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「弥生会計 Next」は事業成長に不可欠な経営プラットフォームを目指す

“誰でも使える”弥生の新クラウド会計サービス 中小企業のデジタルデバイドを解消するか

2025年04月10日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 弥生は、法人向けクラウド会計サービス「弥生会計 Next」を、2025年4月8日に正式リリースした。2023年10月に立ち上げた新ブランド「弥生 Next」の中核を担うサービスだ。

 同社の代名詞といえる「弥生会計」ブランドでは、過去にもクラウド会計サービスとして「弥生会計 オンライン」を提供していた。しかし、業務効率化にとどまらず、経営プラットフォームになり得るサービスの提供を目指して再構築を行い、弥生会計 Nextとしてリリースした。

 弥生の代表取締役 社長執行役員 兼 CEOである武藤健一郎氏は、 「日本企業の99.7%が中小企業であり、労働人口の7割以上が中小企業で働いている。中小企業を変革することが、社会貢献につながる」と強調する。

弥生 代表取締役 社長執行役員 兼 最高経営責任者(CEO) 武藤健一郎氏

中小のデジタルデバイド解消に求められるサービスとは

 弥生は、これまで40年以上にわたり、中小企業のバックオフィス業務を支援してきた。2025年1月には、企業ミッションを「中小企業を元気にすることで、日本の好循環をつくる。」に刷新。中小企業の活力を生み出して、日本経済全体の成長につなげていくことを目標に掲げる。

 しかしこの好循環を、「労働人口の減少」「社会環境の急速な変化」、そして「デジタルデバイド(デジタル活用の格差)」が阻害しているという。なぜ多くの中小企業でデジタル活用が進んでいないのか。その理由を武藤氏は「『コスト負担』と『使いにくさ』がハードルになっている」だと分析する。

 実際に、東京商工会議所が2024年に実施した「デジタルシフト・DX実態調査」では、デジタル化の課題として「コストが負担できない」(31.9%)を挙げた企業が最も多かった。他にも、「従業員がITを使いこなせない」(26.4%)、「業務に合ったサービスが見つからない」(22.4%)という回答も多い。

中小企業のデジタルシフト・DXの実態(東京商工会議所による調査)

 デジタル化の壁である「コスト」や「使いにくさ」を解消すべく、弥生では、弥生会計 Nextを「小規模企業でも導入しやすい料金プラン」で展開し、「誰でも簡単に使える」ことにこだわっている。

 また、現時点では業務効率化の機能を中心に実装しているが、今後は業績向上に寄与する「事業成長に不可欠な経営プラットフォーム」になることを目指し、機能を拡張していく予定だ。同社 次世代戦略部 部長の広沢義和氏は、「これまでの弥生会計は、経理担当者の業務を効率化するプロダクトだった。弥生会計 Nextは、業務効率化だけではなく、経営そのものを成長させるサービスとして開発している。経営者にも必要とされるプロダクトにしたい」と説明する。

弥生 次世代本部 次世代戦略部 部長 広沢義和氏

徹底追求した「使いやすさ」、周辺機能も同サービス内で完結

 弥生会計 Nextの正式リリースに合わせてつけられたキャッチコピーは、「会計・経費・請求。誰でもカンタン、まとめて効率化」だ。

 特に、使いやすさに関しては、中小企業へのインタビューを何度も行い、社内のさまざまなメンバーと議論を重ねるなど、徹底的に追求したという。

 例えば、使い始めの段階で脱落することがないよう、初期設定は4つのシンプルなステップで完了。新設法人の場合も、対話型で質問に答えていくだけで設定ができる。

 日々の面倒な帳簿付けも、各金融機関やクレジットカード会社とAPI連携して入出金明細を蓄積し、そこからスムーズに仕分け登録ができる。勘定科目もAIが推測したものを確認するだけであり、AIが学習を重ねることでその精度も上がっていく。各種数字の確認においても、残高試算表や総勘定元帳、仕訳帳を、ドリルアップ・ドリルダウンでストレスなく遷移できる。

「初期設定」は質問に答えながら4つのステップで完了

入出金明細入が蓄積される「明細ボックス」からスムーズに仕訳

 キャッチコピーにある「まとめて効率化」の言葉通り、業務と取引データがシームレスにつながるのも特徴だ。会計業務だけではなく、経費精算や請求業務、証憑の保存・保管といった機能が同一サービス内で完結して、一元的に管理することができる。

 データを利活用により、経営者の意思決定につながるような機能も拡充させていく予定だ。その足掛かりとして提供する「資金予測(β版)」の機能は、過去3カ月分の取引データを基に、AIが向こう3か月のキャッシュフローを予測・評価してくれる。

「資金予測(β版)」

 年契約の場合の料金プランは、「エントリー」が3万4800円、「ベーシック」が5万400円、「ベーシックプラス」が8万4000円(いずれも税抜)。月契約も6月から提供予定だ。各プランは基本機能や付属するサポートの手厚さが異なっている。また、すべての機能を最大3カ月無料で試せる「無料体験プラン」も用意している。広沢氏は、「他社のサービスと比べても、高いコストパフォーマンスで価格設定している。特に、小規模なお客様にとって気軽に導入しやすい価格帯を目指した」と語る。

弥生会計 Nextの料金プラン

 なお、中小企業ではデスクトップ版の需要がまだまだ多いため、弥生会計 Nextへの移行は促さずに、クラウドと双方で価値を届けていく方針だ。また、個人事業主向けの「やよいの青色申告 オンライン」との統合は行わず、“法人成り”をきっかけに弥生会計 Nextへの移行を促す。

 「弥生の歴史は『弥生会計の歴史』と言っても過言ではない。弥生会計の名に恥じないように弥生 Nextを大きく成長させていきたい」(広沢氏)。

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