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富士通とヘッドウォータースがマイクロソフトの「Phi」で実証実験

空の上でも生成AI活用 JAL・客室乗務員の業務改善に「SLM(小規模言語モデル)」

2025年03月31日 16時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 学習範囲を特化することで、LLM(大規模言語モデル)よりもパラメータ数が少なく軽量な「SLM(小規模言語モデル)」。ローカル環境など、特定用途での生成AI活用を推進する技術だ。

 富士通とヘッドウォータースは、2025年3月27日、日本航空(JAL)の客室乗務員が業務効率化を図る目的で、このSLMを活用した実証実験を実施したことを発表した。

 JALでは、フライト中に起きた特記事項を客室乗務員から空港スタッフに引き継ぐレポートの作成を、どう効率化するかという課題を抱えていたという。

 そこで富士通とヘッドウォータースは、クラウド環境への接続が必要なLLMに代わり、オフライン環境での性能に強みを持つマイクロソフトのSLM「Phi(ファイ)」を活用した生成AIアプリケーションを開発。これは、フライト中のクラウド接続ができないタブレット端末でも使用でき、質問に答えていくだけで引継ぎレポートが自動生成されるアプリだ。

開発した生成AIアプリケーション(「Microsoft AI Tour Tokyo」基調講演より)

 富士通は、「Fujitsu Kozuchi」を通じて培った業務特化の基盤モデル開発のノウハウを活かし、客室乗務員の業務に特化する形でPhiをファインチューニング。加えて、ヘッドウォータースは、オフライン環境のデバイス上でも稼働する生成AIアプリケーションを開発し、量子化技術による処理の軽量化によって、タブレット端末上での動作を最適化している。

生成AIアプリケーションの仕組み

 実証実験の結果、生成されたレポートにはJALの業務用語が自然に反映され、スムーズな英訳も可能であり、レポート作成にかかる作業時間および修正発生率を削減できたことを確認したという。

 今後、富士通とヘッドウォータースは、本システムの本番運用に向けて、段階的な検証を実施。JALの運用する生成AIプラットフォームへの導入を進めていく。また、業務特化したSLMをFujitsu Kozuchiの生成AIとして活用し、オフライン環境で動作するオンデバイス・エッジ・オンプレミス型での提供を目指すとしている。

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