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〝好き〟という気持ちを大切に!旅への愛と情熱をカタチにすべくオーダーメイド旅行の会社を起業

文●杉山幸恵

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〝おいしい旅〟を届けたい!食の楽しみに特化したオーダーメイドの旅行会社を設立

 独立を決意した彼女は、関西大学が創設したばかりの「スタートアップカフェ大阪」に足を運ぶことに。起業支援経験の豊富な金融機関の起業アドバイザーや士業への無料相談、起業に関する情報提供などを行う同施設で、起業にまつわる基礎を学んだ。そして、競合調査やターゲットマーケティングを行い、〝食の楽しみに特化した、おいしい旅の旅行会社〟というコンセプトで起業することにたどり着く。

 事業概要を固めた岡田さんは、さっそくHPと名刺を発注し、旅行会社を退職。旅行業新規登録申請をし、ほぼ休む間もなく個人事業として2017年に「Table a Cloth」を開業。起業を決意してからわずか半年のことだった。

 旅行業登録は4種類にわかれており、岡田さんは国内・海外両方のオーダーメイド旅行を扱える第3種を取得。登録には600万円の準備金(基準資産額)と、事業所に旅行業取扱管理者の有資格者が必要となる。岡田さんはフェリシモ退社と並行して半年間夜間学校に通い、資格を取得していたため、スムーズに旅行業を開業することができた。

 「起業まではあっという間でしたが、不安しかありませんでした(笑)。収入の安定がなくなることや、新婚にも関わらず産休・育休が取れなくなる未来への不安は大きかったです。でもかつて、まだ趣味としてやっていた私のプランニングで渡航した友人たちからもらった、楽しかったという笑顔や感謝の言葉が最大のモチベーションになりました。その瞬間が忘れられなくて、今もこの仕事をやっているような気がします」

 2018年4月には「株式会社Table a Cloth」を設立。〝おいしい旅〟をコンセプトに、食の楽しみに特化したオーダーメイド旅行の企画・販売がメイン事業だ。ヨーロッパへの女子旅やハネムーン、オーストラリアやハワイへの家族旅、3世代の国内旅、企業の奨励旅行など内容は幅広い。

依頼者から要望を細かくヒアリングし、世界で一つだけの旅行プランを組み立てていく

依頼者ごとに作成する〝旅のしおり〟。行程表や航空券のチケット、ホテルのバウチャーなど、旅行に必要なものと情報が詰まっている

岡田さんをはじめ、「旅先での食事が何よりの楽しみ!」というスタッフがそろった同社ならではの旅のプランが好評

 ほかにも野菜収穫や漁師宿泊などの食文化を体験できるファームステイに特化した宿泊予約サイト「gochi荘(ゴチソウ)」、海外からの旅行者向けに日本の食文化を体験するプランを提供する「Tasty Travel Japan」、クッキングスクールを通じて子供たちに異文化の魅力を伝える「旅育Salon」の運営も行っている。

 事業初期からサービスを利用した友人たちの口コミが広がり、多くの顧客に恵まれた「Table a Cloth」だったが、コロナ禍という最大の試練が訪れる。旅行業界全体にとって厳しい時期だったが、同社も例外ではなく、大きな打撃を受けた。

 「飲食業と違い、旅行業はデリバリーやテイクアウトができず…事業存続が危ぶまれる状況に。ただ、コロナ後の旅行需要回復というイメージも見えていたので、従業員を解雇するわけにはいかないと必死でした。この期間に子どもが2人生まれたので、子育てを楽しむことでメンタル面を保っていた気がします」

 コロナ禍という不可避の危機に加え、事業として経験の浅さからぶつかった壁もある。

 「創業当初はブランドやスキルが確立しておらず、どんな仕事も選ばず一度に受けてしまった結果、上手くいかず迷惑をかけることも…。今は、最初の段階から仕事内容を慎重に見極め、互いにメリットが見出せないようなら、場合によってはお断りするようにしています」

 そんな経験があったからこそ、今は「人生は一度きりなのだから、ときめかない仕事はしない」と決めている岡田さん。それは〝旅を仕事にする〟というライフシフトをしたからこそ、幸せだと感じていることにも通じているという。

 「一緒に仕事をする人を自分で選び、大好きな人たちと、ときめく仕事をする。そして時に大きなチャレンジをしてみる。ライフシフトをしてからはそんな毎日が新鮮で、ドキドキして、〝目覚めたくない朝〟がすっかりなくなりました」

「フィレンツェで心を繋ぐクラシックハネムーン」をテーマに、イタリア・フィレンツェでのフォトウェディングを皮切りにローマ、スペインのバルセロナを巡る旅をプランニング

〝5歳になる息子との初めての海外旅行を〟というヨガインストラクターの女性からの依頼でプランニングした「ヨガと子どもとグアム旅2024」

 そうはいうものの、まだ幼い2人を育てながらの毎日を、大変と思うことはないのだろうか。

 「私にとっては仕事と子育ては〝両立〟ではなく、どちらも切り離せないもの。起業が先にあり、その後に子どもが生まれたので、まるで三兄弟を育てているような感覚なんです。仕事の打ち合わせに子どもが同席することもありますし、家庭と仕事はいつも隣り合わせ。時には支えになり、一方が大変な時にはもう一方が心のよりどころになってくれることもあります」

子どもとも積極的に旅に出ている岡田さん。写真はフランスの「ルーブル美術館」

自身の旅の経験がプランニングに活かされることも。写真は北海道・稚内の「白い道」

 仕事もプライベートも分け隔てることなく、どちらも大切。これからもまるでわが子のように「Table a Cloth」を育てていくという岡田さんに、今後の目標を聞いてみた。

 「世界のおもしろい場所へお客さまをお連れすることをやり切ったと思えたら、いつか〝迎える拠点〟を作りたいと思っています。次は私自身がどこかの地域に根を張り、観光案内所を兼ねた宿泊施設を作ってみたいなと。その場所で生産者さんとつながり、生産現場へ足を運んでもらい、旅先でしかできない経験を未来に持ち帰ってもらうための〝拠点〟になりたいんです。どこにするかまだ決められず、日本かなと思いつつ、素敵な場所が多すぎて悩んでいます(笑)」

 「まだまだ何年後になるかもわからないんですけどね」と笑顔で将来のことを語ってくれた岡田さんに、ライフシフトをしたいと感じている女性にメッセージをもらった。

 「〝好きなこと〟〝やりたいこと〟を見つけるのって、実は簡単ではなく、私自身もすごく時間がかかりました。でも、もしすでに見つかっているのなら、それはとても特別で幸せなこと。その〝好き〟の気持ちに忠実になり、それを誰かと共有し続けていけば、きっとその思いを同じように大切にしてくれる人、必要としてくれる人とつながれるはずです。どうか後悔のない人生を。思っているよりも、世の中はずっと優しくて、味方は多いですよ」

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