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事業成長の鍵を握る高単価GPUサーバー戦略、新たな“水冷パートナー”連携などを説明

「2025年、最大の課題は“水冷”」 デルが考えるAI/GPUサーバー時代の改革

2025年03月17日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 デル・テクノロジーズ(デル)は2025年3月7日、x86サーバー市場や「Dell PowerEdgeサーバー」の最新動向に関する記者説明会を開催した。

 x86サーバー市場では、企業の“AI活用インフラ”としてGPU搭載サーバーに対する需要が急速に高まっているほか、VMware以外の仮想化基盤(ハイパーバイザ)構築、AIを活用したシステム運用管理の自動化(AIOps)推進といった動きも広がっている。

 こうした新たな時代に対応するために、デルでは幅広い改革を進めていることが紹介された。

2024年の水冷サーバーの導入案件は、2022年比で約3倍に増加したという

この日はPowerEdgeサーバーの営業/マーケティング/サポートなどに携わる8名が“PowerEdgeランナーズ”として登壇し、リレー方式で説明を行った

サーバー事業成長のためには「高単価のGPUサーバー領域」獲得が必要

 説明会の冒頭、同社 執行役員でインフラソリューション営業を統括する上原宏氏が、x86サーバー市場の最新動向を説明した。

 上原氏はまず、2000年からの25年間で、x86サーバーがどれだけ進化/拡大してきたのかを、独自調査/試算のデータに基づいて具体的に示した。

 企業でよく利用されるミッドレンジのサーバーCPUは、2000年からの25年間で「およそ400倍」の性能向上を遂げた。さらに、この性能値に毎年のサーバー出荷台数を掛け合わせ、1台あたりのライフサイクルを5年間として試算した結果、x86サーバーによる国内の“総コンピュートパワー”は、2004年から2024年の間に「およそ278倍」に成長したという。

デル・テクノロジーズ 執行役員 インフラストラクチャーソリューションズ営業統括本部 製品本部 本部長の上原宏氏

デルの独自調査/試算によると、サーバーCPUは25年間で性能が約400倍に、またx86サーバーによる国内の総コンピュートパワーは約280倍に成長した

 このように、これまでのx86サーバー市場は、企業におけるコンピュートパワー需要の拡大を「高性能化するCPU」と「より多くの導入台数」でカバーするかたちで成長を続けてきた。

 しかし、ここに新たな動きが生まれている。AI処理を目的とした、GPU搭載サーバーに対する導入ニーズの増加だ。

 IDCの市場調査データによると、近年のx86サーバー市場ではGPU搭載サーバーの存在感が顕著なものになっている。GPU搭載サーバーは1台あたりの単価が高いため、特に出荷金額ベースで見た場合のインパクトは大きく、x86サーバー市場のさらなる拡大を牽引する存在になっている。

 上原氏は、デルが引き続きサーバービジネスを拡大させていくためには、この「高単価なGPU搭載サーバー」領域を獲得していくことが必須だと説明する。

 「(GPU搭載サーバーは)全体の出荷台数に占める割合としては小さいが、金額に換算すると極めて大きな割合になる」「上に載ってきているこの高単価なサーバー(GPU搭載サーバー)の領域を獲得しないと、ビジネスとしては伸びない状況にある」(上原氏)

x86サーバー国内市場の四半期ごとの出荷台数/出荷金額推移(IDCデータ)。GPU搭載サーバーが、金額面での市場拡大を牽引している

「2025年、最大のサーバー課題」は水冷対応、デルの解決策は

 ただし、GPU搭載サーバーは、従来の汎用サーバー比で数倍の電力を消費し、それに伴って発熱量も大きなものになる。さらに、CPUでも消費電力=発熱量が高まる一方だ。そのため、これまで標準だった空冷方式では冷却能力が不足することになり、水冷(液冷)方式の採用が必要になり始めている。

 「今年、間違いなくサーバーにとって最大の課題になるのが『水冷』関連だ。(高発熱サーバーの)熱対策をどうするのか。これを考えないと、すでに現れつつあるが『(冷却能力の不足で)ラックに1台だけしかサーバーを置けない』ようなデータセンターになってしまう」(上原氏)

CPU、GPUとも消費電力(=発熱量)が増え続け、水冷に「せざるを得ない」時代になってくる

 実際、水冷サーバーに対する顧客のニーズは急速に高まっている。デルの水冷対応ソリューションを紹介した水口浩之氏によると、デル自身が2024年に受注した水冷サーバー案件数は、2022年比でおよそ3倍に増加したという。

 これはGPU搭載サーバーだけの問題ではない。すでに、CPUだけでも消費電力(TDP)が500W目前のレベルに達しており、水口氏は「こうなると空気でCPUの熱を冷やすのが難しくなってくる」と説明する。

(左)デル・テクノロジーズ インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部システム周辺機器部 シニアプロダクトマネージャーの水口浩之氏 (右)水冷サーバー需要増加の背景には「消費電力の高いCPUほど、より低い温度に冷却しなければ安定稼働しない」という技術的な事情もあるという

 デルではPowerEdgeサーバーや、統合型ラックスケールインフラ「Dell Integrated Rack Scalable Systems(IRSS)」のポートフォリオにおいて、水冷モデルのラインアップを強化している。

PowerEdgeサーバーでは10機種を超える製品で水冷モデルを投入している

 もうひとつ、水冷サーバーを導入するためには、サーバーに冷却水を供給するための設備(CDU:Coolant Distribution Unitなど)や、床耐荷重も含む水冷対応のデータセンター、さらにその設計や施工を担う専門人材も必要となる。もちろん、これらはデル1社だけではカバーできない。

 そこでデルでは、新たな水冷パートナーのエコシステムづくりに取り組む。その一環として、今年1月には水冷対応サーバー/データセンターをテーマにしたカンファレンスを開催し、データセンター事業者や建築業界など、これまでにはなかった業界からの参加者も集めたという。

水冷サーバー/データセンターをテーマにしたイベントを開催した

 上原氏は、2025年を“水冷元年”と位置付け、水冷サーバーが広く一般化していく年になるだろうと予測した。

 「今年は水冷サーバーが一般化してくる、もっと言えば『水でないと冷やせなくなる』ようになる。その必然性に対して、われわれは対応しようとしている」(上原氏)

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