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Windows Info 第472回

WindowsのエラーをMicrosoftに送信するテレメトリ機能を理解する

2025年03月09日 10時00分更新

文● 塩田紳二 編集● ASCII

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Windowsのテレメトリ機能では
ユーザーの許可の下で利用状態やエラーを送信する

 現在のWindowsには、テレメトリと呼ばれる機能があり、ユーザーの許可の下で、Windowsの利用状態やエラーなどの情報を匿名でMicrosoftに送信している。

テレメトリ

Windowsのテレメトリは、「設定」→「プライバシーとセキュリティ」→「診断とフィードバック」で、オプションの診断データ送信の可否や送信タイミングを設定できるが、必須の診断データに関してはここでは設定できない

 このテレメトリ機能は、多数のPCで発生したエラーなどの検出にも使われる。組織内などでは、後述するようにグループポリシーで簡単に止めることができるが、日本固有のエラー発生などを考慮すると止めないことが推奨される。

 過去には、外字の利用でアプリケーションがクラッシュするという問題が発生したが、国内で診断データの送信を止めている企業が多かったために、同じく外字を使う台湾での問題と判断されたこともあったという。そのほかIEの印刷問題でも問題が過小評価されたことも存在したようだ。

 インターネットを使った情報収集は、Windows XPのときに「Windows Error Reporting(WER)」として開始された。これは、発生したエラーとそのときのWindowsの状態をMicrosoftに送信し、もし、対応策が判明していれば応答を返すもの。インターネットを使って大規模なソフトウェアのデバッグが可能となった。

 WERの開発コード名がWatsonである。同じ名前は、Windows 3.0用に開発されたUnrecoverable Application Errorの対応プログラム(デバッガ)にも使われていた。元々はこのデバッガの名前が「Sherlock」だったが、同名のデバッガがあったために助手のWatsonに名前が変更され、その関連でWindows XP用のWERのプロジェクト名となった。

 その後のMicrosoftは、Windows Vistaで現在のテレメトリのベースになる「Customer Experience Improvement Program」を導入する。これは、Windowsの使われ方などの情報を匿名でマイクロソフトに報告するもので、この技術は次のWindows 7の開発で、仕様の策定などに際して参考情報として利用された。

送るデータには必須のものとオプションのものがある

 現在でもMicrosoftの文書では、「テレメトリ」という表現が残るが、公式には「診断データ」(Diagnostic data)と呼ぶ。Windows 11で扱う診断データには

必須診断データ
オプションの診断データ

の2種がある。

 Windows 11では、必須診断データは標準でかならず送信され、ユーザーはオプションの診断データの有効、無効を設定できる。ただし、Windows Insider Programのプレビュー版を使う場合、オプションの診断データの送信が必須となり、送信間隔などの設定もMicrosoftが指定したものとなる。

 Windows 10では、「拡張診断データ」と呼ばれるWindowsやアプリ、ブラウザの使用、実行方法などの情報の送信を個別に設定できる。ただし、同様の情報は、オプションの診断データにも含まれる。それぞれで送信される情報をまとめたのが以下の表である。

テレメトリ

 必須診断データに含まれる情報は、

デバイスに関する情報(カメラやバッテリ、プロセッサ、ネットワークアダプタ、仮想化機能など)
クラッシュやハングなどの統計情報
Windowsの情報(バージョン、アップデート、設定)
アプリや仮想マシンの情報
BIOS関連情報
周辺機器(プリンタ、外付け外部記憶装置など)の情報
デバイスドライバの情報
Microsoftストアアプリのダウンロードやアップデートの情報

などとされている。

 これに対してオプション診断データでは、

必須診断データによって収集されたデバイス、接続、構成に関する追加データ
必須診断データによって収集される内容を超える、オペレーティング システムおよびその他のシステム コンポーネントの正常性に関する状態とログ情報
デバイスで起動されたプログラム、実行時間、入力に応答する速度などのアプリ アクティビティ
Microsoft ブラウザー (Microsoft Edge または Internet Explorer) の閲覧の履歴や検索条件を含むブラウザー アクティビティ
システムやアプリがクラッシュしたときのデバイスのメモリの状態を含む拡張エラー報告

