタル人材育成の協力要請があり、いわば「自然の成り行き」で決まったという。

 国立高専機構 理事長の谷口功氏は、今回の連携協定を通じて「新たな日本を作るために、日本のDXを担い、その領域で活躍できる若い人たちを育てたい」と抱負を述べた。人材教育の対象も、情報系や電気系の専攻科にとどまらず、化学系や機械系、土木系なども含むという。さらに「(学校内での)座学だけではわからないことが多い」と述べ、産業界のSAJには「社会とのつながり」という面でも期待していると語る。

 一方、自らも高専出身であるSAJ 会長の田中邦裕氏は、「高専の良さは、15歳から20歳までの5年間という重要な時期に、入試教育から切り離され、実践的な学習に集中できること。専門性を持ったジェネラリストを育成できる」と語る。現在、全国の高専でソフトウェア、デジタルに関する教育が進められており、連携協定を通じて「全国各地で必要とされているデジタル人材を生み出すことを支援する」と抱負を述べた。

「現場で学ぶ体験」を提供し、ソフトウェア産業で活躍する人材へ

 SAJと国立高専機構では、今回の連携協定に基づき、「企業研究セミナー」などの共同教育、SAJ加盟企業でのインターンシップ、国際連携も含む人事交流、産学共同研究などに取り組む予定。詳細は今後検討を進める。ソフトウェア産業の特性を生かし、インターンシップではリモート参加の仕組みも導入する考えだという。

 国立大学機構の谷口氏は「デジタル人材を育てるためには、現場で学ぶことが大切」としたうえで、「まずは、SAJの会員企業に高専に来てもらって、話をしてもらうところから始めたい」と語った。「さらに、1週間でも、週に1日でもいいので『現場を体験する』こともやってみたい。高専で開催するコンテストとの連動することも想定している」(谷口氏)。

 一方、SAJの田中氏は「今回の包括協定で、全国51校の国立高専と一気に連携できるメリットは大きい」と述べた。これまで高専卒業生は、大手企業や製造業に就職する傾向が強かったが、「インターンシップなどを通じて、ソフトウェア産業にも目を向けてもらい、仕事を知ってもらうきっかけになる。ソフトウェア産業で活躍してもらえる人材を増やしたい」(田中氏)。

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