といった情報が収集される。

 ユーザーが選択可能なこのオプションの診断データに含まれるエラー報告には、メモリダンプが含まれる。「ここに問題の発生時に使用していたファイルの一部などのユーザー コンテンツが意図せず含められる」可能性があるという。オプションの診断データの送信については熟考したほうがいいだろう。

ユーザーの操作によってテレメトリを制御する

 テレメトリに関しては、設定と診断データの表示の2つの機能がある。前者は送信する診断データの種類や送信間隔などの設定ができる。後者は送信する診断データをファイルとして保存しておき、ユーザーがこれを確認するためのものだ。これについては別の機会に解説したい。

 テレメトリを制御する簡易な方法として、「設定」→「プライバシーとセキュリティ」→「診断とフィードバック」を使う方法がある(記事冒頭画面)。ただし、この方法では、オプションの診断データ送信の可否しか設定できない。

 さらに踏み込んだ設定としては、グループポリシーエディタによる方法がある。グループポリシーエディタから、「コンピュータの構成」→「管理用テンプレート」→「Windowsコンポーネント」→「データの収集とプレビュービルド」を選択し、右側のリストから「診断データを許可する」を選ぶ。ここでは、「診断データオフ」「必要な診断データを送信する」「オプションの診断データを送信する」の3つが選択できる。

テレメトリ

グループポリシーエディタを使えば、テレメトリの無効化を含む設定が可能。ただし、グループポリシーエディタは、Pro以上のエディションにしかなく、Homeエディションでは利用できない

 ただし、この方法は、Pro以上のエディションでないと利用できず、Homeエディションからは利用できない。とはいえ、設定自体はレジストリにあるので直接編集方法もある。レジストリキーは、

HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\DataCollection

である。ここで「AllowTelemetry」にdword値を設定することでテレメトリが制御できる。設定値としては、「診断データオフ」が0、「必要な診断データを送信する」が1、「オプションの診断データを送信する」が3だ。

 Windows Insider Programのプレビュー版の場合、オプションの診断データの送信が必須であり、オプションの診断データの送信をオフにすると、プレビュー版が更新されなくなる。そのほか送信間隔などについてもMicrosoft指定のものに固定される。

 プレビュー版は公開前にテストするためのものなので、こうした設定はやむを得ないとも言えるが、プレビュー版とテレメトリの関係は理解しておいたほうがいいだろう。

 また、テレメトリ関連でアクセスするMicrosoftのサーバーは公開されている。テレメトリの送信先は、「v10.events.data.microsoft.com」「v10c.events.data.microsoft.com」「v10.vortex-win.data.microsoft.com」の3つ。これと別に以下のWindows Error Reporting用のサーバーがある。

watson.telemetry.microsoft.com
umwatsonc.events.data.microsoft.com
*-umwatsonc.events.data.microsoft.com
ceuswatcab01.blob.core.windows.net
ceuswatcab02.blob.core.windows.net
eaus2watcab01.blob.core.windows.net
eaus2watcab02.blob.core.windows.net
weus2watcab01.blob.core.windows.net
weus2watcab02.blob.core.windows.net

 テレメトリを正常に動作させるのであれば、これらのサイトへのアクセスを禁止すべきではない。

プライバシーの問題はもちろんあるのだが
エラーをMicrosoftに送信することにはメリットもある

 テレメトリについては、プライバシーなどの問題を指摘する意見がある一方、技術的に多数のバグ検出と解決につながっているという事実もある。

 かつてはWindowsのメジャーアップデートには3年(場合によってはそれ以上)がかかっていた。Windows 10では半年、Windows 11では年数回の新機能追加にまでサイクルが短縮された。これによって、Windowsの内部的な改修もWindows 10や11では大きく進んだように見える。

 テレメトリは、選挙の投票のようなもの、個人が送信できる診断データは1つでしかないが、同じものが多数集まることで大きな変化につながる。テレメトリを止めるかどうかは個人の自由だが、発生したエラーが特殊な事例でなく、自分の使い方が特殊でもないことを認識させるにはテレメトリを送信する必要はある。

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